8.冒険者ギルド…?
※15話から、本格的にユキネが覚醒します。
ドアを開けるとそこは別世界。
12正都市「アクアリス」
12正都市というのは
この世界にある対魔族の重要拠点の総称であり、
私がいまいる、「アクアリス」の他に
「アリエス」
「ターロス」
「ジェニ」
「キャネル」
「レオニーダ」
「 ヴィレゴ」
「リベア」
「スピオーネ」
「サジウス」
「カプリオン」
「ピークス」
の11の都市があるらしい。
この他にも中規模〜小規模の街はあるらしいが、
12正都市にのみ、高位の魔道士による対魔用の障壁が施されているらしい。
ちなみにその魔道士様も私と同じように神威を持つらしい。
このアクアリスは
地上から見た様はまさしくジ◯リの有名作品、「ラ◯ュタ」
そして、治癒院からでた私は更に驚くことになった。
レンガ造りの建物に石畳の広い道、走る馬車。中世ヨーロッパ。
その中で一際高く大きい黒い塔が街の中心にそびえている。
あの塔はこの街を治める魔道士様と、政府機関、騎士団の宿舎など、
この世界の役所のような役割を果たしているらしい。
石畳の街を歩く人は人間や獣人、エルフ、龍人など
魔族以外のたくさんの種族がいる。
割合的には7割が人間、2割が獣人、
残り一割がその他の種…程度に見受けられる。
ちなみにこの世界の魔族には自我がないらしい。
つまり、
「ははは、人間ごときが私に敵うとでも思ったかっ!」
みたいなことはないらしい。すこしだけがっかりね。
それにしても
この世界を作ったという日本人はどれだけ安直なのだろうかしら…
12正都市にしても、12星座の英語表記をもじった名前にしか思えないわ。
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「ここね。」
私は私達を助けてくれたという冒険者がいる冒険者ギルドの前に来ている。
ミーアは朝、(私は今ミーアの泊まっている宿舎に居候している)
私が消し飛ばしてしまった馬車の代わりを見繕いに出かけていった。
ごめんなさい。
他の都市で荷を下ろした帰りでよかった…
もし高価な積み荷を消し飛ばしていたら…借金…。
考えただけでもぞっとするわね。
「よしっ」
私とミーアを助けてくれたのに、名前も告げずに去ってしまうなんて
きっと冒険者の方は親切な人なのだろう。
重い木の扉を開けると、そこには、
「クエスト、お疲れ様です!こちらが、報酬になります。」
「次のクエストだけど、盾役の人を探してるんだ。
次のクエスト、一緒にどうかな?」
「この武器いいだろ?あそこの武器鍛冶につくってもらったんだぜ?」
「やった、ランクが上がった!次はもっと危険なクエスト受けるぞ!」
こんな会話が飛び交うと思っていたの。私も。
まあ、淡い期待に過ぎなかったというべきか…。
「う〜、お姉ちゃ〜ん!もっと酒もってきて〜!」
「お前、なかなかいい飲みっぷりじゃねえか。ひっく、あ〜次のクエスト、俺と行かねえかぁ〜?」
「あんたら、うっさういのよぉ…私だって、私だって結婚したいのよぉ!!!」
「おぉっ?また受付の姉貴があばれてんぞー!がははっ」
「はぁ…金がほしい…。」
この世の闇がそこにはあった。
ほとんどの冒険者がお酒を片手にテーブル席で飲み語っている。
よく見ると受付のお姉さんもジョッキ片手に冒険者に絡んでいる。
「か、カオス…。酒くさい…。
なにがどうしてこんなことに…。はぁ…。」
とはいえ、私とミーアを助けてくれた冒険者がこの中にいるのだから
本当はいい人達なのよね…?きっとそうよ。
そう自分に言い聞かせてギルドの中へ歩みをすすめる。
例え変な視線を感じても動じない。
酔っぱらいには絡まない。目を合わせない。
「あ、あの…私を助けてくれた冒険者の方ってどなたか分かりますか?」
行き遅れたらしい受付のお姉さんの隣りにいる、
唯一まともに見える受付のお姉さんに尋ねてみる。
「あ、あなたがユキノさんですねっ!元気そうでよかったです!
ユキノさんとミーアさんを治癒院まで運んで来てくれたのは、
あの、端の方にいる『マタドール』の皆さんですよ」
そう言って指差した先には
三人の冒険者らしき人たちがテーブルでお酒を飲んでいた。
受付のお姉さんにお礼を言って、
私は壁際にいるその三人組の近くまで行き声をかけた。
「あのっ、助けていただいたユキネ、と言います。
治癒院まで運んでいただいてありがとうございました。」
そう言って頭を下げると頭の上から
聞いたことがないほど美しい、いや麗しい?
人とは思えないほど綺麗な声がした。
「あら、可愛い。リン、あなた なかなかセンスいいじゃない。」