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Endless.wonder  作者: 桜月
6/16

冷めても美味しい恋?

お久し振りです(笑)


「彼と別れてください」


 ……はて。

 だれだこれ?


 お昼の社員食堂で茶番劇か?


 うちーー麻木コーポレーションの社食は、カフェの軽食から定食屋のガッツリメニュー、はては中華にフレンチとなんでもあるよ? な素晴らしい場所である。

 外にランチに行くのは社員の1割にも満たないのは有名な話で、取引相手も一度食べたらリピーターになるくらいだ。

 そして私も例にもれない。社食のランチを愛してる派である。

 あとはあれだな、託児所とかできれば他社に転職する女子が減るだろうな。

 総務課の茜ちゃんとかが呼びかけてるから、近いうちに動きがあるかもね。


 まあ、今は空腹を満たそうよ。


 そんな楽しい時間に乱入とは覚悟はできてるんだろうなぁ?


「彼と別れてください」


 ……電波か?


「そして私に対する嫌がらせをやめてください」


 ……は?


「皐月、なんかしたの?」

「まったく身に覚えがないけど?」


 友人の翠鳥(みどり)は呑気にパスタを食べていて。

 月末の給料やらなにやらの計算が忙しかった私はガッツリ唐揚げ定食を食べていた。


 テーブル越しに立つその子は、まあ可愛いお嬢さんでモテるだろうそれを自慢に思うことはあっても謙遜とか間違ってもしません事実です、なタイプに見えた。


 まぁ要するに、あたしはモテるのよあたりまえでしょ可愛いのよ綺麗なのイケメンにかしずかれるのが当然でしょ、と思っているのが顔に出ているのだ。


 その彼女の周りにはいつの間にか数人の男性社員が寄ってきていた。お暇なことで。


「それより、今日の飲み会もキャンセル?」

「あたしだって久しぶりに二人で飲みたいわよ」

「……心の狭い男は嫌われるわよ? 桂木主任」

「じゃあ三人で行こうか」

「女子トークに素で参加すると?」

 翠鳥あんた男の趣味おかしくなった?

「坂元さん、いくら俺でも女子の気持ちはわからないよ?」

「あたりまえです。引くわー」

「聞こえてるよ」

「それがなにか?」

「イエナンデモ」


「……おい、香織を無視してなにやってる」


 香織? 誰それ。


 取り巻きの一人が声を上げるのに、周りが頷く。


 こっちも引くわー。

 なに逆ハーレムってやつ? リアルでやる奴初めて見たわ。

 でもうちの会社のイケメンはすでに売約済みなはずだけどね。


 営業課の有沢主任も真鍋も企画課の金澤も桂木主任も開発課の井川君も社長も相手いるもんね。


 ああ、今はそれどころじゃないけど。とりあえずこの茶番劇をなんとかしないと。


「香織さんて誰?」

「は?」


「いやだから、香織さんてどちらの香織さん?」

「皐月、素ボケ?」

「マジだけどなにか? 大体別れる彼はどこにいるのさ?」

「あー、確かに?」

 むなしいが事実。

 このお嬢さんはなにを勘違いしているのか。

 それとも仮想敵を作り上げて悲劇のヒロインぶりたいのか。


「……経理の坂元皐月さんですよね」


 問いかけじゃないのか。


「そうですが?」

「私をご存知ですよね?」

「知りませんが」

「そんなはずっ! だって嫌味を言ってきたり突き飛ばされたり転ばされたり! そう! それに階段から落とされそうになったこともあったわ!!」

「存じません。なにかの間違いでは?」

 他人の空似もしくは自作自演。


 今時そんなことするわけないじゃん。バカじゃあるまいし。

 赤の他人にそんなことしてる暇なんてないっつうの。


「私っ、怖くて怖くて! でも言わないと終わらないからっ、常盤さんのためにもって!」


「で? この人誰」

 涙ながらになにか訴えてる電波ちゃんをスルーして翠鳥に聞く。

「受付嬢の三村香織。常盤を狙い続けてるわ」

「へー、常盤モテるね」

「あたしは常盤に同情するわ。この激鈍(げきにぶ)さん相手に頑張るのなんて奴くらいよ?」

 激鈍さん? 誰さそれ。

 いつの間にかいじってたスマホを置いて翠鳥がため息をついた。

 彼女の頭をポンポンと撫でる桂木主任は苦笑いで。


「っだから香織を無視するなと!」


「やかましい!! 雑魚はすっこんどけ!!」


 騒がしかった社食がしんとした。

 あー久々に怒鳴ったら疲れた。


「あんたらがその子を好きだろうが嘘を信じようが勝手にしなさい。だけどそれは他人を巻き込んだ時点で迷惑でしかないわ。事実確認もしないまま断罪しようだなんて甘い考えでよく仕事ができるわね? 男あさりも結構だけど私は仕事をしに会社に来てるの。邪魔するならそれなりに処理させてもらうわよ?」

「香織が嘘をつくはず……」

「じゃあ確認したのね? 監視カメラはお飾りじゃないの知ってるでしょう」

「……いいのか? それを確認したらお前の嘘がバレるんだぞ?」

「いいわよ? 私は嘘をついていない。その子を認識したのは今が初めてだもの。そんな子になにをするって? むしろ嘘がバレるのはそちらでは?」

「……」


 あーメンドクさ。

 冷めた唐揚げだって美味しいけどさ。せっかくあったかいご飯が食べられるのに目の前の茶番のおかげでパアじゃん。……なんか腹立つわー。


「……落ち着いてね? 皐月」

「……落ち着かなきゃいけないわけ? 冤罪なわけよ。どう責任とってくれるのさ」


「私嘘なんかついてないわっ!!」


 この期に及んでそれか小娘。


 私はスマホを取り出して番号を呼び出してかける。

「システム部? 経理の坂元です。受付の三村香織が映ってる映像で私とのツーショットあるか調べて? え? 今すぐよ。ある?」

 すぐに食堂のテレビに社内カメラの映像が写し出される。映ってるのは電波ちゃん。

「っ!?」

 誰もいないのを確認したあと自分で傷つけてる映像や誰かに泣きついてる、あれキスしてますな。

『坂元さん。あなたと三村香織のツーショットはありません。あるのは彼女のハーレムメンバーそれぞれとのラブシーンです。もっとお見せしましょうか? それ以外にもありますが』

 ご丁寧に食堂内にだけ響かせる声はスピーカーまで乗っ取り済みだった。

「もういいわ。ありがとう」

 後で差し入れ持っていこう。

「さて。 この件はあなたの上司に報告しますが依存はないわね? 周りのハーレムメンバーも同罪として」

「!? な」


「当たり前だろうが。皐月になにしてんだてめえら」


 わあ、ドスのきいた声だこと。


「遅かったわね? 常盤」

「米田、助かった」


 私の隣に頭いっこ違う長身の男が立った。

 常盤康文。私の同期で友人。


「悪い皐月。なんか巻き込んだ?」

「あんたも巻き込まれたんでしょ?」

「ああ、ちゃんと断ったんだけどなぁ。ハーレムの一人になるのなんて真っ平御免だって」

 通じてなかったわけだね。

「常盤さん!! 助けにきてくれたんですね!!」


 ……電波ちゃん。ある意味スゴい。ハーレムメンバー引いてるぞ?


「……俺は皐月が好きだからって断ったはずだけどな、 三村さん?」


 ……。

 …………?

 ………………はい!?


「そんな! 常盤さんは騙されているんです!! そんな女より私、っ!?」


 常盤の鋭い視線が電波ちゃんに刺さった。

 隣からは冷気が放出されてる。なにこれブリザード寒い、怖っ!!


「あー、こんなとこで告るなんて、常盤キレてるわねぇ」

「翠鳥? 知ってたの?」

「あんたが鈍すぎるのよ」

 さようですか。


 あ、電波ちゃんを警備員さんが引きずって行った。

 ハーレムメンバーも一緒についていく。処分は社長にまかせよう。


 やっと落ち着いた。ああ、くだらない茶番劇のせいで昼休みが終わってしまう。


 冷めた唐揚げ定食を再び食べ始めた私の隣に常盤も座る。


「あのさ?」

「うん?」


 のぞきこむように私を見た常盤は、なぜか獰猛な肉食獣のような瞳で笑った。


「そんなわけだからこれから覚悟して?」

 逃がさねぇし負けねぇから。


「……善処シマス」

「よろしく」


 頭からぱっくり喰われそうな予感がひしひしと迫ってくるよ。


「冷めた恋から始まるなら後は熱くなるだけよね?」

 翠鳥?


 冷めても唐揚げは美味しいよ?

 え? 違う? うん、知ってる。



 現実逃避をしそびれたお昼から一年後。


 私は常盤皐月になった。


なんか電波ちゃん出ましたが書ききれてません。

ふ、実力不足……orz


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