プロローグ
俺は纏心汰25歳独身趣味はパチンコとゲーム。彼女いない歴2年、社会人になり高校から付き合ってた彼女とは結婚という壁を前に別れる事になった。正直結婚なんてまだまだ先でいい。しかしこの事を後悔する事なんて微塵も思っていなかった。
仕事終わりにパチンコへ行き7万負けを喫しイライラしながら運転してたとこまでは覚えている。恐らく交通事故で死んだんだろう。せめて結婚してばあさんにひ孫の顔くらい見せてやりたかった。
何故死んだらしいかと問われればまさか目の前にこんな光景が広がれば誰しもそう思うであろう。
広大な川が横たわっている。だが濃い霧が辺りを覆っており向こう岸は見えない。
「これは恐らく三途の川だな…」そう呟いた。
俺は死後の世界なんて全く信じていなかった。車を運転していたのにいきなり白服を着させられ川の前に立たされたらそれは実在するのだと言われたようなものだ。
とりあえず川を渡る方法を探したほうがいいだろうと岸を歩き始める。泳いでもいいがどれほどの距離があるのか分からないしほんとうにここが三途の川なのかまだ些か信じられないのだ。
しばらく歩いていると人影が見えてきた。更に近づくと行列が見えた。
「おいばあさん!ここはどこだ?」
先頭の横に案内人であろうそのばあさんはどこからどうみても死にました私は幽霊ですと言わんばかりの白服に天冠姿だった。
「ここは黄泉の国の入り口だよ!あんたも三途の川くらい聞いたことあんだろ?」
「本当に俺は死んだんだな…」
「初めのうちはそんなもんさね。」
と愉快に笑っていた。続けて
「この行列は船待ちの行列さね。あんた船賃くらい入れてもらったんだろ?」
「え?船賃とんのかよ!」
「あたりまえさね!最近のもんはそんなことも知らずに死ぬのかい」
とりあえずポケットをさがしたが見当たらない。手荷物なんかもなかった。ばあさんはこいつもかと言わんばかりにため息をついて
「この先に橋がある。あんたが善人なら見つかるだろうさ。見つからなけりゃ泳いで行きな!悪人ならそのまま沈んで地獄行きさね」と意地の悪い微笑みを浮かべていた。
またしばらく歩くと橋があった。どうやら俺は善人らしい。神社によくある赤塗りの橋がそこには架かっていた。俺は橋を渡り始めたがいつまで歩けばいいのか、疲れは感じないし眠くもならなし腹も減らない。3日は歩いた気さえしたがどうやら向こう岸についた。ここにつく途中何人かとすれ違ったが会話もする気にもならなかった。
そして目の前には和様建築で作られているであろう大きな門がありどこまで続くか見当もつかぬ壁で囲われていた。
門番はいない。鬼が居ないかと少し楽しみにしていたのだが残念だ。恐らくこの先に閻魔大魔王がいるのだろう。
またしばらく歩くと列があるので並んだ。するとついに鬼が現れた。
「鬼だよすげーな!」どうやら心の声が漏れていたらしく鬼がこちらに向かってきた。
その鬼は木札を渡してきた。おそらく整理券だろう、333と書いてあった。これは皮肉か!?初当たりもせず負けた俺に対する嫌がらせだな!とイライラしながら順番を待った。
4時間ほど経っただろうか、冥宮を思わせるような壮大な建物が見えた。流石は閻魔大魔王がいるだけはある。
中に入ると鬼は慌ただしく働いていた。鬼は地獄へ行くものがその代わりに働かされるとも、希望すればなれるとも聞いたことがあるが死んだ後も働きたくはないと思った俺はそこに日本社会の一端を見たような気がしてあの世もやはり日本かと思いつい頬が引きつった。
そしてついに俺は閻魔大王様と対面する事となった。
「あぁ君長旅ご苦労!聞いたところ碌に金も食料も持たずに歩いてきたらしいな驚いたぞ」
閻魔の第一声に拍子抜けさせられ、きっと俺はアホヅラをしていただろう。
「普通は船旅をし、こちらに着いてから城下町でゆっくりしてから順番を待つだろうに。」
呆れ顔をしながらこうの給った。そして俺は
「最初からおかしいと思ってたよ!ここに来て並んでからも軒先でだんごやら肉まんやら食ってる奴が居たけどどうなってやがる!」
「まぁこればかりは葬儀した親を恨むんだな!ガハハハ!」
「くっそあれから俺は空腹とかたえたってのによ!」
俺の腹はグゥの音もでないほど空いていた。
「まぁそのことはよい。」
「よくねぇ!」と思ったが流石に口にすることは憚られた。
「そこに水晶があるだろ。手をかざしてみよ」
と閻魔に言われ手をかざす。すると閻魔は顔を強張らせ一言
「お前、異世界に行かないか?」
「はぁぁあ!?」
まさか閻魔から'異世界'なんて言葉を聞くとは思わず声を上げてしまった。
「異世界ってあの異世界か?!ラノベとかゲームでよくあるあの!」
「それ以外何があるというのだ?」
「いやいやいやいやいやそこは普通、天国か地獄だろ!!!」
「詳しいことは後で話す。行くか行かないかどっちだ?」
有無を言わせぬ物言いだ。しかしまさかあの閻魔の口から異世界…おっと同じことを書いてしまうくらいに度肝を抜くその言葉が出るとは。
「話を聞いてからでもいいか?」とついことばしってしまった。
「まぁいいだろ。そこの、こ奴を客室へ案内しろ。ついでに食物でも用意してやれ。説明は息子、次期閻魔にさせる」
そう言うと俺は鬼に連れられて客室へ向かった。
閻魔が気を利かせ団子やら肉まんやら色々用意してくれたのを頬張る。
しばらくすると、あぁ閻魔の息子だな(小並感)が来た。
「やぁ君が例の死人かい?まさか閻魔の口から異世界なんて言葉が出るとは思ってなかっただろ?」
とあの顔からは想像できない爽やかボイスが聞こえた。
「そりゃそうだ。異世界なんて実在するわけもないしな」
俺は肉まんをお茶で流し込み答えた。
「皆同じ反応をしていたよ。さて長話もなんだし簡単に説明させてもらう」
そして何故閻魔が異世界転生をさせているのか、その理由を話し始めた。
この世界もとい地球は創造神が作った神によりつくられた。なんでもこの創造神は何人?何神?かいるらしくそれぞれがこの地球と同じように生命の巣食う星を作ったらしい。
そこで各々が独自の発展をし俺が知る魔法やら異種族、魔王なんかがいる世界があるのだと言う。その中である世界が他の世界から人、所謂勇者を召喚すべくその術を見出して事あること、主に魔王討伐の度に俺の住む地球から人を攫って行った。そこで煮えを切らした地球の創造神はその創造神に突撃した。その結果勇者たり得る者の魂を死後異世界で転生させるという事で決着がついたという事だそうで。
「君からすれば死後の世界なんて信じてなかったし、宗教への関心なんて犬に喰わせてたくらいだから魂の救済やら極楽浄土でなんて考えてもなかっただろうからいいんじゃないか?」
「他人からそんな風に言われるのは腹がたつがというより皮肉か!皮肉だな畜生!というより俺は勇者たり得る存在なのか?」
「そうなるね。あの水晶に手をかざしただろ?あれはこの世界じゃ役に立たない才能があるものに反応するんだ、魔法とかね。もしこの地球で役立つ才能があれば君はあそこで死ぬ事は無かっただろうし」
「あん!?お前らはそんなに俺の事が嫌いか!?」
「まぁそう気を立てるな」
「………」
「それとこれはほぼ強制だから諦めるんだね。あと何点か異世界で転生してからだけども、転生したからといって今ある記憶や自我が残るとは限らないし、もし残っていればもとの人格と一つになるまで自分という存在に違和感をかんじるだろう。さらにどういった立場、種族で生まれるかも分からないんだ」
「それなら天国に行ってのうのう過ごした方がましじゃないか」
「こればかりは他の神次第になるんだ、申し訳ない」
「っち、他の神の道楽に付き合わせられるって事かよ」
「まぁそう言うな。次の人生は才能が活かせるんだバラ色の人生が待っている…と考えてさ」
「どの道一度終わった人生か…ならさっさと転生させてくれ」
「俺一応次期閻魔なんだけど……」
「知るか!俺の魂を弄ぶんだそれくらい許せ!てか閻魔だろうが俺は信仰も捧げてないしここでおさらばなんだ」
やれやれと言った様子で次期閻魔もとい息子はそこにいた鬼に転生の件を伝え準備を整えるよう告げた後部屋を出た。
「異世界転生か。あぁは言ったが楽しみだな。この世に未練は多少あったけど死んだわけだし、なんだかんだそういう小説やらゲームは好きだったし、記憶とか残ってくれればチートとか無双できるかなーハーレムもいいよなーそういや転生時特典とかないのかな」
という思いを馳せながら恐らく最後になるであろう日本のあの世での食事を終える。死んでも味覚やら残っているんだなと驚いたがそれもこの数日の死後の良い?思い出となった。
そして鬼に呼ばれ転生の間へと連れて行かれた。
転生の間は魔法陣らしき物の周りにロウソクが幾本も立てられ不気味な雰囲気を漂わせている。その先にある獣の骸骨で縁取られた椅子に座る閻魔大魔王がいた。
「今度は閻魔直々に登場か。この雰囲気だとまるで魔王だな」
と少し嫌味を効かせてやった。
「ふむ、息子から話しは聞いたようだな。では早速転生の儀を始めるとしよう」
「聞き忘れてたが向こうに転生する特典とかないの?」
「うーむ出来なくもないが肉体に関しては向こうの器次第になるからのう。魂や知識に関してくらいしか融通は効かせられんのだ」
「イケメンになってハーレム作ったり、魔法で無双、最強の剣士とかは出来ないって事か……」
「ガハハハ当たり前だ!魔法に関しては出来なくもないが向こうの器が耐えれぬかもしれんのだ。転生してすぐ死にたくないだろ」
「それこそ当たり前だ!うーんそしたら何がいいのやら…あ!閻魔、お前を道連れにつれていく!」
「そんなことできるわけなかろう。無難に神の加護にしておくがよいわ」
「どんな神か知らんのに着けれるか!まぁ確かにそれが無難そうだからそれで我慢してやる」
「う、うむ。では転生せさるが最後に何か言う事はあるか?」
「そうだな、親が死んでここに来たらふざけやがってとでも言っておいてくれ。あ、ばあさんの方が先に死ぬだろうからひ孫見せれなくてごめんと、そんなもんかな?そんじゃ、あばよ!閻魔大魔王!」
転生陣が光、そこで俺は意識を失った。
「全くあんな奴でも勇者として転生できるなんて不思議なもんだわい。わしもそろそろ隠居するからその時は異世界にでも行けるよう創造神にでも頼んでおこうかのガハハハ!」
そして次に纏心汰、彼が目覚めた時、異世界での人生の幕開けとなるがまさかあのような幕開けが待ち受けているとは知る由もない。それこそ神のみぞ知る、そんな波乱が彼を待ち受けていた。




