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マの男の者  作者: はにぃ
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第6話 正義のヒーローが現れた。どうなる?

「闇に住みし魔の心 導き照らすかお星様 夜な夜な暗闇包もうと いつもあなたが見守って たとえ行く道なくしても 知らず知らずに気付かずに 一人でいるときゃ見上げなよ 光るあなたが一番星!」

「でたな! でちゃったな! でてしまったな!」

 ギューンが、声のする方へ顔を向ける。

 魔物の群れを割るように現れたその者は、銀色に輝く仮面に金色の星形の飾りを付け、お世辞にもカッコ良いとはいえない出で立ちであった。

 ただ、夕日を背にし、白銀に輝く剣をギューンに向けるその姿は、勇者と呼ぶに相応しいものであった。

「キラリンチョ、スターバックス参上!」

 ギューンは、憎しみの目をスターバックスに向けている。

「我らが敵スターバックス、貴様はここで朽ち果てる!」

「星に変わっておしおきだ!」

 スターバックスはギューンに向かい、一直線に走り出す。

 魔物たちも次々に襲い掛かるが、あまりに速い太刀筋に歯が立たず、スターバックスを中心として左右に倒れていく。数ではその勢いを、止めることが出来ないでいた。

 ギューンはその光景を予想していたのか、表情に焦りはなかった。

 スターバックスが目の前まで迫った頃、己の後ろで待機する魔物たちに目をやった。

 小さく頷いた魔物たちは、己たちが取り囲んでいる中心を、スターバックスに見えるようにする。

 ギューンは、スターバックスに再び目を向ける。

「……この女がどうなっても良いのか」

 魔物たちが取り囲む中心には、ああああが倒れていた。


 それを見たスターバックスの躍進が止まる。


「……卑怯なやつめ」

「……利口で助かるよ、スターバックス」

 そう言って、ギューンは動きを止めたスターバックスに近づく。

「その白銀の剣は邪魔だ。こちらに渡してもらおうか」

 ギューンがスターバックスに促す。スターバックスは無念さに唇を噛みしめ、その白銀の剣をギューンに向けて投げる。

 ギューンはその剣を手に取り、ゆっくりと、じっくりと見る。

「これが魔の力を封印するという剣か。……実に汚らわしい」

 ギューンは嘲笑うと、その剣を天に掲げる。

「見よ、皆の者! 白銀の剣を奪ったぞ! これで世界は魔のものだ!」

 魔物たちは、その掲げられた剣を一斉に見る。

 己達を苦しめてきた白銀の剣を手にしたことに、歓喜の声を上げる。


――スターフラーッシュ!


 歓喜の声に、ひとつの声が紛れる。

 その声と共に、白銀の剣が眩い光を放った。

 魔物たちはその眩しさに目を覆う。

 ギューンもその例外ではなく、何が起こったかと理解できない内に自分の体が宙に浮いたのを感じた。次の瞬間、背中から叩き付けられた衝撃に、手にしていた白銀の剣を離してしまう。

 見えない視界のなかで、魔物たちの叫びが聞こえる。

「油断したか!」

 ギューンは視界が回復すると、そこには魔物たちに取り囲まれていたああああの姿はなかった。代わりに、天に煌々と輝く剣を掲げるスターバックスが立っていた。瞬時に危険を感じ、身を守るように逃走魔法を唱えようとするが、一足遅かった。


「スターダストレビュー!」


 剣から放たれた閃光が、ギューン達を包み込む。

 魔物たち、そして己の体が消えていくのを感じる。

 光の中に立つスターバックスの姿が目に入る。


「……フフ、見事だよ。しかし、次はこうはいかないぞ」


 ギューンは不敵に笑う。

 スターバックスはその言葉に動じることはなかった。


「魔王様がカオスを発動させるまであと少し……そう、貴様ら人間は滅ぶのだ」

「……何を言っている?」

「……フフ、次に目覚める時が楽しみだ」


 そう言って、ギューンは光の空間に溶けていった。


  *


 朦朧とする意識の中で、銀色に輝く仮面に金色の星形の飾りを付けた顔を、ああああはぼーっと見つめていた。

 目を別の場所に移すと、遠くの方から見慣れた街並みが近づいていた。両手に抱えられながら、村の方に向かっていることが分かった。

 目を戻し、かっこわるい出で立ちの者を見ていたが、徐々に自分の身に起こったことが意識の中に入り込んできた。


「……そっか、私、魔物につかまって……」

 突然の恐怖に、目から涙が溢れ、体が震えだした。

「……大丈夫、魔物はもういないよ」

 ああああはスターバックスの胸元でむせび泣いた。

 スターバックスは、安心させるようにああああの頭を撫でた。

「……ありがとう、ホタル」

 ああああは涙で崩れながら、その胸で感謝した。

「ホタル? 私は正義のヒーロー、スターバックスだ。暗闇さえも明るく照らせと宿命を背負いし正義のヒーローだ」

 仮面の裏でどんな表情を浮かべているのかはわからなかったが、ああああはもう一度「ありがとう」と言った。

「……お前の大好きな歌をさ、ずっと歌っていけるような、そんな世界にしてやるから。だからそれまでなんとかして生きるんだ」

 ああああはスターバックスの胸元の服を握った。

「……その言い方嫌い」

「え?」

「なんか最後の別れみたい」

「……そうか? ……心配するな、私は負けない」

 自信に満ちたその言葉に、ああああは緊張が解けたのか、意識がまた遠のいていくのを感じた。

「無理しないでね、ホタル……」


 再び目を閉じたああああであったが、先ほどとは異なり、その表情は和らいでいた。


 スターバックスはその表情に落ちつきつつ、ギューンの最後の言葉を思い出していた。


――魔王様がカオスを発動させるまであと少し……そう、貴様ら人間は滅ぶのだ――


 スターバックスの仮面に隠されたホタルの表情は、何かを感じたのか、険しいものとなっていた――

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