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イケメンの定義  作者: kunio
本編
8/11

イケメンと海①

よろしくお願いいたします。

じりじりとした蒸し暑さは、日本を象徴するようだ。それでも、嫌悪を感じないのは、海の上を走る船に乗っているせいであろう。私は、悠里とイケメン五人衆に囲まれ、とある無人島に向かっていた。住んでいる町から車で一時間、船で30分の場所に位置するそこは、遠目から眺める限り、緑豊かな、でも、人が過ごすことかできる建物がいくつかあった。

「凛。けっこう大きい島なんだね」

私は、島を眺め呟いた。凛は、そうかな、と首をひねる。

やっぱり、お坊っちゃまなんだ。

「あーつーいー」

日下くんは、長椅子の上で、ぐったりと倒れている。

「直也は、いつも引きこもってるからだよ」

凛が冷たく言い放つ。日下くんは、とろりとした目を凛に向けると、小さくため息をついた。

意外ではあったのだが、日下くんと凛は、割りと仲が良かったらしい。二人とも人と群れないように感じるが、そういったところが共通点となっているのだろう。ベタベタと引っ付かないけど、離れすぎもしないというところだ。

「本当に、海なんて久々です。楽しみだな」

向井くんが私のすぐ隣に立つ。

「私も久しぶり。町からじゃ海水浴できるところ遠いしあんまりないし」

私は、町から二時間はかかる海水浴場を思い浮かべる。遠いし、あまり水もきれいじゃない。

「はい。あ、先輩、今日のワンピース、とってもよく似合ってますね」

向井くんは、いつもの太陽スマイル。今日は、真っ白なレースのワンピースを着てきていた。不意に褒められて、私は顔が火照るのを感じる。

「ありが―」

「なーに、かっこつけてんだよ」

私の言葉を遮るように、佐野先輩が私と向井くんの間に入ると、向井くんの被っていたキャップを奪い取る。

「ちょっと、返してくださいよ」

佐野先輩に飛び付く向井くんだが、健闘もむなしく、佐野先輩が上に挙げた手の内にあるキャップに届かない。いじめているようにもじゃれているようにも見えるその光景を私は苦笑いして眺めていた。

その時、

ガタン―

船が波に揺られ傾く。私は、大きくバランスを崩した。

転ける!

身構えたが、予想に反して、体に痛みは走らない。後ろで支えてくれた人がいたからだった。

「孝史くん!」

私の心臓はぐるりと音をたてて回る。孝史くんの顔は、少し慌てているようだった。息を大きく吐いて、ようやく孝史くんは微笑んだ。

「危なかった。桜ちゃん、気を付けないと」

「ありがとう」

孝史くんは、私から離れると船の屋内へと入っていった。

何だか、緊張してばかりだな。

「桜、モテモテだねぇ」

悠里がにやにやとしながら、近寄る。今日悠里に来てもらったのは他でもなく、このイケメン五人の中で一人で過ごせる自信がなかったからだ。

「一日持つかな」

「ま、頑張りたまえ」

悠里は、私の背中を強く叩いた。思わずむせてしまう。悠里は驚いたように、ごめんごめんと笑う。全く悪気は感じていないようだ。

「それにしても、佐野先輩や日下くんはともかく、井上くんが桜のこと好きだなんてね」

悠里が腕を組んで唸る。私には、疑問が詰まった一言だ。

「佐野先輩や日下くんはともかくって、悠里はわかってたわけ?」

悠里は、私に哀れむような冷たい目線を浴びせた。そして、かなり上から目線の口ぶりで堂々と話す。

「佐野先輩は、桜には特に厳しかったけど目をかけてたみたいだったし、日下くんは、他の女子にはさん付けなのに、桜のことは須藤って呼び捨てにしてたでしょう?特別な存在だってことは目に見えてわかってたわよ」

なるほど、言われてみるとそんな気もする。ただ、正直まだ、佐野先輩や日下くんを始めとした五人が本当に自分のことを好きなのか信じられずにいた。自分に自信なんて全くないし、好かれる要素がわからないということが原因の多くを占めるのかもしれない。

そんなことを考えていると、船は島の大分近くまで来ていた。

「皆。船長さんがもうすぐ着くからって。荷物の準備しよう」

屋内から出てきた孝史くんが皆に声を掛ける。私達は、上陸への準備を始めるのであった。


船着き場には、もう一隻船がある。島に面した海は、写真でしか見たことのないようなコバルトブルーに輝いていた。

きれい―

無人島ということだけあり、人が住んでいないため、ごみも出ず、美しいのであろう。

「すごいな。きれいだな」

私は、同じ台詞を何度も繰り返す。ふと、佐野先輩が自分のことを見ているのに気がついた。

「何ですか?佐野先輩」

佐野先輩は、一瞬目を大きく見開くと、そっぽを向いて、何でもねえ、と言う。耳が少し赤いのは、私の気のせいだろうか。

「一回、別荘に行って着替えよう」

凛は、皆に聞こえるか聞こえないかというくらいの小さな声で呟く。先人をきって、歩くのは、暑い夏にかかわらず、汗一つかいていないスーツのゴツい男性だ。ボディーガード兼使用人というところだろう。

やがて、白い西洋風の建物が目の前に見えてきた。無人島にあるとは思えないくらい新しそうできれいだ。

「すっごい」

向井くんが、自然と口から出たような感嘆を漏らした。その言葉に、同意して、凛と使用人さん以外の皆が首を縦に振る。

建物に着き、使用人さんが扉を開けると小さく首をかしげた。

「どうしたの?」

「開いてます」

「開いてる?」

どうやら、鍵が開いていたようだった。まさか、無人島に泥棒でも?いや、ただの鍵のかけ忘れかも?思いを巡らせるが、中に入ってみないことにはわからない。

凛と使用人さんが中に入るのに続いて入る。

すると、中から物音がした。

本当に泥棒!?


#続く

ご覧いただき、ありがとうございました。

そして、続きます。

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