59. little by little…
少しずつですが、確実にエンディングへと向かって行きます。
殺気立つ今の神にゆっくり話すなんて、無謀どころか不可能な話だ。
しかし、だからと言って神と正面から戦っては勝てない。それはミユキたちだって承知している。
ならばとりあえず、少しずつ場を話し合いに持っていけるよう説得し、神の心を落ち着かせていくのが最良の行動だろう。
僕はできるだけ警戒心を抑え、神へと言葉を放った。
「僕は話がしたい。ただ話がしたいだけなんだ」
「話すことはない」
「僕はある」
「減らず口が…………消え失せろ!」
やはりと言うかなんと言うか、神は怒鳴ると指先を僕に向け……
「危ない!!!」
刹那、目の前が真っ白になり、横腹に鈍い痛みが起きた。
そして、気づけば僕は地に伏していた。
「ソラ、あいつは光を操る!差されたら撃たれる!」
僕の上にのるミユキが言う。どうやらミユキが助けてくれたようだ。
ミユキが見つめる方へ目を向けるとひどい惨状が広がっていた。
「……これがあの光か…」
サーモンを撃ち抜こうと飛び交った光。その威力は伊達ではなかった。
今や散り散りとなった僕らがいた場所はえぐれ、岩盤が露わとなっている。
「大丈夫かぁ!!?」
反対方向へ飛んでいたトウヤたちが声をかけてくるので手を挙げそれに答えた。
「……ミユキ…どいて」
「……どうするの?」
「僕にできることをする。だけど…それも一人じゃ無理だ。力を貸して」
「…わかった」
静かに頷くとミユキは立ち上がり、僕に手を貸してくれる。しかし、その視線は神から外されることはない。
「一瞬で楽になるのは嫌?苦しんで死にたいのか?」
冷ややかな声がこだます。
「違う!僕らは死にたくないんだ!話をするために!!」
「話、話と…人の戯言なんて聞くものか!下等のくせに……」
異常なまでの拒絶。
やはり何か恐れている?
何か…何かあるはずだ。それを知らないかぎり話すどころではないな。
…仕方がない。
「…っ?!なんのつもりだ…」
僕は捨てた。
命を流す武器を…銃を捨てた。
話をするのに武器はいらない。
恐れる神に声が届くのなら銃声はいらない。
僕のこの行動の意味を悟ったのかミユキたちも各々の武器を取り出しては地に放り捨てた。
「…なにをしている?なにを考えている?!なにがしたいんだ!!」
混乱しているのか神は怒鳴り、叫び、後ずさる。
僕は一歩前へ出る。
「さっきから言ってるだろ、話がしたいんだ」
「…………そこまでしてなにを知りたいんだ…君たちは…っ!」
「神様のこと」
「は…?ワタシ?」
神の動きが止まった。
「そう、神様がどうして僕らを恨むのか…神様が今までにどんな苦しみを背負ってきたのか……なんでもいい。とにかく知らなければなにもできない」
「なにも……できない…?」
「当たり、前だよ…ヒトは所詮ワタシには敵わない…!なにもできないセイブツなんだよっ!!」
「っ!!?」
瞬間に殺気を感じ、右に跳ぶとやはり光線を撃ちだした。
まともに話が通じない。僕に説得は無理か?
ならばやはりあの人を頼るしかないな…。
ちらりと視線を神の背後へ移す。
島の大樹の下、横たわる巨大なドラゴンの身体の元へ駆ける金色の煌めき…。
ここへ来る前、海賊船である作戦を考えていた。
それは、ドラゴンがもし命を落としていた場合の作戦であった。
ミユキから聞いた話では、本来、ドラゴンは不死の魔法をその身体に流れる血全てに宿しているため死ぬことはない。しかし、血を供給する臓器…つまり心臓を突かれると心臓がその血で修復されるまでのわずかの間だが息をひきとるのだという。
もちろんこのことは神も知っているはずだ。しかも神ならばそのわずかな死の時間を永久にするやもしれない。
だからこそこの作戦はかなりの重要性を持つ。
「まず、ドラゴンの蘇生法だが…それはいたって簡単だ。新たな血を与えればいい」
船長はそう言った。
新たな血、ドラゴンの血を新たにその身体へ流せば良いという。
しかし、ドラゴンの血なんて僕らは持っていない。船長も「そんなん手に入れる前に殺されるわ」と持っていないらしく、これではどうすることもできない。
そう思ったのだが、それは案外身近なところにあった。
「私…私の中に、ドラゴンの血はあります」
曰く、ドラゴンの血を浴びたためその血に宿る魔法が呪いとしてミユキの血にも宿ったのだと、そのせいで魔物化しかけたのだと言う。
そんなうまい話があるわけないとは思った。ああ思ったとも!でもそれ以外のあてなんてあるわけもなくミユキを信じる他道はなかった。
そして今、日頃から毒針という針の扱いに慣れているからこそセイナが任命され、そしてその船長の作戦を遂行すべく動き出した。
僕らはとにかくセイナに神の気が向かないように、そして死なないように神の相手をすればいい。
今のところは滞りもなく順調だ。
作戦通り…これなら……
「…なにをミテる?」
刹那、神の気が僕の視線の先へ向かってしまった。
「しまった」どころではない、最悪だ。
迂闊だった…長く見すぎたのだ。
「ま、待て!」
「…ほぅ…そういうことか…」
ニヤリと笑うと神の気配が僕の目の前から消えた。




