2話:これはまだ己の運命を(ry
地下洞にようやく着いた。ここは有事の際の避難通路だそうだが人は居ない。この洞窟は街の外へと繋がっているが誰がドラゴンの急襲なんて予期して避難などできるだろうか。洞窟に入る途中逃げ延びた帝国軍と反乱軍はこの期におよんでまで争っていたがそこまで相手が憎いのか。
「なぁおっさん、どれくらいで街の外に出られるんだ?」
「そうだな、何事もなけりゃ半日かからずに出られるだろ」
「何事もなけりゃ?」
「あぁこの洞窟は魔素が溜まりやすいから魔物が出るんだ。普段なら冒険者が定期的に退治してるんだが戦争のせいでそれができてない可能性があるが大して強い魔物は出ないな」
出ました、魔物。流石異世界と心ときめかせたが処刑されそうになり魔物に襲われて死にそうになるなんて真っ平ごめんだ。
「魔物かーどんな奴がでるんだ?」
「ポイズンスパイダーとかロックバットくらいだろ。何、安心しろ!俺がいればそれくらい朝飯前さ」
「おっさんそんな頼もしいキャラだっけ...」
「これでも戦争になる前は冒険者だったんだ。ちなみにランクはBだ」
などと自慢気に話したがB級冒険者などただの噛ませだろと心の中でつっこんだ。冒険者デビューしたての主人公に喧嘩ふっかけて来て返り討ちにされたり、強い魔物の前にやられるそんなイメージだ。
「あーやっぱり冒険者ギルドとかあんのか」
冒険者ギルドと言えば異世界における大ファクターの一つだ。
「そんなことも知らんのか?世間知らずにも程があんだろうがまだガキだしな」
「俺ってそんなにガキに見えるのか」
「見えるってお前さん自分の年くらいわかんだろ」
と笑われたが俺が異世界に転生してから正味5時間程、その上器の記憶がなく、中身は25のいい大人だ。
「そんなこといいだろ!俺も冒険者になりたいなー」
「好きでなるもんじゃねぇよ。命張る仕事だからなって殺されそうになった奴に言っても意味ないかハハハ」
「笑い事じゃないしお前に殺されそうになったんだぞ!」
「まぁそうだな。あのドラゴンが来なきゃ死んでただろうにドラゴンに感謝だな。ってもあのドラゴンのせいで多くの人が死んだだろうし街もどうなったやら。ここからも無事でられるといいなガキ」
「ガキガキうるさいな!俺はシンタって名前があんだ!」
「俺もおっさんじゃなくてスティフって名前があんだぞ?」
なんて全く緊張感のない2人であったかが
「止まれ、ポイズンスパイダーの群れだ」
「いきなり魔物かよ...俺は戦えんぞ」
「子供に戦わせるかよ。ここで待ってろ」
また子供扱いされてムカついたが、スティフの斧さばきはすごかった。ものの数分で五体のポイズンスパイダーは真っ二つになり息絶えた。さすがB級冒険者(笑)という事だろう。
すかさずスティフは戻って来て再び俺たちは歩き出したがこの後ファングベアという熊の魔物に出くわしたがすやすやと眠っていたので忍び足で逃げ切った。1人では手に余るらしい。ここらへんがやはりB級であるがもし起きて襲われでもしたらたまったもんじゃない。そして心なしか隠密が上がった気がした。
「おっさ....「スティフだ。こう見えてもまだ26だ」スティフさんや休憩しませんか」
おっさんと言おうとしたが突っ込まれた。まぁ俺も25だからおっさんなんて言われたら怒るだろうから仕方なくスティフと言い直す。この世界の人は老けて見えがちだ。外国人が老けて見えるのと同じだろうと納得させた。
「まだ半分も来てないがガキにしちゃよく歩いたな」
これでも三日三晩歩き続けたことがあるのだ。これくらい余裕とおもったが案外疲れる。器の体力的なもんだろう。
近くに小さな泉があった。その周りには光るキノコが生えていて水面が少し明るい。
「俺ってほんとにガキなんだな...」と小さく呟いた。
この洞窟は水脈が枯渇し出来たと言っていたがその名残で湿っぽく所々にキノコが生えている。この光るキノコも生えており実に神秘的な雰囲気ではある。冒険者の間じゃちょっとしたデートコースでもあるらしい。討伐依頼がてら来るとか流石冒険者らしいと思う。
休憩を終えて再び歩き出したところ、二手の分かれ道に差し掛かった。
「おかしいな。ここの洞窟は1本道の筈だったが....ドラゴンがあれだけ大暴れしたせいか?」
二手に分かれた道の前は壁のだろう瓦礫があり、もう片方は瓦礫で半分くらいうれている。
「瓦礫どかして通常のルートでいくか?それともそっちの方へ行くか?」
と問われもう片方の道に目を向けた時...また目眩に襲われた。
「おいおい大丈夫か?また休憩するか?どのみち瓦礫退けるのに時間はかかるんだ」
「え、俺倒れたの?」
「そっちの道見たと同時に倒れたぞ」
大抵目眩が起きる時、この器の記憶が蘇る。と言っても名前思い出したくらいだが。今回もそうだろうと思いこの洞窟について思い出そうとしたがぼんやりとしか意識できない。
「この道をいかなきゃならない」
そんな漠然としたことしか言葉にできなかった。
「なんでまた?まぁ瓦礫どかす手間はぶけたしちょっとした冒険者デビューってか?」
などどおっさんはふざけて笑っていたが俺には何故か分からないがそんな気がしてたらないのだ。
その道はいままでとまったく雰囲気が違っていた。キノコ類は生えておらずどこからか風が吹いて来ていた。おそらくそう遠くないところでここから出られるのだろう。魔物のたぐいも出ず危機もなく道を進んでいた。が、スティフが目の前に突如目に入った紐を引っ張ってしまった。古今東西そんなものを引っ張ったら罠が発動するのはお約束なのである。
「馬鹿やろおおおお」俺は思わず叫んでしまった。
後ろから大岩、しかもスティフ曰く岩の魔物であるロックボム。こんなとこにいる筈ないと言うがこれは罠なのだ!追いかけられ踏んづけられたら爆破する極めて悪質な罠である。
そんな風に解説しているがさながらイン○ディーなんとかのように逃げ回るしかなかった。これもお約束である。
そしてしばらく追い回されていると脇道がある。きっとこの先も何かあるだろうがそっちに逃げざるを得ない。
案の定、「次は滑り台かよおおおおお」踏み込んだ矢先、急な傾斜で走っていた勢いもあり盛大にこけてそのまま転がり落ちてしまった。しばらくして平坦になり止まった。
「全部スティフのせいだ!!!」
「仕方ないだろ?あんなん誰でも引っ張りたくなるにきまってるだろ!」
と言われたがたまったもんじゃない。
「明らかに人の手が加わってる気がしたが何か心あたりはあんのか?」
「いや、あの道自体は聞いたこともないが恐らくこの街で何か隠されているって噂はされてたんだがきっとそれだろうな」
などど人のことは言えないがあまりにも漠然ととした答えが返ってきた。
「その噂詳しく」
「俺も詳しく覚えちゃいないよ。ただここは八大神の一柱であるベルセウスの生まれた街だからその関連のものだろうって。確かお前さんの苗字ベルセウスだろ?逆に何か知ってるんじゃないのか?」
「知ってたらあんな罠引っ掛かんねぇよ」
「それもそっかハハハ」
「笑い事じゃねぇ!しかも神ってただ事じゃないぞ?」
「確かにな。しかしベルセウス家の人間だろ?何か因果でもあるんじゃないか?」
「その因果、俺が断ち切る!」
「そういう事じゃねぇけど」
俺はそのあとベルセウスについて聞いたがしかしこいつは冒険者、大したことは知らなかったがベルセウスは1200年前に起こったとされる神大戦争の英雄でその後人から神になったそうだ。八大神と冠があるようにその時活躍しせめた者は後に神として讃えられたそうだ。その戦争についての詳しいことは知らないらしい。ほんとに大したことは聞けなかった。帝都の図書か教会に行けば資料があるだろうがそれはまだ先のことである。
そんなこんなでしばらく歩くと開けた場所に出る。小川がせせらぎ、吹き抜けになっていて上から光が差し、中央には光にあてられた石碑がある。
「なんて綺麗な場所なんだ…ここならあの噂のベルセウスに関する所だときても不思議じゃないな。来たかいがあったもんだ」
この図体のでかい男でもここが綺麗な場所だと分かるくらい自然の神秘溢れる空間が広がっている。
「それはいいけどなんかすごく怪しい棺とか宝箱みたいなのがあそこにあるけどここは大人しく来た道もどろうぜ?嫌な予感しかしないんだが」
「せっかく見つけたんだお宝の一つは見つけないと損って奴だぜ?」
「何冒険者気取ってんだ、俺は死にたくないっつーの」
と引き返そうとしたらそこに
「おいおいなんだこのじじい、すけてんぞ!?」
「これはスピリッツだな。初めて見たぞ。これだけの場所だ守護のスピリッツだろ」
「スピリッツって幽霊か?魔物か?」
「魔物に分類されるが大抵高貴なる魂が守護霊として遺跡を守ったりするもんだ。こりゃここは相当当たりだぞ!」
と呑気に話しているのを見かねたのかじじいが
「ふぉふぉふぉ久しぶりの客が来たと言うのに魔物扱いとは全くひどいのう」
「喋ったぞこいつ!」
「そりゃ喋れるわい!それよりお主…ベルセウスのものか。だがまだ若すぎる。ここに来るのが早かったようじゃのう。だが二魂の者か…まだ器の魂と一つになれんとは相当相性が悪いようじゃわい」
と言い突然じじいの手が光り出し、その光は俺に向かい集束し取り込まれた。
次の瞬間、走馬灯のように色々な景色が頭をよぎる。恐らく器の記憶だろう。あまりに膨大な量の情報が頭に流れ込み我を失いそうになる。
「ほーこれでも自我を保つか」
「おいおいじいさん何をしたんだ!」
とスティフはその図体に似合わず冷や汗を顔に浮かべている。何が起きたかは分からないが本能的に何かを感じたのか。
「ふぉっふぉっふぉあやつもまともな魂を見つけたようじゃな。これで其奴の元来もつ魂と融和できたろ。時期に目を覚ます安心せい」
「なんだか見てはならんものを見ちまった気がするんだが」
「気にするでないぞ。お主もまた宿命の元此奴を救うことになったのだ。お主は気づいて居らんだろうが斧神ラブリュスの加護を受けておる。八大神の加護とは雲泥の差じゃがのおっふぉっふぉ」
「なんだそりゃ…」
「此奴を連れて行けそして時がくればまたここへ誘われるであろうよ。それまで良き宿命の旅を」
と言い残し老人は消えたが俺はこいつの言うことについていくだけの知識なんぞなくしばらく棒立ちをしてい。
「おっと言い忘れておったわい、此奴が目覚めたら向こうの扉から出るといい。お主の故郷へ通ずる道へ出るだろう」
とまた出てきて消えて行った。なんとも不思議な体験をしたもんだ。正直お宝とかどうでもよくなったからとりあえず起きるまで待つとする。
真っ白な世界でシンタは目覚める。
''ここはどこだ''
''ここは君の魂の世界だよ''
''お前誰だよ''
''失礼な大人だな。僕は君に体を乗っ取られたんだよ?''
そこには10は超えてるであろう子供が立っていた。
''なるほど、お前が器の魂って事か''
''そうなるね''
''どうしたらここから出られるんだ?''
''あの老人、僕の曾祖父さんでねここの守護をしてるんだ。本当ならここに来るのは刻印の儀が終わってからなんだけど僕もびっくりしたよ。魂の融和をする為の術を使われるとは思わなくてね''
''御託はいいからさっさと教えろよ''
''はぁ、どうして君みたいな魂と融和しなくちゃならないんだか''
''それはお互い様だろ?''
''ふふそうだね。ここから出るには完全なる融和つまり魂同士納得しないと目が覚めないんだ''
''なるほどさっさと納得しろ、俺はこんなとこから早く出たい''
''そんなんで納得できると思う?君本当に大人?一つ約束してほしい。どんな宿命の旅が待っていようと君には乗り越えてほしいんだ。僕が表になってもいいけどそれだとダメみたいなんだ''
''どう言う事だよそりゃ''
''さぁね?二魂になった時より強い者が表になるみたいで僕は君に負けたんだよ''
''なら負けを認めて大人しくしろって''
''そうも行かないよ。君は知らないだろうけど僕の血筋は少なからず宿命を受けて生を全うする。それを知らない君に任せたら宿命をすっぽかして自由に生きるんじゃないかって不安になったんだ''
''好き好んで死地なんかに向かわんわ''
''だから約束してほしい自由に生きる中で君は僕の宿命も背負って生きてほしい。きっと神様はそれに期待して僕を選んだんだと思う。だから一生のお願い!''
目を潤ませ上目遣いで俺がショタもしくはこいつが女の子ならイチコロだっただろう。
''そんな可愛くとてつもない事言われてもな......善処はするとしか言えんな''
''ふふ素直じゃないお兄さんだな全く。それでもいいよそれじゃ君も宿命を背負う覚悟を決めたから僕は受け入れるよ''
''そんなんでいいのか?てかお前はどうなるんだ?''
''さぁ?多分君の中で生き続けるんじゃないのかな?''
''そういうのはもっとかわいい女の子に言われたいってもんだぞ''
''僕だって君みたいにぱっとしない奴なんてごめんだよ!でももう時間がないみたいだ''
''そうかお前も短い人生だったな''
俺の半分くらいの人生で幕を閉じるなんてかわいそうな奴だと思ったが正直同情するよちはない。
''死ぬわけじゃないよ?それに体は僕のだし!君がこれから体験することは僕が体験すること、さっきも言ったけど君の中で僕は生き続ける、君が死ぬまで''
''なんか嫌な一連托生だなお互い様みたいだが。これで俺も戻れるんだよな?あとお前の人格とか特技とかその辺影響すんのか?''
''多分するんじゃないかな?いい意味で''
''それってなんか俺にしたら悪い意味で影響しそうなんだが''
''全くここまで来て君って人は。それじゃまたね''
とあいつの声がフェードアウトしていき俺の意識はうっすら目覚める。なんだか心が落ち着かない。そしてあいつのことを思い出そうとしたがあのじじいのせいで色々とこじれていて整理ができない。
「お?やっと目が覚めたか!」
スティフがそこにはいた。全裸で。全裸で。筋肉隆々のそいつは誰得なのか小一時間問い詰めたい。
早く服を着てほしい。どうやら水浴びをしていたらしい。この清流が汚されないか心配だ。それかまさかとは思うが
「お前まさか俺を!!!」
「バカ言え!ガキなんざ興味ねぇわ」
「ですよねー早く服着ろ。目が潰れる」
「へいへい。起きて早々相変わらずで安心したぜ」
「ところであのじじいは?」
「さぁな消えちまったよ。それより早くここから出よう。とりあえずは俺の村行って色々整理しねぇとな」
「それもそうか。んじゃとっとと行くぞ!」
こうして俺たちはスティフの生まれ故郷へと向かうのだった。そしてこの時から俺の宿命の旅は始まる。スティフはどうすんだろ。聞きたいがこいつとはまだ出会ったはかりだ。そんな事話すまでもないかと胸に秘めたが彼もまたシンタの命を救ったことにより宿命の旅へと足を踏み入れてしまうのだった。




