66. I want to change and to protect.
刹那の閃光にセイナは顔を上げた。
「……ミユキ?ソラ?」
嫌な予感がして足が自然と島の中央へ向くが、すぐにそれはトウヤによって阻まれた。
「セイナちゃん、どこ行くの?」
握られた手の力は強く、逃れることは叶わなかった。
「トウヤ…二人が……二人に何かあったのかも…」
「何かあったのだとしても、俺たちは俺たちのやるべきことを優先するべきだ」
そう言ってトウヤは再び逆神会の方へと戻っていった。セイナは後ろ髪引かれる思いで島の中央を見るが、やがてトウヤの後を追っていった。
セイナたちはミユキに頼まれ、逆神会の避難の手伝いをしていた。ミユキが言うに、今後、全滅の危険が出てくるかもしれないので、その対策としてのことだそうだ。あのミユキが言うのだ。それほど危険なのだろう。
セイナたちはミユキの頼みを聞くとすぐに行動にうつした。逆神会の説得に少し時間はかかったものの、結果としてなんとか半数以上は避難を済ませることができていた。
そんな時の閃光である。
先ほどから姿が見えなくなったドラゴンたちのこともあり、セイナはなんとなく嫌なものを感じていた。
「…………」
「…おい、セイナちゃん!まだ避難は終わってないんだ。早くしなきゃ俺たちも…」
「違う…」
「…え?」
「やっぱりこれじゃダメだよ」
「セイナ…ちゃん?」
「トウヤはなにがしたいの?ミユキに頼まれたから避難の手伝いをするのはわかるけど…それ以上は求められてないよ?」
セイナはなんとなく感じていた。行動の節々に現れる焦り、言葉から伺える逃げの意思…
どうにかして自分たちも危険から逃れようとしている気がするのだ。
それが、セイナには耐えられない。
「二人が頑張ってるのに…なんで遠ざけようとすんの?なんで二人ばっかりに背負わせるの?そんなの……あの神様となんも変わらないじゃん……」
今までのソラたちとの旅は辛いことばかりだった。だけど、それは全て二人が……ソラとミユキが苦しんでいたから、だから辛かった。セイナにとって二人は初めての友だちで、家族と同じくらい大切な存在だった。その二人の苦しむ姿を見るだけでセイナはつらくてつらくてたまらなかった。
「………」
「アタシはもう……逃げない。二人を助けるんだ」
誰よりも弱いのはわかってる。
誰よりもバカなのもわかってる。
誰よりも弱虫なのもわかってる。
だけど…守りたいものくらいはある。
『だいじょうぶだからね、おねぇちゃんがカイトをちゃんと守ってあげるからね』
いつだってそれは変わらない。
『海斗を忘れた時なんて1日もなかった。なのにアタシは仲間に頼って逃げてきたんだ。だから、これからは…アタシは強く生きる』
そして、決意した。
『海斗を絶対に助けに行く。だからさ、約束するから…少しの間だけ待ってて?』
約束をした。
ならば、やるべきことは一つ。
ソラとミユキとトウヤとセイナ。みんな一緒に生きて帰る。それだけだ。
「セイナちゃん……戦えないのにどうやって助けるの?」
と、いきなりトウヤは死角を突いてくる。
「それは……き、気合いでなんとかする!」
「気合いねぇ」
「うっ……な、なによ!自分は戦えるからっていい気にならないでよねっ!!」
真っ赤になりセイナにトウヤは今にも吹き出しそうだった。
「っくくっ……あははっ!セイナちゃん、本当に君は……」
「〜〜っ!!もういい!!」
「ああ、ちょっと待って。ごめんごめん、悪気はなかったんだ。ただ可笑しくってね」
「それ、バカにしてるから」
「だから違うって、可笑しいのは俺」
笑いながら自分を指すのをセイナはわけがわからないというように見つめた。
「……まさか、姫さまを守るナイト気取りが裏目にでるなんてね…」
「は?」
「ほんと、セイナちゃんって相変わらず身の程知らずだよね」
いきなり真面目な顔になったかと思うと今度は本気でセイナをバカにした。当のセイナはもう何が何だか訳が分からなくなってきていた。
「もう!なんなのアンタ!なにがしたいのか全っ然わかんないんだけど!?」
「わかんないかなぁ……まぁ、つまり、仕方ないから俺が守るよってこと」
「………………」
相変わらずはどっちだと叫びたい衝動を抑えつつ、セイナは熱くなる顔を隠した。
こういうことには免疫がないセイナにとって今のような言葉はもはや拷問だ。その辺のところ注意してもらいたい。
「……行こう」
「了解」
やがて発せられた小さな声を合図に二人は駈け出し、そしてすぐにその歩みは止まった。
「うわっ!?」
「セイナちゃん!」
突然、大きな揺れが起きバランスを崩したセイナはかろうじてトウヤに受け止められた。そして、しばらくしてその揺れがおさまる頃には事の重大さに気がついた。
「な、何……これ…」
揺れているのは大地ではなく空気。身体中が震え、気分の悪さとともに頭の中の警報の音も強まっていくのだ。
《逃げろっ!!》
そう頭が、身体全体が叫んでいた。
そして刹那…
ベリベリベリッ
不意にした何かを引き裂くような音が妙に生々しく、耳を抑えたい衝動に駆り立てられる。が、それどころではなかった。
島の中央、大樹の幹に大きなひび割れができていた。それは次第に広がっていき、やがて中から何十もの紅に染まった人の手が這い出てきた。
「なんだよ…あれ…」
その姿が露わにならずとも答えはきっと一つだ。
……神だ。
だが、それはもはや神というにはあまりにも異形。
そう、それは正に……"化物"だった。
ここから私の戦いが始まるのよっ(`・д・´)




