69. One shot that has been connected.
視点はソラくんです(久々)
「……………え……?」
刹那の空白。
戸惑うトウヤたちを背に僕らは地に足をつけた。
「…!?」
もはやセイナに至っては言葉すら失っているようだ。見ると、二人ともすっかり目を丸くしている。
……それも当然か。突然目の前についさっきまでどこかへと消えていた僕らが現れたんだ。そりゃあ驚くはずだ。驚かせて申し訳ない限りだ。
「二人ともごめん、遅れて」
「…ソラ?……ミユキ?」
ようやく絞り出したかのようなか細い声でセイナは僕らを呼んだ。
相当な苦労をかけてしまったみたいだ…すっかり顔色も悪くなって、疲弊してしまっている。だが、その代わり目に宿る光は一層強さを増しているように見えた。
「ソラ、ミユキ……待ちくたびれたぞ」
「ごめん、トウヤ」
流石のトウヤも少し呆れたように肩を落とした。
「でも、おかげで準備はできた。ありがとう」
「そうか、そりゃよかった」
「そりゃよかった、じゃないわよ!!アタシたちかどれだけ苦労したと思ってんの!?超怖かったんだから!決意固めても怖いもんは怖いの!!本当にもう、死ぬかと思って…」
息急き切ったようにセイナは僕の首元をつかみ、怒鳴った。いや、申し訳ないとは思うけど……頭揺らすのは勘弁。せっかくのキメシーンで吐くから、吐いちゃうから。
「わ、悪かった。悪かったって!」
「まぁまぁ、セイナちゃん。とりあえず落ち着いて?」
間にミユキが入ることでようやく解放され、首元をさする。全く…相変わらずセイナは恐ろしい。
「…ミユキに免じて今回は許す」
「光栄至極です……」
「それで、なんでお前らがここにいるんだ?神の所にいたんじゃねーのか?」
「あぁ、それは……」
「ソラ!そろそろゾンビたちが動き出すよ!」
ミユキに背中を叩かれて気づく。そういえば僕ら、ゾンビに囲まれているんだった…。こんなことしている暇はないな。
「おっと、さすがにそろそろまずいか……二人とも、とりあえず今は僕らについてきて。島の中心に行かないと巻き込まれるから」
「巻き込まれるって……何に?」
「すぐわかる。…あ、トウヤ。まだゾンビ倒すくらいの余力はある?」
「もちろんだ。つーか、お前らが来なかったら一人で道切り開くつもりだったぞ?」
「さすがトウヤ」
久々のこの空気はとても心地がいい。だが、これ以上はそうも言ってられない。
「それじゃ、行くよ!」
僕らは一気に表情を引き締めると、同時に駆け出した。大剣で薙ぎ払い、銃弾を額に撃ち込む。そうやって道を開いていく。後ろにはセイナとミユキが続き、まっすぐ突き進んだ。
斬撃や弾丸を受けたゾンビたちは次々と灰となり視界を阻むが、僕らは足を止めず、ただただまっすぐに進んでいった。
やがて、少し高くなった台地にたどり着いた。これが目的の島の中心部だ。
「やっと……つい、た?」
僕の歩行速度が弱まったのでセイナが肩で息をしながら聞いてきた。生憎、未だ視界を塞ぐ灰のせいで現時点を確認はできないが、間違いない。
「ああ、着いたよ。目的地」
言って全員が台地に上がったのを確認すると、ミユキに目で合図を送った。ミユキは静かに頷くと、剣を鞘から抜き放った。
「みんな、下がってて」
ミユキが言うと二人は黙ってそれに従った。何が今から起こるのか、それも何も知らないままだが、二人は何も言うことはなかった。
「ソラ、ミユキはなにを…」
代わりにその疑問は僕に向けられた。いや、わかってたよ?わかってたけど…めんどくさい……
「見てればわかるって」
ごまかして答えると、トウヤは納得できないようだった。だが、それでもミユキのことを信じてくれているのか、訝しげながらミユキのことを見守るに留まってくれた。
そんな三人が見守る中、ミユキは二振りの剣を構えると、今にも迫り来そうなゾンビたちに向き直った。そして、大きく息を吸うと一気に大地へ剣を突き立てた。
瞬間、大地が大きく揺れ、突き刺された剣を中心に大きなヒビが僕らの立つ台地を囲むように伸びていった。
「お、おい……まさか…っ!」
「島が……」
唖然と見つめる二人に構わず、ゾンビたちの立っていた地はもはや瓦礫となり、みるみるうちに崩れていった。これで敵は皆消えて、残ったのは台地のみ。これぞミユキのパワーあってなせる技だ。
「……こんなことって…」
……うん、セイナたちの思うことはわかるぞ。
…………ミユキ、つぇー………
「よし、これで邪魔は入らないね!」
にこやかに言うミユキはどことなく怖かった…
「…もしかしてだけど……このためにみんなを避難させたの?」
「え?うん、そうだよ」
なにくわぬ顔で言い放つミユキは本気で怖かった。
……そんな前から計画してたのか…。この計画はミユキが提案してきたので呑んだのだが……まさか計画的犯行だとは…
正直、苦笑いせざるを得ないが、まぁ良しとしよう。
それより……だ。
「……やっと会えた」
先ほどの爆風で邪魔な灰も吹き飛んだため、視界が極めて良好となった。枯れた大地に大樹、そして体の半分が石化した化け物。
ようやく姿を現したのはそんな光景だった。
「やっとはこっちのセリフだ!まったく…」
と、不意に頭上から声がして見てみると、そこには船長の姿があった。
「船長!」
「無事だったか」
よく見れば、黒い翼が生えてる……やっぱ船長、悪魔なんだなあ…
「ん?あれ?なんでここに船長が?」
「今の状況わかってんのか?!話は後だ!それより早くこいつをどうにかしろ」
すっかり青白くなった顔に、石化する化け物の姿を見て理解した。そうか、食い止めててくれたのか。
「なるほど。ありがとう、食い止めてくれてて。後は僕に任せて」
「そうか…んじゃ、急ぎで頼むわ」
化け物は身の危険を感じたのか、突然無我夢中に叫び始めた。耳をつんざく甲高い声に顔をしかめるが、手を止めるわけにはいかない。
僕は拳銃を取り出すと、ずっと右手に握り込んでいた金色の弾丸を装填した。
弾は一発。外すことは許されない。
ゆっくりと落ち着いて構えて、照準を合わせる。
みんなが作ってくれた好機。決して無駄にしない。
僕らの長い旅に…ようやく決着をつける時が来た。
トリガーに力を加えていく。
……二人とも。
そして、一気に力を加える。
……頼んだよ。
一瞬…
金の軌跡が神の体を貫いた。




