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3話:スティフと言う男とベルセウス

吹き抜けから注がれる日はオレンジ色にぼやけ時刻は夕方であると予想されることから俺たちは出発するのは明日にすることに決めた。夜通し歩くのはやはり危険らしい。夜行性の魔物であるフォレストウルフの群等夜の山道は命がけになるそうだ。



「そういやスティフの故郷ってどんなとこだ?」



「近くに川が流れて周りは山に囲まれた自然豊かなとこさ。退役した軍人や冒険者が多い。それなりに活発な村さ」



「なんとなく分かった。田舎ってことね」



「人が言いたくないことを平然といいやがって」



「でもそんなとこに?」


なんてネタは通じないだろう。



「田舎は田舎でいいとこだぞ」



「やっぱ通じないか」



「ん?何がだ?」



「なんでもねぇよ。それよりこの石碑何が書いてあるか読めるか?」

石碑にはびっちりと文字が刻まれている。多少風化しているが字自体は消えたりした箇所はない。



「結構古いから昔使われてた文字だろうな。昔この手の遺跡やらの護衛で見たことがある。まぁ俺には読めないがな!」


等と自慢げに言わないでほしい。



「読める人は居るのか?」



「多分だが帝都の考古学者かエルフなんかは読める人がいるんじゃないか?」



「帝都ってどんくらいかかるん?」



「魔動車に乗れば一週間ってとこだな。馬車なら早くて三週間はかかるぞ」



魔動車とは自動車だろうか。読んで字のごとく魔力で動くんだろうが結構文明的に発達している世界らしいと予想できた。器の記憶を辿るとどうやら列車らしい。異世界で列車なんてお目にかからないと思って居たがこれはラッキーだ。しかし異世界と言えば馬車に揺られのらりくらりと旅をするのも醍醐味だと思って居たが目覚めて早々の事もありあまりいいイメージはない。



「いくらエルフと言っても遺跡って位だからそんな長寿はいないだろ」



「それはそうだがあいつらは時間を持て余すから知識を求めて色んなことに精通してるから居てもおかしくないがな」


やはりエルフと言うのはそういう者らしい。だが巨乳もいる。トー(ry



「だがなまじ知識があるせいか余り人に対していい思いを抱いてない奴も居るからやっかいなんだよ。今回の戦争の原因もだいたいその手のエルフの過激派のせいだしな」



これもお決まりみたいなもんだ。



「いち処刑人にしてはその手の情報も耳に入るのか」



「これは今に始まったことじゃない。20年ほど前にアーガスト帝国がエルフの国に戦争を仕掛けたが痛い目を見て条約を結んだんだ。その時から帝国を始め帝国の属国や自治領に対して過激派エルフの息がかかってある神に対する信仰がえらく弾圧されてそれを引き金に今の反乱が始まったわけさ」



「それじゃそのエルフ達をどうにかしない事には反乱は終わらないのか?」



「子供がそんなこと気にすんなと言いたいが、お前さんにも無関係な話って訳じゃないもんな。あそこでドラゴンが来なきゃ俺もこんな厄介な事にならなかったのになー」




そうこのシンタはベルゼウスの人間であり千年近くに渡り信仰された英雄神ベルセウスの血筋を引く家系である。ベルセウスは人もとい他の種族含めが初めて神となった唯一の存在。だからまさに火中の栗。しかもこの器は直系の血を引き継いでいる。しかしそんな人物に転生させた閻魔を恨む事も今では叶わない。

このベルセウスも千年近く経っている事もあり血が薄まるも多くの子孫が残っており、部族として成り立っている。今回の反乱もその部族が中心に起こした物だ。

そんな人物を助けたスティフは先の守護霊の件もあり胸中に色々な思いを抱えるのである。



「正直この手の問題はどうにもならん。そのエルフ達を殺してみろ、またエルフとの戦争になっちまう。どのみち苦汁を飲む羽目になるんだよ。反乱が始まっちまった今嫌でも抑えなきゃならん。首謀者は捕まったがあのドラゴンのせいで生死不明ときた。反乱自体はしばらく大きな火は上がらんだろうがいつまた上がるか分からん。全く余計なことをしてくれたぜ」



「スティフって意外とそういう面で知識とか頭回るんだな」



「失礼な奴だな。伊達に学院卒業してないぜ?」



「学院なんてあんのか?てか学院卒業してんのに冒険者ってどうなのよ?」



「一流の冒険者になるには頭も必要なんだよ!決して落ちこぼれて冒険者しか道がなかったとかそんなんじゃねぇぞ!」



「それって自白してるんだよ?ねぇ今どんな気持ち?」



「うるせぇな!分かってんだよ!でもまぁあそこではいい経験が出来たと割り切ってるし冒険者も悪くないぞ?」



「へいへい。稼ぎはいいのか?後学院の事詳しく」



「稼ぎはピンキリさ。B級になってようやくまともに家を構えることができるって所さ。学院はバーデン学院と言って帝都にある学院を卒業した。平民から貴族のお偉いさんまで身分関係なく入ることが出来る。ただ出るのは少し苦労するがな。ちなみに冒険者はCランクになれば卒業出来る」



「Cランクになるって大変なのか?」



「それなりに大変さ。冒険者として一通りのことが出来て尚且つ一定の強さがないとなれないんだ。今更だから言うが冒険者コースがなけりゃ俺は今頃卒業出来ず路頭を迷ってただろうさ。俺は魔法の才能も無くて勉強もろくにしなかったからな」



「あーやっぱ魔法って大事なのか」



「んだ。貴族なんかは家督継ぐための道具としてしかここを卒業する事を目標としかしないが俺みたいな平民はここで成功すれば晴れて優雅な生活が待ってるんだからな必死にもなるさ」




学院のお決まり!出てきました。しかし列車があってもその手の学院事情はあるもんなんだな。六大学、赤門みたいなもんか。学歴社会も抱える異世界ライフなんて嫌なこった。


その後色々な事を聞いた。冒険者Cランクはこの手の学院を卒業するのに最低限の資格らしい。学院は帝都やその他国の首都に数カ所あり、魔法専、エリート冒険者育成、商業漁業農業などの産業専門の学院があったりする。学院に入るために留学する貴族も居るくらい学院卒業は大事な事らしい。


その中でも魔法をうまく使えるものは魔術師ギルドに入り王族や貴族お抱えの専属魔術師になったり、軍の指定魔道士として戦時に活躍したり、魔道具の開発でひと財産築いたりする。


中には冒険者になる物好きもいるらしいが優秀な後衛として重宝されるから稼ぎも悪くないと色々な面で優遇される。因みにこの世界では誰しも一定の魔力があり、科学の代わりに魔法が発達したような物だと器の記憶から辿ることが出来た。


この器の記憶は全部一気に思い出せれば楽なのだが何せ情報が多かったり向こうとは常識が違う事など体に染み付いている事しか分からないので不便というかこいつの記憶思い出さなきゃ宿命なんてほっとけば良いんじゃないのかと思ったがそれも叶わないらしい。器に関わる事があるとそれについて芋づる式に色々と鮮明になったりするのだ。


今回のじじいの件によりこの器は八大神が一柱ベルセウス直系の血筋であり、その部族が反乱を起こしたこと子供なりに分かった。


そしてこのまま行くと部族滅亡まで行きかねないまでもその立場は危うい物になり、この身も一体どうなるやら。神の加護なぞつけたせいなのか?あの糞閻魔め、こうなる事が分かってたら神の加護なぞいるものか!やっかいな事を押し付けたに違いない。そしてこの世界の創造神とやらにも文句を言わなきゃ気がすまない。

神の文句は神に言え!




「まぁ夜も更けたし明日に備えて寝るか」



などと俺が大層な事を考えていたところに水を差してきた。吹き抜けの天井からは空を埋めつくさんばかりに星が煌めいていた。星座はあるのだろうか?それさえ分からないくらい星々は輝いている。

こんな綺麗な夜空を眺めるのは初めてかもしれない。

そんな事を思いながら目を閉じるとすぐに意識を手放した。








何かが俺の上に乗っている。言うなれば夜寝てる時に犬や猫が乗って来て寝ているそんな感覚を覚えて目が覚めた。朝靄がかかり天井からは朝特有の柔らかな光が心地よい。

だかこいつは何なのか。目が覚めたら腹の上に毛むくじゃらの何かが腹の上に乗っている。暖かくこれまた心地よいが問題はそこじゃない。

俺はそいつをどかそうとした


「わん!わん、ワヲォーーーーン」



「おい今の鳴き声はなんだ!?」



スティフが飛び起きてこっちへ来て腹の上の鳴き声から恐らく犬であろうそいつに目を向けた。



「朝起きたらなんかいた。まだ小さいから子犬かなんかじゃないか?」



「んーこいつはフォレストウルフの子供かもしれんな。厄介極まりないぞ。下手したら周りに大人がいるかもしれんから気をつけろ」


と言っていたところ


「ヴゥーーバウワン!」



とうねり怒っているような否定してるように吠えたがこいつが何言いたいなんか分からない。犬猫の翻訳機なんてものがあったがあんなもの役に立たないしそもそもそんなものないだろう。ひょっとしたら魔法でなんとかなるんじゃないかと思ったがそんな魔法や方法があるかさえ分かなかった。



「今ので他の奴らを呼んだかもしれん、早々にここを離れるぞ」



などと冒険者風吹かせているスティフを横目に俺はこいつを撫でてやった。気持ちよさそうに身を委ねている。かわいい。例えこいつが凶悪な狼になるのだろうと俺は既に心を奪われた。

ライオンやトラを小さい頃から育て、手駒にしている輩はいるしこいつも大丈夫だろと思い


「スティフ、俺はこいつを連れてくぞ」



「辞めとけ絶対厄介なことになる」



「知らん、俺はこいつを飼うと決めた!!」


「ワン!」


「お前も同調するな!いくらかわいいからって...からって...」


どいやらスティフもこいつの可愛さに籠絡したようだ。



「責任はお前が取れよ」



「言われんでもそうするさ」



こうしてスティフの帰郷の旅路に新たな仲間?が加わった。



「もし他に仲間というか俺らの敵?がいるならそいつに分かるんじゃないか?」



とスティフに言われ子犬に問う。言葉なんぞ通じるもんかと思ったが


わんわん!

と首を横に振る。頭もいいのかそれとも適当に答えたのか分からない。



「どうやら居ないらしいぞ。しかしこいつは何なんだろうな?急に降って湧いてきて」



「お前は言葉が通じるのかただの親バカか。さっきも言ったがフォレストウルフの子供に似ているが、場所が場所なだけによく考えれば可能性は薄い。俄かに信じられないがそいつはもしかしたら神獣のベオウルフかもしれんな...」




ベオウルフそれはある英雄の神話の主人公の名前、一説によるとドラゴンであるとされるあれだ。よくソシャゲーのハズレ枠や雑魚枠になっている記憶がある。モン◯トなんかで地味に使い道のあるビッ◯ンブ◯イカーのA◯Wで体力も星5の中じゃ高めで初心者なら使い道があるんじゃないだろうか。



「そんなことよりベオウルフって狼なのか?俺の知ってるベオウルフは」



と言いかけたところで、思い出した!綴りはしない。こいつはベルセウスが重宝していた魔物だ。ベルセウス像の横に象られている事がある。西郷の像の犬みたいに。ベルセウスが神になったことでベオウルフもまた神獣へと昇華した。

と言うことはこいつは俺の忠犬か?しかしいつ出てきた?ここに来たからなのか?確かじじいがまだ俺が若すぎると言っていたが恐らくそういうことなのだろうと納得した。納得はしたが腑に落ちない。

今のままじゃただの子犬だ。きっとこいつは俺が成長すれば大きくなるのだろう。というかなって欲しい。

どこぞのゲームみたいに入手した時点のレベルでその武器の性能が決まるみたいな仕様ならこいつは一生子犬のままだ。能力も低い。そう役に立たない。などと考えていたらその考えが見据えたのかくぅーんと小声をあげている。かわいいから撫でてやった。

こいつはそんなんじゃない、俺と共に成長するんだ!とめい一杯撫でてやった。



「名前をつけてやらんとな。ベオウルフだからベオでいいだろ」



「おいおいいくらなんでも単純すぎるだろ。せめてなんだポチとかクーンとか」



「そっちの方が単純だろ!よし決まった、お前はベオだ!ベオウルフのベオ」



といい撫でてやったら顔を舐めまわされた。かわいい奴だ。しかしベオウルフは神獣ということもあり普通の魔物と違う。魔法が使えるのだ。それもとてつもなく強いらしい。この見た目からは想像できないがこれからの成長に期待する。



「それよりスティフ、ここら辺漁らなくていいのか?なんか良いものが出て来そうだけど」



「いくらベルセウスのもんでも遺跡荒らしみたいな事は辞めといた方がいいぞ」



なんて常識人みたいな事を言われた。石碑の横には宝箱や台座がありその上に指輪やら細々したもが置いてある。



「ベルセウスのものつまりは俺のもの!という事で失敬しますか」



「これは冒険者の勘だが、宝箱に触ると何かが起きるぞ。いかにも怪しい棺みたいなものがある」



「あそこでロープ引いたスティフに言われたくないんだけど....。まぁそうだな。辞めておくか」


と言ったところで




''なんだ辞めるのか''



と声がした。声がした....棺の中から。



「ひぃいいいい今声がしなかったか!?」

つい俺は驚いて情けない声をあげてしまった。



「あ、あぁ棺の中から聞こえたがき、気のせいだろ。さっさとここを出よう」



「お、おうそれがいい」



''つまらんやつじゃのう。俺が何百年ここで眠っていたと思っておる。退屈で仕方なかったのだ相手をせい''


と確実に棺の中に誰かいる。



「もう絶対棺に誰かいるよ!!!これ絶対やばいよ!」



「わかっちゃいるが手遅れだろ」


とスティフは斧を構える。



''ほぉお主、斧を使うのか。斧神ラブルスと戦って以来だわい''



といいながら棺から男が姿を現した。

全長3メートルは優に越えるだろうその体躯。いったいどうやって棺に納まっていたとか小一時間問い詰めたい。



''そっちの小僧は....そうかお主がベルセウスの子か。ちと小さすぎんか?ベオウルフも目覚めたようだが、子犬じゃわい''



「うるさいな!ここに来た時じじいにも言われたわ!」



''カッカッカ!あいつも目が覚めてたのか。まぁベルセウスの物が来れば必然よのう。まだ未熟ゆえ今回は大人しく引きこもるわい。また相見えようぞ''


などと抜かしそいつはまた棺に納まった。




「一体なんなんだよここ...」


スティフは全てを忘れたいと言わんばかりにうなだれている。仕方がない事だ、俺も忘れたい。器の記憶をたどろうとしたが何も思い出せない。ここに来てから若いやなんやら言われたからきっと時が来ていないから何も教えてもらっていないのだろう。




そんなこんなで俺たちは遺跡を漁らずに出て行くことにした。

あからさまな主人公補正がありそうな色々な事があったがかくして新たな仲間を加え、ようやくスティフの故郷へと出発をした。

ちょっとした説明回になりました。今後も世界観や宗教等説明回がありそうです。

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