11.ミーアの過去
※15話から、本格的にユキネが覚醒します。
「マタドールの皆さんが助けてくれたんですか…です…」
リン君とニアさんがまだ酔いつぶれていたから
私とサーシャさんの特訓もお開きになって
宿舎に帰ったところ、既にミーアも帰ってきていた。
「え、っと。マタドールの人たちに助けられるのはマズかったの…?」
マタドールの人たちにお礼を言ったことを伝えると
ミーアの顔が曇った気がした。
「いえ、ただ…あの人達は全員が神威持ちで
本来、名誉ある騎士団招集がかかっても
頑なに入ろうとしないので、国の厄介者として有名なんです…。」
そんなにすごい人たちだったのね…。
でも確かに、3人とも個性が強くて統率の取れた騎士団って感じじゃないわね。
「騎士団に誘われるのはそんなにすごいことなの?
断るくらい別にいいじゃない…。」
まるで騎士団が徴兵制のように感じた。
「それはもちろんっ!!ですっ!!
対魔組織の中で最上位に位置するのが騎士団なんですよ!?
この都市を統治している魔道士様も騎士団の一員です。
たしかに、騎士団に誘われると断れない…という風潮はあります…です。」
なるほど。
偉い人に誘われたら断りづらいのは事実よね。
だからギルドでも端の方で飲んでたのね‥。
「それを断り続けてるので、実は魔族側なんじゃないか
って、噂までたってます…です。」
『魔族』と言った時のミーアの顔はどこか、いつもと違う気がした。
「大丈夫よミーア。あの人達、悪い人たちじゃないと思うわ。
騎士団を断り続けてるのはなにか、きっと理由があるのよ。」
ニアさんはともかく、
サーシャさんは神威について教えてくれたし、
リン君はツンデレで可愛かったし…。
「それより、ごめんなさいっ!」
「ふぇ…?」
「あの、私の神威でミーアの馬車…なくなっちゃったでしょ?
ミーアの商売道具なのに…本当にごめん!」
盗賊を馬車ごと吹き飛ばしてしまった。
この世界のお金を持っていない私には弁償するすべもない…。
「えっと、ぜんっぜん大丈夫です!あれは私の馬車だったので…
それに、新しい馬車を買うめどもつけてきたので!
気にしないでください、です。」
「ユキネさんがいなかったら、
今頃私はこうやって生きてませんから!えへへ…です。」
そうやって可愛く笑うミーア。
「ありがとう…ほんとに、ごめんね。」
モフモフッ
ミーアを抱きしめる。
「いいんですよっ…えへへ…です。」
可愛すぎる。
ーーーーーー「ミーアって、なんで商人になったのか…聞いてもいい?」
前から気になっていた。
どうしてこんなに幼い少女が商人として生きているのか。
それも、一人で。
「お兄ちゃんを探すため…です。
私の村は2年前に魔族の襲撃にあいました…
その時に、生き残ったのは私と兄だけだったんですが
お兄ちゃんは持っていたお金全部と唯一残った馬車を私に渡して
どこかにいなくなってしまったのです…。」
「きっとお兄ちゃんは私を守ろうとしたんだと思います。
それで、お兄ちゃんは…きっと魔族と今も戦ってる…、
逃げてきた時の兄の目は、とても怖かった…です。」
「それで私は生きていくために…
そしていつかお兄ちゃんとまた一緒に暮らすために
商人として、お金を稼いでいる…です。」
私は軽い気持ちで尋ねたことを後悔した。
まさかこんなに小さい女の子が、こんなに強く生きているなんて
思ってもいなかった。
それに答えてくれたミーアの顔には
全くの悲しみを感じられなかった。まるで、もう悟った‥みたいに。
「そんな顔しないで下さいっ!です。
私、商人としてはうまくいってるんですよ?」
「そっか、頑張ってるんだね。ミーア。」
ミーアを守りたい。心からそう思った。
こんなに小さな身体で、私なんかよりずっと強く生きてる。
そんなミーアのために生きようと思った。
「よしっ!ミーア、私決めたよ!
私はミーアの護衛として、お兄ちゃんを一緒に探す。」
「えぇっ!…でも、でもユキネさんは神威持ちです!
私と来るよりも
この街で仕事をしたほうがいい暮らしが、できます…です…」
そんな事は無視する。異世界まで来て、この街で永住なんてごめんよ。
それに、ミーアは私の天使、命の恩人。
「次は馬車を燃やさないように上手くするから…よろしくねっ、ミーア!」
「えっと、、でも…。」
「よらしくねっっ!!」
この日から私はミーアの護衛となった。
のろのろな展開が続きましたが、
次回からユキネの神威が文字のごとく、火を吹きます。