5話:冒険者ギルドで
スティフと別れた後、俺たちは冒険者ギルドへ行く準備を始める。
武具は店にある物ならなんでもいいと言われたので物色している。
「とりあえず防具のサイズからね。測ってあげるから大人しくしてて」
昨日の事もあり俺は二人きりというのが物凄く気まずい。エルルは余り気にしてないのか?
「あっちにあるのがちょうど良さそうね。私は向こうで着替えてくるわ。絶っっっ対覗かないでね!!!」
と少し顔が赤い。
「き、き、のうのは事故で親父さんが悪いんだ!」
どうやら気にしてたらしいけど年上らしく振る舞おうとしているのか。中身25の俺からみたらなんだか可愛く見えた。
防具は革を選んだ。正直新米が鉄やらのフルプレート着て行くような任務は受けないだろうと思ったからなるべく動きやすいようにだ。エルルも革鎧を着込んでいる。
「武器は何がいいかしら?」
向こうの世界で武器なんてまず持つことはない。サバゲーなんてやらなかったからモデルガンすらもだ。
この世界の武器は何があるのだろうか。
「初心者にオススメはある?」
「そうねー無難に片手剣と盾かしら。私のオススメはスコップよ!」
スコップ?今スコップと!?
確かにスコップは近接武器として優秀とは聞いたことがあるがまさか彼女の口から出るとは思わなかった。
「私の武器は弓とスコップとツルハシなの。弓がメインで、サブにスコップとツルハシ。スコップは叩いてよし、守ってよし、切ってよし、掘ってよしとこんなに素晴らしい近接武器は他にないと冒険者の方がおっしゃってましたわ!」
などと目を輝かせて語っていた。俺はこのいたいけな少女にスコップを進めた冒険者を小一時間問い詰めてやりたい。
エルルはとびぬけて綺麗と言うわけではないが、村娘というカテゴリーなら看板娘を張れるだろう。栗色のサラサラなショートヘア、筋の通った美しさがあり思春期真っ只中というあどけなさが少し残っている。
それにたわわだ。これは母親譲りなのだろう。革の鎧のせいで少し強調されエロスを感じる。
そんな少女にスコップは正直似合わないが、これも鍛冶屋の娘の性なのだろうか。確かにスコップとツルハシがあれば採掘なんかもできる。
ツルハシと虫あみ、釣竿は冒険者の必需品と言うのは古今東西変わらないのだろう。
「エルルが後衛なら近接武器がいいだろうな」
とりあえず片手剣を手にする。少し振ってみるが妙にしっくりくる。これは体が覚えていると言う奴だろうか?
軽く素振りをしてみる。太刀筋が空を切るいい音がする。なんだか心地よい。このまま何時迄も振り続けられそうだ。目を瞑り少し素振りに耽ってしまった。
「おっとごめん、夢中になってた」
我に返りエルルの方を振り返ったが口を開けて呆然としている。
俺は首を傾げたが、周りを見渡すと棚やらが切れていた。エルルを切らなくて良かったがそう言うことじゃない。
何が原因かは分かるが何が原因で急に自分の力が発揮されるか分からないのは困ったものだ。これは早急に問い詰めなければならたいだろう。
そして自分で把握ないし制御しなければならないが、こればかりは経験が物を言うことがある。体が覚えていても頭がついていかない。なんとも言えない事だ。
「なんかごめん」
「い、いえ、私より年下って聞いてたから不安だったけどこれなら大丈夫そうね...」
エルルはなんとか口から言葉を出した。
「お前ら準備は出来たか?ってなんじゃこりゃああああ」
ジーパン顔負けに親父さんは叫んだ。無理もない。棚は真っ二つ、他の商品も売り物にならなくなってしまったのだ。
「シンタがやったのか?いやー流石だな!これらの事は気にするな!娘が魔物に襲われても大丈夫そうだしなガハハハ」
無駄に豪胆な親父さんで助かった。
そして登録費用がかかると言う事で2人分の銀貨20枚とお母さんが弁当をくれた。
色々問題はあるがスティフ家の両親に見送られ、俺たちは冒険者ギルドへ向かうのであった。
ベオはついて来ないが何処へ行ったのか。
冒険者ギルドへ歩いて20分と若干遠い。余り目立ちたくなかったがエルルと並んで歩いていると
「あらあらエルルちゃん彼氏でもできたの?」「くそおおおおお俺のエルルがあああ」「誰だよあいつ見たことあるか?」「あの男許さない」「エルルちゃんにもようやく春が...」なんていろいろ聞こえてくる。
流石は鍛冶屋の看板娘なのだろう。
しかしこれは時の人になったと言うやつか?この場合嬉しくないが。
そんな俺を尻目にエルルは鼻歌を歌ったり、すれ違う人に挨拶したり、とてもマイペースだ。
こう言うところなんだかんだ兄妹親子なんだろうな...
ようやく冒険者ギルドリバー支部へ到着した。たかが20分だが物凄く疲れた気がする。
宿屋も兼任してるせいか外見は石造りの宿屋と言う感じだ。
中に入る。入った瞬間視線が集まる。思ったより人がいる。まぁ首謀者が捕まるそんな状況だったから冒険者も元の生活に戻っていてもおかしくないが空気が物凄く重い。
心なしか若い人が少ない。
俺は受付へ向かうがこちらを物凄く睨んでくる人がいた。
「すみません、冒険者登録したいんですが」
「新規登録ですか?ってエルルちゃんじゃない!冒険者になるの?お店の方は?スティフのバカは元気?」
等とマシンガントークが始まりそうなおばさんが受付をしている。
エルルは軽く受け流したが
「この男の子もしかして、これ?」
などと余計なことをしている。
「ち、ち、違いますよ!お兄ちゃんが帰ってきた時一緒にいたんです!」
「まぁまぁそんな必死にならなくてもぉ。そう、スティフちゃん帰って来れたんだ」
冗談を飛ばしているがその声色は不安と安堵の色が混ざっていた。
「なんだかまだ用があるとかですぐ出てっちゃいましたけどね」
「なんでまたエルルちゃんは冒険者に?でも一人前の鍛冶屋になるには経験も必要よね」
と理解があるおばさんだ。
「それじゃここに冒険者名を書いて」
「冒険者名?実名じゃなくていいのか?」
「冒険者になる人は訳ありの人も多いし、何よりその方がかっこいいでしょ?」
なるほど分からんでもないが本名じゃないと問題が起こった時大丈夫なのだろうか?
そんなこと心配しても仕方ないか。
俺は偽名を使うことにした。エルルはエルルでそのまま行くらしい。
「とりあえず簡単な試験を行うわ。シルルとエルルは二階のギルド支部長のとこへ行ってちょうだい」
試験とはなんだろうか。やはり力を示せということだろうか。
俺は少し不安を抱いた。
「なんでシルルなんて名前にしたのよ!」
「え?なんかいい偽名浮かばなくて」
「それでもシルルってもう少しなんかあったでしょ!」
と案の定ツッコミを入れてきた。
一応登録から一週間は名前が変更可能である。
「とりあえずだよ、とりあえず」
エルルは腑に落ちないようだがなんとかたしなめた。
しかしいきなりギルド支部長とは。エルルが冒険者になるからだろうか?
ギルド支部長の部屋へ入る。
「ようこそ我がギルド支部へ。こんな時期じゃがギルド加入歓迎する」
髭を蓄えた老年のおじさんが出迎えた。
「ほほうエルルが知らない男を連れて....」
と同じようなやりとりをしている。
席に着くように言われ腰を落ち着ける。
「その様子じゃスティフは無事だったようじゃな。わしは引退した身じゃから徴兵されんかったが、何が悲しくて同胞同士争わねばならんのやら...おっと話がそれたわ。試験と言ってもこの水晶に手をかざすだけじゃ。儂を倒せなど言わんよカカカ。エルル、ギルドカードと一緒に手をかざしなさい」
老骨にそんな試験はさせないのだろう。
この水晶、見覚えがある。確か閻魔と会った時だ。でも水晶というだけで早計だろう。器自身の記憶では魔力を知る水晶だとわかった。しかし手をかざした結果等何故か思い出せない。
エルルから手をかざす。すると赤色にそまり光を放つ。火属性ということだろうか?
「ふむ、スティフとは違い魔力は申し分ないようじゃな。普段から鍛冶で魔法を使っておるしの。今のでカードに魔力値が書かれたはずじゃ、確認してみぃ」
事あるごとに比較されるスティフがなんだか可哀想に思えた。
鍛冶で魔法を使う?鍛冶魔法でもあるのか?赤ってことは恐らく火だから火魔法でも使えるのだろう。
エルルのギルドカードには火風とかかれ横には380と書かれている。
何を基準にその数値が出るかは分からないが、恐らくステータス魔法か魔力感知魔法だろう
「それ、坊主シルルと言うのか、偽名じゃな?まぁその事について詮索はされんじゃろ。ただエルルとの関係は色々聞かれるじゃろうがな!かっかっか」
全く笑い事じゃない。街を歩いているだけであれだ。荒くれ者の冒険者だと何されるか分からない。もう一度言うがエルルは村内唯一の鍛冶屋の看板娘だ。冒険者は色々お世話になったに違いない!色々と!
この偽名は変えざるを得ないな。
「そんなことより手をかざしてみい」
支部長は心なしか顔を強張らせている。
俺が手をかざした瞬間、水晶が七色に光りその光は部屋を覆い尽くし水晶が割れ光を失い元の透明なガラスに戻る。
「何が起きたのじゃ...」
「訳がわからないよ」
「でもなんだか綺麗でした」
「このかた60年はこの仕事をしているがこんな現象は初めてじゃ...お主一体....余計な詮索はいかんか」
「一つだけ言っておく。俺は転生者だ」
「転生者?それってあなたの家系に関係しているの?」
「そうかもしれない」
「転生者か。噂には聞いたことはあるがのう。本当にいるとは。冒険者ギルドを創設したのも転生者じゃと聞く。時代の節目、大役を担うもの等といわれおるが...この事は触れんほうが身のためじゃな」
「ちょっとロギンさん怖い事言わないで!私これから彼と冒険者になるのよ!」
エルルの言葉に少し傷ついたがなんで俺は転生者等と口走ってしまったのか。
これも宿命と言うやつかなんて気安く宿命なんて使ってられるか!
「ギルドカードにはなんと書かれておる?」
俺はギルドカードを確認した。
''七色の支配者 ???????????''
恐らく全属性の魔法が使えるのだろう。そして数字は測定不能ということか。
閻魔もたしか魔法うんちゃらいってたがここに来ないと分からないなんて言ってたし...
と思ったがあの閻魔だ色々わかってたに違いない。
そして俺は魔法の才能があるという事だ。だが才能の一言で片付くことなのか些か疑問だが。
「これも他の人に見せてはならんぞ」
と釘を刺された。これで俺の冒険者ライフも色々と問題を抱えてしまう事になり幸先のよいスタートにはならなんだ。
「しかしなしてまた冒険者なんかになるのじゃ?」
「故郷へ帰るための路銀を稼ぐ為さ。アックスさんにばかり頼ってたら申し訳ないからな。それに俺もこんな事は予想してなかったよ」
恐らく開発者は色々と想定してそうだがな。
「なるほどのう。それだけの魔力のある魔法使いが受けるような依頼はここにはないぞ?」
「俺はまだ自分の力を把握してないから、良い機会だと思ってな」
「エルルちゃんも大変な男をつかやまえたのうカカカ」
「もう!笑い事じゃ有りません!それにつ、捕まえたとか誤解です!!!」
と頰を膨らませ起こっている。可愛い。
しかしこれで一層脈が無くなったようなそんな気がして俺はしばし落ち込んだ。
「まぁ若い者同士切磋琢磨するんじゃな。以上、君たちを冒険者加入を認める!下に行ってステラさんから色々説明を受けて来なさい。ただこの事は余りいわんようにの」
俺たちは下へ行き個室へ案内されステラおばさんの説明を受けている。なんとなく想像はつくが冒険者のルールはこんな感じだ。
・冒険者はランクに関わらず三ヶ月活動がない場合資格は剥奪される
・犯罪や問題を繰り返す起こした場合も剥奪
・Eランクからスタート、依頼毎にポイントがありそれを貯めるか討伐した魔物によってもポイントがありそれが加算されて自動で上がっていく。ただしAランクまででS以上は申請が必要である
・3年間無問題、多貢献で模範的な冒険者は特別カードとなり、依頼手数料、ギルド経営の宿屋での割引がされる
・ギルドカードは発行から3ヶ月経つと身分証として使えるようになり、街の行き来が1自由となる
・パーティは最大10名まで登録可能
とだいたいこんな感じだ。他にも細々した事を説明してくれたお陰様で冒険者としての心得を身に刻む事が出来た。3時間は話している。もう限界だよおおおおお
そして掲示板を見ようと思ったが腹が鳴ったので昼飯にすることにした。エルルも顔がげっそりしている。
2人でテーブルにつき弁当を広げる。
ハンバーグ弁当だ。しかもロコモコ丼みたい。きっとヤギの肉だろう。
スパイスが効いていて癖のある肉とマッチしていて美味しい。目玉焼きも乗っていてまろやかになる。
俺たちの休息も案の定すぐに終わった。
「おいおいおい!どこの馬の骨か知らないが俺たちのエルルちゃんと2人ってーのはどういうこった!!!」
案の定絡まれた。
「エルルちゃんもそんな奴ほっといて俺たちとパーティ組もうぜ?」
「そうだよ!俺たちのパーティ昨日Dランクに上がったのさ!ここら辺で活動するなら間違いなく安全だぜ?」
「貞操の危機だがな」
「あん!?俺たちがそんなことする訳ねぇだろ!命がいくつあっても足りねぇよ!!!!」
一体エルルはどんな扱いなのか興味が湧いたが、当の本人は物凄く恐ろしい笑顔をしている。
「アックスさん、それにスティフも黙っちゃいない。俺たちも命はおしいからな」
シスコンスティフにアックスさんだもの仕方ないね。
「貴方達良い加減にしないと.....」
おっと般若が顕現しそうだ。俺たちは黙らざるを得なかった。
「しかしよ、エルルちゃんはなんで冒険者なんかに?」
「お父さんに言われたのよ。一人前の鍛冶屋になるには切っても切れないって。私はまだお父さんの元で勉強したかったけど、スティフが彼を連れて来てからしつこくて」
「あん!?やっぱりお前....」
エルルのにらみつける、冒険者に効果は抜群だ。
「まぁアックスさんのことだ何か考えがあるんだろうよ。兄ちゃん、エルルさんを幸せにしてやれよ!!!!」
等と言って男涙を流し冒険者達は去って行った。
「全く。ああ言うのはお兄ちゃんだけで勘弁だわ」
その通りで。
「し、し、しあわせになんてとんでもない勘違いまでして...!!」
そこは素直に受け止めてくれてもういいんだよ?なんて言える柄じゃないしエルルともまだ出会ったばかりだ。今後に期待しよう、うん。エルルはこういう所まだまだうぶなのだ。
そしてもう一休みして掲示板を覗く。
反乱の影響か魔物退治があまり行われなかったせいで討伐系の依頼が多い。また敗走兵が盗賊化し捕縛の依頼も何件かあったが正直2人でどうにかできる依頼は少ないしランクが足りない。それにいくら魔力があっても使い方が分からないのでは戦力にならない。いくら剣を使えても相手は魔物や元兵士だ。
路銀が貯まって家に帰った後は学院に行こう、そうしよう。
でもエルルはどうするんだろう。路銀が貯まるまでしか冒険者を続けないのか。はたまた鍛冶の修行に旅立つのか。そこは彼女自身が決めればいい事だ。何もいつまでも俺と一緒にいる必要もないだろう。
そしていくつか依頼を探してるうちに
「俺の恋路を邪魔するスティングの妨害」等と言う依頼があったがこれはスルーしよう。物凄く面倒になりそうだ。
他にも「盗賊から奪われた商品の奪還」「街道整備」「屋根の修復」「店番の手伝い」「息子の捜索」等色々あった。
その中で「ペルセポリスの救援」という依頼が目に入った。
「なぁエルル、この依頼どう思う?」
「お兄ちゃんが向かったところよね?ドラゴンがって言ってたから少し不安はあるけど...報酬もいいからこれにしましょ?」
依頼:ペルセポリスの救援
報酬:期間に応じて支払い。1日銀貨10枚。交通費別途支給
内容:ペルセポリスがドラゴンの攻撃を受け、壊滅。生存者の救出並びに街の復興。ランク問わず




