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9話:兎とゴブリンと墓所と

サンジュさんの料理は本当においしい。

この親父の奥さんでいるのが本当にもったいない。

昼飯はチキンソテーリーキ添えとトマトのスープと黒パンである。

ちなみに米にはまだ出会っていない。おそらく過去や今現在にも転生者はいるだろうから日本の食文化溢れる国があってもおかしくない。俺自身そこまで米が好きってわけじゃないが2か月以上口にしないとさすがに食べたくなる。

やはり小麦の生産が多くパンとパスタは種類も多い。どこぞのちねり米じゃないが代用は不可能ではないだろう・・・

昼飯を食べ終えギルドへ向かう。









「エルルちゃん!!!元気だったかい?二人ともあれからどうなのよ!」


受付おばさん再び。俺は取り敢えずクエスト掲示板へ行く。


「あわわわとと、特になにも」


そしてエルルは相変わらずこういった話に弱いのであった。



「あらぁそうなの?てっきりもう出来てるんだとばかり思ってたわ」




「で、できてないですよ!もう!」



「慌てちゃってかわいいんだから」


いいように遊ばれている。家を出たときの勢いはどこへやら。



「ベルクくんもうかうかしてると他の男にとられちゃうわよ?」


ちなみに俺は偽名を変更した。


「俺にふらないで欲しかったな・・・。今はそれどころじゃないと言うかなんと言うか」


あ、これ言っちゃいけないんじゃ。

エルルがどことなく悲しい顔をしている。


「そうじゃなくて恋はもちろんしたいけど、やることが多いというか!あぁああ」



「あらあら二人ともうぶなのねふふふ」



「そんなことよりあんまクエストないな」


相変わらず討伐関係のクエは少ない。「今度は嫁がどこか行っちまった!嫁の探索を頼む!」「っち手紙を偽装したのになぜかうまく行かなかった。またあいつの恋路を邪魔してくれ!」だとか「ハチミツちょうだい役目でしょ!」とか「ホットドリンクを買い忘れたので届けてくれ」とかなんなんだろうかこの村は・・・・


「そうね、ここにいる人って軍人やら冒険者引退した人が多いから自分たちで魔物退治しちゃうし・・・」



「クエスト受けなくてもいいか」




「はいはい、そんなお二人さんフリークエストって事で受けれるわよ?5匹単位で報奨金がでるわ。倒した魔物によって値段が違うからそこだけ注意ね。素材の買い取りもするからじゃんじゃん狩ってきなさい!この時期だとホワイトラビットのお肉なんかいい値段で買い取るわよ?でも二人じゃ危ないでしょうから見かけたらなるべく逃げなさいね?」



「ホワイトラビットか・・・。うさぎおいしいかのやまーってか?」



「ふふベルク何よその歌」



初めて偽名で呼ばれた気がする。



「俺の故郷の歌だよって・・・まぁ気にするな。それより受付のおばちゃんありがとな!」




ちなみにベオは家の裏の材木の上で寝ている。こいつが本当に神獣なのか疑わしくなってきたが、まだ完全な復活は遂げていないらしいので仕方ないのだろうか。

ベオを起こし村を出る。




「お?お二人さんデートかい?」


とスティフとこの村に来た時に最初に出会った門番だ。名前はガデン。


「ち、ちがうわよ!今から魔物狩ったりするの!」



「ははエルルちゃんは相変わらずだな。北の墓所には気をつけろよ?あの時黒いドラゴンがそっちの方へ飛んで行ったらしい。さすがに時間も経ったからいないとは思うが、あそこは魔物がうようよしてる。この季節はホワイトラビットに気をつけるんだな」



「ただのウサギじゃないのか?まぁ試したいこともあるからそこへ行くよ」



「人の話聞いてたか!?エルルちゃんを傷物にしたら俺が許さないからな!!!」


傷物って・・・


「心配すんな!魔法も使えるようになったんだ」



「ほー坊主魔法使いなのか。その割剣を使うんだな。まぁ気をつけろよ」




「はいよ」



ぱーーふーーーーと門番が笛を吹いて見送ってくれた。クエストを受けた冒険者が町を出るときの合図らしい。















「本当に墓所に行くの?あそこはよくゴブリンとかオークが巣を作ってるのよ?それに雪山にはホワイトラビットだっているし」




「スティフとあの街を出るときに拾った魔術書を読んだら新しい魔法を使えるようになったみたいなんだ」



「へーそうなの?」



「ふっふっふ俺の右手がうずくぜ!!!!」




「大丈夫かしら・・・・」




ちなみに魔法は決められた呪文があるわけではない。魔法をイメージして発動する。より具体的にイメージするため名前を付けたり、呪文の詠唱をする。

その際のイメージや魔力の使い方などを魔力を使い言葉にしたものが魔術書である。なので魔法の入門的な役割もある。そして強力な魔術師は自分の魔術をしたため、金を稼いでいる者もいる。

しかしだ!われら日本人にかかればそんなものは要らないであろうが、この魔術書の作者が”シゴトシロ・ト□シ”これは某有名漫画家の事だと思い、恐らく○能力で繰り出されていたあれやこれが使えるであろうと読んでおいたのだ。我が国ながらあっぱれである。






そして俺たちは墓所へ向かう為、山を登る。標高1000メートルくらいはありそうだ。墓所は中腹にあるらしい。


しばらく上っているとベオがうなりだした。さすが策敵機である。


出てきたのは1メートルはゆうにあるであろうでかいウサギだ。



「ホワイトラビットよ!1匹みたら30匹はいると思えって言われてるわ・・・・」



「それってなんてG生命体?てか30匹ってやばいだろ!」



「だから言ったじゃない!危険だって!」





”ぐぉおおん”

うさぎらしからぬ鳴き声が発せられた。


するとあちらこちらからすぽすぽとウサギが顔をだす。


「これ30匹じゃすまないだろ!!!!」



「まだキスもしてないのにいいいい」



エルルが何か見当違いなことを叫んでいる。相当パ二くってるらしい。



「大丈夫だ!相手は多いが1体1体はそうでもないだろ!」




バシーーーーーーン 

ウサギはものすごい勢いで体当たりしてくる。

ベオが巨大化(そんなに大きくないけど)して飛んできたウサギを弾き飛ばす。


「さすがべオだな。エルルも突っ立ってないで弓!」




「はひいいいい」


俺が張り倒したウサギエルルが弓を射る。


次々と襲い掛かるウサギを対処するが数が多すぎてじりひんになってきた。


ベオは勇ましく爪や牙でウサギを屠っている。その姿はやはり狼なのだ。


「きりがないな、とりあえず上に行こう。ベオはエルルを担いできてくれ」




「ウォン!」




なんとかウサギをかわし丘の上へ行く。


「ベオ、時間を稼いでくれ!!!」


するとベオは”うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん”と雄たけびを上げた。


ウサギはみなこちらを向きおびえている。



「この手が真っ赤に燃える、白き獣を倒せと叫ぶ!必殺ドラゴンフォール!!!!」


決してゼ○はこんなセリフは言わないだろうが・・・


右手に魔力を集中させる。腕を炎龍がつつむ、その手を天高く掲げる。

すると炎の龍は空へ飛び立ち、1匹のドラゴンが無数となりウサギ達へと向かっていく。

宙を舞うドラゴンにウサギは成す術もなく焼き尽くされている。





「す、すごい・・・でもホワイトラビットのお肉はおいしいからもったいない・・・・」


こんがり炭と化したウサギを前にエルルはそうつぶやいた。

素材も取れないし、確かにウサギの肉はおいしいかもしれませんが・・・。

無事にウサギ48羽討伐しました。

討伐数、討伐した魔物はギルドカードに記録されるらしい。一体どういう仕組みなのか。



「そ、そうだな。今度からは素材に気を使って火魔法は使わないようにするよ・・・」


としか言えなかった。



どうやらここら一体のウサギはほとんど焼き尽くしてしまったみたいだ。

ちょくちょく見かけるが団体を呼ぶことはなかったので丁重に狩らせていただきました。

今日の夕食はウサギが食べられる。

魔物を食べるというと聞こえは悪いが、毒でもない限り魔物も食べることができる。

魔物の肉を専門とした冒険者もいるくらいだ。




そうこうしている内に墓所の入り口が見えてきた。


「なぁ、あれってゴブリンか?」


5匹ほどゴブリンがうろうろしている。初対面のゴブリンはイメージ通りの緑色のはだに小柄な体、顔は醜く、皮の貧相な服?にこん棒や木の槍を装備している。イケメンのゴブリンとか美女のゴブリンとかいてもおかしくはないと思うのだがこれもお約束だろう。


「そうね。見張りだと思うわ」



「そしたら見つからないように弓で倒せるか?」



「任せて!タルさん直伝の弓術をお見舞いしてあげるわ!」



ちなみにタルさんとは恋路の邪魔をしてほしいクエの依頼主である。この村で唯一のエルフでもあるのだが、俺の知ってるエルフ像と全然違う。この世界に来てから巨乳のエルフに人の恋路を邪魔したいエルフとなんでこう・・・。




俺たちは岩陰に潜む。



「1つ、2つ、3つ、4つ、5つ!」


エルルの弓は見事にゴブリンの脳天を貫く。エルル怖い子・・・。タルさんの弓術すごいんだなーさすがはエルフ。

ゴブリンが脳天を貫かれるときグギャーと声を上げていたが、それに気づいたのか墓所の中から3匹のゴブリンが出てきた。何か話し合っているみたいだ。

話し合いが終わったのか1匹のゴブリンが叫びだした。中の仲間を呼んでいるんだろう。

そして20匹ほどのゴブリンが出てきた。大所帯である。

回りを警戒しだした。敵がいることを認識したのだろう。ゴブリンのくせに案外頭が回るものだな(小並感)


「なぁエルル、ゴブリンてこんなに多いのか?」



「この数で普通くらいね。タルさんは100匹のゴブリンを相手にしたことがあるって言ってたわ」



「100匹とはこれまたずいぶんと・・・」



「ゴブリンってなんかいい素材あるのか?」



「うーん確かなかったわね。さっきみたいにドカーンってやっちゃっていいわよ?でもあんなすごい魔法打ってまだ魔力あるの?」



「ドカーンってかわいいな。だるさとか感じないし大丈夫じゃないかな?」


この手の事でよく魔力を使いすぎると魔力酔いするとかぶっ倒れるとかあるけどそういうのはまったくない。



「か、かわいいってsfghjrfjk」



「何言ってるかわかんねぇよ」



「んんっ!と、とにかく大した素材もないからさっさと倒しちゃいましょ!」


咳払いしてごまかさないでくださいよー


「そんじゃまた派手に行きますか!エルルは弓で援護射撃を頼む!ベオは周りの警戒を」


「わん!」


「任せて!」


そういうやベオ普通にしゃべらないのかな?エルルの前だからしゃべらないのかな?念話もしてこないし。




俺は剣を握りゴブリンの群れに突っ込む。

剣が体の一部になったのかのように振ることができる。

なんとか無双ばりにゴブリンを次々になぎ倒す。ゴブリンを切るとき、肉や骨を断つ感覚が伝わるが不思議と嫌悪感はない。

死角にいるゴブリンはエルルの矢により射貫かれている。

エルルさん有能すぎやしませんかね?



最後の1体となった。他のゴブリンよりいい装備をしているからこいつが群れのリーダーだろう。

足を震わせ、口がポカーンとなっている。

こいつの言葉を代弁するなら、全滅か!?19体のゴブリンがたったの3分で!?

俺は無慈悲にも最後のゴブリンの首をはねる。

血しぶきが顔にかかる。生ぬるい血が頬を伝うがこれまた嫌悪感はない。

なんだろう、よく生き物、特に人型の魔物を初めて殺したとき吐いたりする人もいるのだがどういう訳かそういった反動はない。

俺が冷酷無慈悲な殺人鬼とかそういう訳ではないのだが、やはり魔物だからだろうか、それとも器の影響か。そんなことは気にかけなくてもいいか。




「ふぅ、終わったか」



「剣もすごいわね・・・ゴブリンが可哀想と思ったのは初めてよ?」


とエルルが顔を軽くひきつらせている。



「エルルも容赦なく弓を引いてたじゃないか?」



「そ、そうだけど。さ、さぁ、倒したことだしまとめて焼き払いましょ」



魔物は倒したからといって死体が消えるわけではない。もちろんドロップアイテムなんかもないわけだ。

ゴブリンは特に剥ぐ素材もないし骨も武具に役立たないそうで、もちろん肉もまずいらしい。最初にこいつを食べた人に敬意を払いたい。

死体は放置しておくと疫病の原因やアンデッド化して面倒なことになるらしい。

ちなみに魔物の発生原因は謎らしい。一番有力な説は魔力による呪いだそうだ。すごいオカルトじみている。

穴を掘ってゴブリンを放り込む。

汚物は消毒だ!!!火ーーーーハーーーー!

火炎放射器を打つ体勢で火魔法を放つ。ゴブリンが焼けこげるにおいはきつい。




「さて、ようやく墓所に入れる訳だ」


日がだいぶ傾いている。


「私初めて墓所に入るわ・・・」


墓所というからにはアンデッド系の魔物がいるだろう。

しかし墓荒しみたいでなんだか気が引けるが、墓所と名はついているが古代遺跡のようなもので、現代で言うならば古墳が相当するだろうか?


中に入ると案の定においがひどかった。おそらくゴブリンの糞尿のせいだ。

あいつらはよくこんなところで生活ができるよな・・・。

ゴブリンのねぐらなのか木や生き物の骨で組まれたテントのようなものがある。

こういった住居を構えるくらいの知恵はあるのだ。

さらに進んでいくと宝箱がある。


「こんなところに宝箱が・・・・」



「せっかくだし開けてみましょ」



「鍵が掛かってるみたいだな。剣で宝箱を壊してもいいが中身が無事である保証はないからな」



「それもそうね」


と話していると





「そ、そこのお二人さん、助けて・・・ください」


と声がした。

声のほうに振り向くとそこには女性がいた。








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