6話:誰が為に
依頼:ペルセポリスの救援
報酬:期間に応じて支払い。1日銀貨10枚。交通費別途支給
内容:ペルセポリスがドラゴンの攻撃を受け、壊滅。生存者の救出並びに街の復興。ランク問わず
ペルセポリスの救援を受けたのにはいくつか理由がある。
スティフが向かったという事、ドラゴンの被害がどのような物か改めてみる事、またあの洞窟へ行きじじいに会う事だ。
実際日当銀貨10枚はEランクが受けれる以来の中ではかなり破格である。しかし拘束時間を考えたら複数依頼をこなした方が稼げる可能性もあるが安定して10枚というのが大きい。
あの後ついでに採取、素材集めの依頼も受けた。
・薬草の5個、レッドベリー5個納品
・ホーンマトンの肉10キロ
の2つである。
何故この依頼を受けたのかというと、実際に剣を振るいたいという事、エルルの腕を見たいと言う事、自生している植物についても知識をつけたいという事だ。それにペルセポリスへ行くついでにこなす事も可能だ。
依頼にある薬草とレッドベリーで低級ポーションが出来るのだと依頼主の雑貨屋から聞いた。どうやら錬金術もあるらしい。他にもいろいろな調合ができると調合書を押し売りしてきたが流石商人。いつか金が貯まったら買うのもいいかもしれない。
ただ錬金台という魔道具が必要でこれがべらぼうに高い。自前で買うと金貨200枚もするらしい。帝都や王都の冒険者ギルド本部で貸し出しをしているので買わないでも済むが現状行くことは出来ない。
一応貨幣相場がどの位か雑貨屋で見てきた銅貨1枚で棒状のスナック菓子、銀貨1枚で棒状のスナック菓子100本の大人買いサイズがある事からなんとなく察して欲しい。これも絶対転生者の仕業だ。しかも日本....
俺たちは一度エルルの実家に戻る。
「なんだお前たちもう帰ってきたのか?」
「いんや、ペルセポリス救援依頼を受けたからその報告と徒歩で行くし色々と準備がね」
「それは泊まりで行くってことか?それってつまり!?」
「お父さん?余計な事は言わないの」
ニコニコしているが目が笑っていない。
俺はミジンコ程も期待してないというかそう言う性的感情は余りない。決してホモではない。ホモではない。
恐らく体年齢のせいだろうか?だがこれでも13才なのだ俺の器は。あ、今初めて器の年が分かった。理由はわからん。それなりに発散したくなっても可笑しくはないのだが...俺の俺は貞操観念がしっかりしているのだろうか....なんだか賢者モードの寂しさを感じた。
「スティフのお下がりで良けりゃ服はあるぞ?」
「なんだか物凄く抵抗感しかないけどいたしかたなし...」
「あいつも昔っからあんな大男じゃなかったからなサイズは合うと思うぞぉ?」
「あらその服懐かしいわね。スティフが学園から帰って来た時は私もびっくりしたわウフフ」
「お兄ちゃんなんであんなに大きくなれたんだろう」
「エルルはおかあに似てその分「お父さん?流石に私も怒るわよ?」
こりないエロ親父だ。
今日は準備やらでなんだかんだ夕方まで掛かったので出発は明日にする事にした。
今日の夕食は赤いかぶっぽい野菜のステーキと野菜スープに黒パンだ。
野菜のステーキとはなんだか違和感しかない。日本にいた頃もそういったメニューを食べたことがあるが思いの外美味しいので食べてみることをオススメする。
俺は夜、村にある小高い丘の上に寝そべっていた。
空はこぼれ落ちんばかりの星々が地上を見下ろしている。空気も澄んでおり心なしか肌寒い。
突然温もりを感じた。
ベオだ。エルルが後ろから抱きついてくれるとかだったらどれ程嬉しかっただろうか。
しかしベオさんや今まで何処に行ってたのかい?
なんとなく久しぶりな気がしてワシャワシャと撫で回してやる。気持ちよさそうに目をつぶっている。こんなベオはやはり俺の癒しだ。
事は突然起こった。
満点の星々が次々と流れ星となった。これは流星群なのだろうか?あまりの美しさに見とれていると眩暈を感じ、意識を失った。
白い世界が延々と続いている。
またあいつが現れるという事だろうか?
剣や水晶の事等と色々聞かねばならない。しかしなんだか都合よく現れたな...
だが、今回は何かが違う。
大きな大きな狼がいる。白銀の艶やかな美しい毛並み、吸い込まれるような、畏怖を感じるその青い瞳。
これはベオウルフだろう。ベオの本来の姿なのかもしれない。
そしてその隣にはあの少年がいる。
''我二魂の主よ、初めてお目にかかる。私は神獣ベオウルフだ''
凛々しく美しい声が響き渡る。
''お前、ベオか?!随分と大きくなって''
''ふふ、驚いてくれて何より。こちらでは本来の姿になれるようなのだ''
''てかしゃべれるのな?普段はあの姿だからしゃべれないのか?''
''そんなところだ''
''あのー僕もいるんですけどー!!!''
''お前には聞くことが沢山あるからな''
''それは何より''
''千年以上生きているが、この様な主に仕えた事等となかったので中々興味深いぞ、我主達よ''
''そりゃどーも。それより本題に入っていいか?''
''どうぞどうぞ''
''お前、剣もすごいし魔法もやばいチートなの?''
''ベルセウスの家系は代々剣に好かれ、その術は万人に勝ると言われているんだ。まぁ剣聖には単純な剣技だけじゃ初代くらいしか勝てないんだけどね。その代わり魔法の才は微々たるものなんだけど、多分魔法は君が影響しているんじゃないかな?僕が測った時はあんな事にはならなかったよ?少し嫉妬したね''
''なるほど、そのせいであれだけ剣が振るえたのか。だけどよ、俺魔法の使い方なんて分からないぜ?''
''多少なら僕でも扱えるから、あとは魔力を感じ、君の力を信じるんだ''
''我主はあの水晶を機に膨大な魔力を手にした。だが器はそれを受け止めることができなんだ。そして崩壊を防ぐべく私はその役目を成した''
''だから居なかったのか''
'''そうであるな。あの膨大な魔力のおかげで私はこの姿になる事ができた。感謝している''
''ん?という事はいつでもその姿になれるのか?''
''あぁ、そうなる。流石にいきなりこの姿では顕現している我主に迷惑となるので人目をさけるべく姿を隠したのだ''
''そんでお決まりのごとく子犬になって様な戻って来たと''
''お決まりは存ぜぬがそんなところだ我主よ''
''その我主ってなんか歯がゆいな''
''時期になれるよ。僕は慣れた。さて今回もそろそろ時間みたいだね。一つ忠告しておく。あのドラゴンには気をつけるんだ。それにあの男は生きている''
そしてまた最後の言葉が反芻しフェードアウトして俺はベオに舐められている感覚を覚え目を覚ます。
朝焼がまぶしい。
しかし随分と眠りこけたようだ。きっとみんな心配しているに違いない。俺はそそくさとエルルの家にもどるのであった。
しかしあのドラゴンに気をつけろ、あの男は生きていると全くもって毎度厄介なことを。と言っても二度目だが。
「おい坊主!心配したぞ!」
「悪い、星を見てたらつい寝ちまったみたいだ」
「ほんと心配したんですからね!これから出歩く時はエルルに絶対言ってください!これから一緒に冒険するんでずからぁ!」
涙を浮かべ叫んでいる。ふふふエルルは天使だ。
「気持ち悪い笑顔だな。イケメンがだいなしだぞ!☆」
相変わらずこの親父のテンションは分からない。
お母さんが作ってくれた朝食をたべ、俺たちはペルセポリスへ向かう。
道中、色々な植物を採取した。忠犬ベオは鼻がいいのか先々で拾ってくるのだ。その調子でここ掘れワンワンと大量の金貨でも見つけてはくれないだろうか?
いや、何か悪い予感しかしない。何せ千年以上生きているのだ。とんでもない物を見つけてくるに違いない。
特に魔物とエンカウントする事なく俺たちの旅は続いた。
スティフと一緒にいた時とは大違いだ。
エルルはかわいいしベオはあれ以来なんか頼もしいし、空気は美味しい、風はなんだか哀愁を運んでいる。
戦地に吹くそんな悲しい風だ。
予想より早く目的地へついた。
あのじじいのいる秘境への入り口を探したが見当たらない。
だが入り口があった所に何かある。
お前はトト◯か!!!
「綺麗...何かしらこれ」
「さぁな?あんま良いものじゃないかもしれないぞ?」
「わん!!!」
ベオが吠えた。これを拾えってか?
仕方なく俺は綺麗なかけらを拾う。
「ねぇ、それ一つちょうだい」
俺はやたらめったらと他人を俺の宿命へと巻き込みたくない。※スティフを除く
ましてやエルルだ。俺は躊躇したが、彼女のキラキラとした瞳には敵わなかった。
一つ渡してやるとエルルは満開の笑顔で、それを天にかざす。
こういう光物に弱いのもやはり女の子なんだろうと微笑ましかった。
しかし困った。これではペルセポリスへの行き方が分からない。
馬車で行くと嘘をつき、交通費をくすねた意味がないだろ!
''我主よ、この領域からは行けぬが、街へなら行けるぞ?''
''びっくりした!!ベオ、念話なんて出来るんだな。その姿とのギャップが半端ない''
''言うてくれるな....我主よ''
ベオは気にしているようだ。まぁそのうち超自然的に成長していくだろうなと予感はしている。
そして、ベオの案内で俺たちはペルセポリスへと改めて向かうのであった。
そこには余りに悲惨な光景が広がっていた。地は裂け、あらゆる命が絶滅したかに見えた。
あの街の面影はない。所々建物は残っているがまともに生きて行ける環境ではなくなったのだ。
赤いテントがいくつか張ってある。
恐らく帝国兵だろう。
しかし青いテントもいくつか見受けられた。
ん?帝国兵と反乱軍が入り混じってるのか?だかこんな悲惨な状況な上に元より純粋な帝国兵はそこまで多くない。支部長も言っていた同胞同士、そんな彼らだからこそ今の光景があるのだろう。
兎にも角にも俺たちはスティフを探すことにした。
「スティフか?あいつなら帝国軍へこの事を報告する為に国境の帝国軍支部へ行ったぞ」
とある帝国兵の証言によるとどうやら俺たちは入れ違ったようだ。
そしてギルドカードを出し、依頼を受けた趣旨を伝える。
「そうか、お前たちみたいな子供も...」
帝国兵は目に涙を浮かべているようだ。
改めて被害報告を聞いた。
奇跡的に街の住民の8分の1の人は生き残っていたが、倒壊した建物による重症者、ドラゴンにより焼き爛れ苦しんでいる者、生き残って運が良かったなどと言うことが憚れる人たちばかりだ。
エルルはそんな光景を見て顔が青ざめ、膝を落とした。
今にも吐きそうな苦しそうに顔を歪める。
「エルル、無理するな。俺だけでもいいから。ベオを付けるから村に帰ってもいいんだぞ?」
「嫌だ。お兄ちゃんもこの光景を見たんだよね?平気な訳がない!私も、私だって...シンタだって無理してるんでしょ?」
エルルはなんていい子なのだろう。前世は聖女に違いない。だがこんな事この世界で軽く言ってしまうと本当にそうなんじゃないかとはばかれる。フラグなんて知らない。
し、か、し初めて名前を呼ばれた。このフラグなら大歓迎!!!
「それにベオちゃん子犬じゃない....」
そこ突っ込みますか!なんだろう。引いては行けない残念な血を引いている。
ベオはベオでよほどショックなのか紫色の線が見えた気がする。顔を竦め涙目だ。千年も生きた神獣のかけらもない。
かけらと言えばあのかけらはなんなだろうかとふと思い出す。
多分気にしたら負けだ。
カクカクしかじがあったが俺たちはテントを二つ借りた。
基本的に自給自足のようだ。
食料支給と書いてなかったな...俺ってうっかりさん☆...ッハ!スティフ親子に毒された気がする。
帝国兵もあまり変わりないのか依頼を受けてきた他の冒険者と狩に行くグループ、瓦礫の撤去や遺体や遺品の整理をするグループ、生存者の世話をするグループに分かれている。
案外と数が多い気がする。他の街や村から救援が来たのだろう。
神官か聖職者かそれに該当しそうな服を着た一団がぞろぞろと流れて着た。
「我ら八大神の名の下、救援に馳せ参じた!」
どうやら宗教団体さんのおでましだ。
「傷付き、苦しむ同胞の為、我らは身を焦がさん!」
おそらく聖騎士と予想できるフルプレートに包まれた優男が声をあげた。
彼らは先の反乱が無かったように手を取り合っている。状況が状況だけにそんな場合ではないのだろう。
俺はこんな惨劇を引き起こしたドラゴン、同胞同士争わねばならぬ反乱を起こした首謀者に憤りを抑えきれなかった。
もう宿命等関係ない、俺は俺の選択でまとめて滅ぼしてくれる!!!!そう心に誓った。
幸か不幸か復興作業が順調に進む中、ドラゴンは姿を現さなかった。だが同じく、首謀者であるウルファも又、遺体すら見つかっていない。一抹の不安を抱える中暗雲立ち込める気配を感じた。
そして2ヶ月の時は瞬く間に過ぎた。
八大神教の面々が合流した事により復興も少し足早に進んだ。
仮設住宅だろうか木造の住宅が建てられたり、瓦礫も一ヶ所に集められ、幾ばくか街が面影をのぞかせる。だがかつての姿を取り戻すにはまだまだ時間はかかるだろう。それにもう元の姿なんかには戻れない。それくらいの惨劇だった。
ケガ人の治療も彼らの治癒魔法のおかげもあり、元々街にいた面々も復興の手伝いをしている。
俺はと言うと八大神教の神官から治癒魔法を習い、その一躍を担う事になった。
流石七色の支配者と言ったところか、魔法を教えてもらう事により俺の才覚は惜しむ事なく発揮することとなったのだ。
そしてエルルは持ち前の鍛冶で武器や農具他、必需品を生産し街の復興の一端をになった。哀愁漂わせる美しさ、そしてあのかけらを使ったネックレスをつけ、たわわボディとその姿から鍛冶の女神と呼ばれている。
ベオはというと案の定成長した。黒かった毛並みは銀の美しい毛に生え変わり大きさもフォレストウルフより大きくなっていた。急成長に、最初こそ驚かれたものの時期に慣れ、今では彼のベルセウスが使役した神獣と一部では拝められている。
時節村に行き、ギルドや親父さんたちに顔を出している。報酬は復興にあてるようにと最低限しか貰っていない。
しかし俺は何か大事な事を忘れている気がする.....




