61. I notice now.
おひさっす!
逆神会たちは島の上空に来ると一人また一人と白きマントを翻し、大地へと降り立つと刃を手にゾンビたちへ斬りかかっていった。
数はわずかにゾンビたちに劣るが、それでも逆神会たちはゾンビを次々と斬り、その数を着実に減らしていった。
その光景に僕は圧倒されるばかりだった。
「…すげぇ……」
「そうだろウそうだろウ!ワタシが呼んだのだからナァ」
魔女に感謝しつつ呆然と立ち尽くしていると、突然頭上から声が聞こえてきた。
「おーい!ミユキさーん!!」
風を切り、あっという間に僕らの目の前に一人の少年が降り立つ。
「お久しぶりです!援軍に参りましたっ!」
無邪気な声で嬉しそうに笑む少年はまるで猫のようで、一瞬シロの姿がかすめる。
彼は少なくともミユキの知り合いのようだが…当のミユキはあまり快く思っていないのか、表情がわずかにけわしい…。
「…今更援軍なんて……何が狙いなの?」
冷ややかな声に少年はたじろぐ。
「ね、狙いなんてありません!純粋にミユキさんを助けたくて…」
「それが今更だって言ってるの」
「ミユキ…」
怒声、叫び、刃の交わる音が響く中、ミユキは静かに怒りを表す。少年もこれには申し訳なさそうに目を伏せた。
「確かに、今更ですね…。でも、だからこそです!それに今回はあの人がミユキさんたちを助けるように言ったんです。上の人も黙ってられませんよ」
「あの人?だれのこと?」
「バール様ですよ。元逆神会総隊長の!」
「!!?」
気のせいだろうか…今、さりげなく衝撃事実が暴露されたような…。
ミユキも驚いていることからして、相当な暴露のようだ。さすが終盤。
「丁度ミユキさんが入隊する頃に出て行ってしまったので知らなくて当然です。が、バール様はいつもミユキさんのこと気にかけてました」
「バールさんが…」
静かに微笑むとミユキは強い光をその目に宿した。
「援軍、感謝するよ」
「はいっ!」
勇ましいミユキの姿に少年は懐かしむように、それはそれは嬉しそうに笑った。
昔のミユキってこんな感じだったのか…頼り甲斐あっただろうな。
「ナンダ?嫉妬かァ?」
「違う」
魔女のからかいはともあれ、二人の表情はいつの間にか真剣そのものへと変わった。
「周りは頼んでいいよね?」
「はい!周りの奴らは僕らに任せてください。ミユキさんたちは神をお願いします!」
「おっけー!ソラ行こう!」
「え、あ、ああ!」
ぼんやりしてる暇じゃない!今は神だ!
銃を構えなおし、ミユキの背中を追う。
「私はココで休むとしヨウ。後はせいぜいガンバレ」
「ああ!ありがとう、魔女!」
僕はミユキの後に続いて戦場を駆け抜けていく。ゾンビたちが襲い来るかと思えば逆神会の者たちがそれを抑え、道を作ってくれる。
ありがたい限りだ。
「神は大樹の下にいます!」
途中、逆神会の1人がそう叫んできた。
そういえば神の居場所も知らないまま走ってたな…僕たち…
とはいえ、なぜか僕たちは自然とその大樹の方へ足を向けている。…これがミユキの勘の鋭さだ。恐ろしい。
「そういえば、セイナたちは大丈夫なのか?」
「わからない。でも神が大樹の下にいるってことは、たぶんまだ神と対峙してるのかもね」
たった2人で神と戦うなんて無謀だ。逆神会の助けがあったとしても、だ。
「…なら急がなきゃな」
「うん」
ミユキと駆けていく大地は気付けば緑が消え、代わりに赤がその地を染めていた。
これが神の望んだことか?こんなものが神の望むことなのか?
神の考えていることなんてわからない。でも、想像することはできる。神と同じ。人は神と同じで創造が得意だから。
考えよう。神の心を。
『ワタシ…唯一……友………』
ふと、脳裏に響いた声が蘇る。それは神がドラゴンに向けた言葉。
…ドラゴンが唯一の友だったということか。
でも、ならなぜその友を殺すようなことをしたんだ?
友ならば大事にするものだろう。…いや、待て。この考えじゃダメだ。普通は、なんて考えちゃダメだ。今の神は僕らの基準で考えられないほど歪んでる。
…ならばなぜ?
なぜ友を殺し、人を殺そうとするのか?
…もしかして…
神だから、と考えすぎなのかもしれない。もう一度考え直せ。
神も僕らも同じところがあってもおかしくないはずだ。…となると……
僕はなんとなく、それがわかった気がする。
昔の僕は神と同じようなことを考えていた。
「仲間なんて」
そうか…そういうことか…
「やっと見つけた!」
ミユキの声に弾かれ、顔を上げる。
白くなびく神の姿が今の僕にはどこか寂しげに見えてしまった。




