10.爆裂再び
※15話から、本格的にユキネが覚醒します。
「じゃあ、はじめよっか!ユキネちゃん。」
そういうのはサーシャさん。
ちなみにリン君とニアさんは酒場で寝てしまった。
二人で、ギルド裏の訓練場で特訓というわけだ。なんか、それっぽいわね。
そしてサーシャさんは親切…あ、歩いたら揺れた。許すまじ。
「まず、ユキネちゃんの神威についてだけど
力を使った時になにかトリガーになるような出来事はあった?」
出来事…また嫌なことを思い出してしまう。
「大切な友達を守ろうとしました。」
半分本当で半分は嘘だ。
あの時の私は盗賊を殺したい。そう強く願った。
ミーアを守りたいと思ってもいたけれど、
それと同じかそれ以上に盗賊を憎み殺したいと強く願った。
「そう、もしかしたら…思念型かもしれないわね。
もしそうならすごいわよ?ユキネちゃん!!」
「思念型…ですか…?」
「そう!思念型!
神威を持つものは大体、決まった形でしかその力を発揮できないものなの。
でも思念型と呼ばれる特別な使い手だけは、
自分の意志で神威を操り力を具現化することができるの。」
私、きっとそれです。というかそれ以外ありえないですサーシャさん。
「そうなんですか…でも、そんなにすごい力じゃないと思いますよ…私。」
とぼけてみる。
「そうねぇ。思念型なんて
生存している人はエルフ族の族長くらいだものね。さすがに違うな?」
思念型ってそんなにすごいのっ!?ふふふっ。
エルフ族の族長と同じ力を使える美少女…いいわね。ふふふっ。
「まあ、とりあえず力を試してみよっか!」
と言われましても、、、
「えっと、神威ってどうすれば使えるんですか?
こう…発動の言葉とか仕草とか…?」
「そうねぇ。こうっ!!あとは、こんなっっ!!感じで!」
そういって手を振って見せる。何も伝わらないのだけれど…。
あ、胸が揺れているのがよくわかりました。自重して下さい。
「う〜ん、こうっっ!そいやっっ!みたいな感じでやってみよう!」
だめだ、このエルフさん教えるの下手な人だ。
「私が障壁を張るから全力でやっちゃって!」
まあ、とりあえずやってみなければ始まらないのだし
あの時と同じように目の前に盗賊がいる。と想像してみる。
右手を前に出して地面に向ける。
「ファイヤー。」
燃えない。何も起きない。
が、
サーシャさんはまだ笑顔でこちらを見ている。
まだ続けろというのね…わかったわよ。
「燃えろっ!
燃えろぉ!!
ファイヤァー!!
うぅ…燃えろぉぉぉお!!!!」
大声で叫んでも何もおきない。
未だに笑顔で見つめるサーシャさん。死にたくなってきたわ。
「なんで燃えないのよ……あーもうヤケクソッ!!
消し飛べっっっっっ!!!!!!!!」
今度はしっかり見えた。
私の全力の叫びに反応して、ペンダントが眩しいほどの白い光を放つ。
そして目の前にあの時の魔法陣が現れる。
周りの空気が魔法陣に吸い込まれる。呼吸が苦しいほどに酸素が薄くなる。
そして、
消し飛んだ。
鼓膜が破れるほどの爆音と
前髪を焦がすような熱風が起こり、目の前の地面が消し飛んだ。
私も爆発の衝撃で後ろに吹き飛ぶ。
サーシャさんの障壁も予想外の威力だったのか、
板ガラスのように割れて破れる。
平だった地面には底が煙で見えないほどの大穴が開いていた。
「うそ、、できた、、、?」
今度は意識ははっきりしている。
「サーシャさんっっ!!私、できましたよ!!」
飛ばされたせいで砂だらけになりながらも、
興奮して後ろのサーシャさんに話しかける。
「嘘でしょ…いくら神威の力だといっても‥私の障壁が破られるなんて……
ユキネちゃん!!あなた、すごいわよ!
こんな威力の爆裂魔法、はじめて見たわ!」
サーシャさんは私に駆け寄り、私の手を両手で握って大興奮だ。
むぅ、いい匂いがするわね…。
「おいおい、なんの音だぁ〜?」
「どーせ、あいつがやらかしたんだろぉ〜?」
「なんで私を見るのよっ!リア充が爆発したんじゃないのっっ?」
「昼間からうるせえなぁ、酒ぐらい静かに飲ませてくれよぉ〜」
爆発の音を聞きつけたのか、ギルドの酔っぱらい共が
裏手に出てきた。
「ユキノちゃん!逃げるわよ!!!
こんな大穴、私たちは見てないし聞いてないわっ!」
「さすがサーシャさん!私も同じことを考えていたわ!」
はじめて意見があった。
こうして、私とサーシャさんは
まだ煙が収まらない穴が見つかる前にギルドに戻った。