64.It was born at that time.
正直終わるのが目的なので辻つまとかあまり考えてません…
そしてここぞとばかりに聖書の話をぶっ込みました(´Д` )
神を裏切った人間が二人いた。
彼らはともに愛し合い、神と共にエデンの園で平和な暮らしをしていた。不満も恐怖もない、とても幸せな日々が続いていた。
彼らは神に造られ、神と会話し、神を自分のように愛していた。裏切りなんて考えたこともなかった。
しかし、事は起きた。その発端は一匹の蛇だった。
蛇は二人を唆し、禁断とされていた果実に口をつけさせた。
これが神への裏切りとなった。
神は二人と一匹をその罪と共にエデンの園から追放し、永遠に決別することとなった。
二人は悲しみ、それでも神を愛する事をやめず、神の言葉の通り自らの罪を受け止め、生きる事を決めた。
一方の蛇も悲しんでいた。だが、それは二人とは違った悲しみだった。
蛇は、ただただ二人に申し訳なくて毎日毎日涙を流し続けたのだ。
それは、ただの好奇心だった。禁断とされた果実を食べたらどうなるのか試してみたかっただけなのである。平和と退屈のエデンの園で唯一制限された果実。それがどんなものなのかどうしても知りたかったのである。神に愛される人間ならば何かあってもきっと許されるだろう、そう高を括って…自分では怖いから二人にさせて。
…なのに、それがこんな事になるとは思いもよらなかった。
己の恐怖心と探究心がすべてを崩壊させてしまったのだ。欲望のままに意のままに…そうやって、結局己もただの獣なのだと改めて思い知らされる。
すまない、二人とも…
毎日毎日泣き続け、枯れてしまうほど泣いて、もはや死を待つのみ…と、そんな時だった。
「みっともないな首謀者のくせして」
空から声が降ってきたのである。
「人間を見てみろ、いつまでもメソメソ泣くお前に対してあいつらはしぶとくも繁栄し、前を向いている」
そう、二人は強い。神が特別に造っただけあってとても強く、逞しい。それに対して己は…
「……ああ、そうか。お前もう喋れないんだったな。ワタシが何言おうが何も言えないんだったな」
少し悲しげな神の声がまた心に刺さって痛い。二人だけじゃない。己は神にも悲しみを与えてしまっているのだ。
「………ん?なんだ?」
蛇は頭を上げ、空に向かって出ない声で必死に訴えた。
「何を言ってるんだ、お前は…だからお前は喋れないんだって…………仕方ない……しばしの間、喋れるようにしてやる」
神がそう言うと、不意に喉のあたりに暖かさを感じ、そして己の口から言葉を発せる事に気がついた。
「…っ!神よ!!」
「なんだ…」
「我に力をくれ!」
「はっ!何を言うかと思えば無い物ねだりか。くだらない…」
「我は…二人を傷つけた…そして、貴方までも傷つけた。その罪はこの世に縛られる程度では消しきれない。それは何年経とうとも、我が死のうとも消しきれないだろう。故に、我は永遠に罪人。ならば、その運命を、道をまっすぐ歩もう。貴方の平穏をいつも奪い、退屈も虚無も全てに侵攻し、貴方から奪い去る。そのためにも我は力を欲する。どうか、この願い、聞き遂げてくれ…っ!」
蛇は今度は頭を地に付くほどに下げ、願いを述べた。それは心からの願い。いつか、己が産んでしまったこの悲しみの連鎖が終わるよう願いを込めて蛇は己に残された頭を深々と下げた。
やがて、神の笑い声がこだました。
「あはははっ!面白いなお前。だけど、お前はもう蛇としてその存在をこの地に縛られてしまっている。今のお前にはこの私にもそれ以上を与えることはできない」
蛇は落胆する。が、神は言葉を続けた。
「今のお前は…な。だが、方法は一つある」
「方法…?」
「お前が死ねばいい」
次の瞬間放たれたのは慈悲の欠片もない言葉だった。蛇はあまりの事に言葉を失う。
「そう驚くな。簡単な話だろ、お前はこの地に縛られている。だが、お前のその魂だけはお前だけのものだ。なら、その体を捨ててしまえばいいんだ。そうすればワタシがお前の望む力とともに体も提供してやるさ。特別にな」
蛇は信じられない思いだった。仮にも罪人である獣の己に慈悲を与えてくださるなど思ってもみなかったのである。しかし、神に嘘はない。それは事実。
蛇は大きく頷くと決心を固め、歩みだした。
その先は高き山の山頂。そこにある断崖絶壁の崖が目的だった。
蛇は上手く歩けぬその足でゆっくりとそこへと向かった。そして3日の時が経ち、ようやく蛇は目的の地へたどり着いた。蛇は嬉しくて嬉しくてまた涙を流し、そしてその雫とともに空へと飛び出した。
全ては償いのために。
すべてを奪ってしまった人間と神のために。
…そして、ドラゴンは生まれた。
***************
「……っ…………」
「ソラ…?大丈夫?」
突如脳裏に瞬いた記憶の映像に僕は頭を押さえた。
膨大な情報が一気に脳に詰め込まれたような感覚で頭がいたい。前にセイナやトウヤ、ミユキの記憶を見てしまった時などとは比べものにならないほどの量だ。
「これ…」
「うん、これはドラゴンの記憶だよ」
ミユキの手を借りてゆっくりと立ち上がる。どうやら僕は鏡に吸い込まれて…それで…どこかに飛ばされでもしたようで、見知らぬ場所に立っていた。
広大な土地と茂る木々、咲き誇る花々に澄み渡った空。先ほどまで辺りが暗い場所にいたので目がその明るさに慣れず、細めた。
「…なんでドラゴンの記憶なんかが……それにここは…?」
「それはいずれわかるよ。だって私たち、ここを見たことあるはずなんだから」
「は?僕は見たことなんてないけど…」
「もちろん、私もだよ」
何を言ってるのか少しわからなくなってきた。
えーと、なんだ。つまり、ドラゴンはあの聖書の話に出てくる蛇で、それが神の力によってドラゴンになった、と。
そこまでは一応わかった。うん。一応ね。
だが、一言言いたい。
だからなんだ?
「ちょっと待て。一旦整理しよう。まず、ここはどこだ?それにさっき言ってた記憶を取り戻すってどういうことだ?ドラゴンは何を知っているっていうんだ?何をしようとしているんだ?」
「その答えはこれにあるよ」
ミユキは一言そう言ってどこから取り出したのか、僕にリンゴを放ってよこした。
なんでリンゴ…?もしかして、さっきの記憶にあったエデンの園の禁断の果実ってやつか?
……まさかな。
「……ドラゴンはね…罪滅ぼしがしたいの」
「さっきの記憶の話か?」
「うん。だからね、ドラゴンはみんなにまた仲良くなってもらうために、まず神様に近づいたんだ。なんとか二人の魂だけでも受け入れてもらえるように。…だけどダメだった。だからドラゴンは提案したの。「彼らの魂を神が思い描く人間に造り直せばいい」って」
「…………」
一体ミユキはなんの話しているんだ…?記憶の続きか?
「神様はその頃にはドラゴンをことを信用してて、そのドラゴンがあまりにも強くいうものだから仕方なく受け入れてくれたの。神様は内心少し期待してたんだろうね。もしかしたら今度こそちゃんと側にいてくれて、自分の思う通りに生きてくれるんじゃないかって。だけど、そうはならなかった。……ドラゴンが造り直された二人を奪ってしまったの」
造り直された二人…その言葉が妙に引っかかる。
………まさか、な……
「そして、ドラゴンはその二人を地上に放ってしまった。神の手が及ばない地上へ。もちろん神はそれに大激怒。神はドラゴンを裏切り者って呼ぶようになって、ドラゴンは神の元を去った」
「……もうソラにはわかったよね?」
ミユキが小さく微笑む。
「この造り直された二人っていうのが誰のことを言っているのか」
「…………まさか……」
ミユキが小さく微笑む。
「まだ疑うならそれを食べてみて。きっと全部がわかるから」
僕は手の中のリンゴに目を向けた。一口分かじられた後がある。
これを食べたところで本当に全てがわかるのか…?
疑心しかない。
「………………」
だけど僕は気付けば静かにその真っ赤な実に葉を突き立てていた。
甘く芳しい香りが口いっぱいに広がる。
あれ?
なんだろう…
なんだか変な気分だ…
『まさかまたこの世界の陽を浴びる日が来ようとはね…感謝するよ蛇、そして僕…』
古びたレコードがカチリと音を立てて回りだした。
ああ、そうだ。
僕は……
超展開キタコレ…(⌒-⌒; )




