56. Darkness of the sky.
船長たちに別れを告げ、空に飛び立つとすぐにとある疑問が浮かんだ。
「なぁ…これだけある島の一体どこに神がいるんだ?」
無駄な時間の浪費はサーモンの体力にも関わってくる。巨大な身体を持っているとはいえ人を四人も乗せているのだ、長い時間飛んでいるのは流石に無理があると言えるだろう。
「たしかに、ただでさえ広い大陸だったんだ。闇雲に探すのはなるべく控えたいな」
僕の後ろに座るトウヤもセイナすらも賛同するように頷く。
答えを求めるように前のミユキに視線を向けると、少し様子がおかしくうつむいてはぶつぶつと何事かをつぶやいていた。
「大丈夫…大丈夫…」
「………ミユキ?」
「大丈夫だよ、彼が…今向かってるところだから」
「彼?」
「呼ばれてるみたいだから…私たちは彼の後に続いて……」
「ミユキ」
肩を揺さぶるとようやく顔を上げた。
「ソラ…?」
「彼って誰だ?」
「え……あ、ああ、ドラゴンのことだよ。ごめん…彼と会話してたからぼうっとしてた」
「ドラゴン?!なんで今ドラゴンの話が出るの?」
「セイナちゃんももう知ってるだろ、ミユキはドラゴンの呪いがある。たぶんその影響だろ」
「あ、そっか…そうだった」
しまったとばかりに顔をしかめるセイナにミユキは優しく微笑んだ。
「気を使わなくてもいいよ。それより、遅れないようにしなきゃ…サーモン!」
ミユキが叫ぶや否やサーモンは急停止し、まるでミユキの次の言葉を待つかのようにその場で羽ばたき続けた。
それを見てミユキは途端に表情を変えた。厳しく口元を引き締めその視線からは真剣さが伝わり、いやでも僕らに緊張が走った。
「みんな、協力して」
その一言で僕らもついにその顔から笑みをなくすこととなった。
「今からこの島々のどこかから炎が上がるから、それを見つけて。見つけたらその炎が上がった場所から目を逸らさないで。そして、そこから一つ黒い影が現れるはずだからそれを目で追って。その先に神がいるはずよ」
「「「わかった」」」
「…決して遅れてはいけない、彼はとてつもないスピードを持つから……チャンスは一度きり。全てはみんなにかかっている。ソラの目的のためにも私たちはもちろん、ソラも全力を尽くして!」
「もちろん」
「いつだって私は全力を尽くしてるわ」
「俺って目もいいから心配ナッシングだ」
皆の声、言葉に頷くとミユキは叫んだ。
「来るっ!みんな構えて!!」
即座に僕らはそれぞれの方向の眼下に目を向けた。僕もサーモンの右翼の脇から前方の地上を見つめた。
まるで枯れた大地のように島々の間を走る亀裂が海の青で浮き彫りになっていた。これを神が一人でやったのかと思うとやはり人知をはるかに超える力を持っているのだなと改めて思い知らされる。
……でも、そんな神でも…予測でしかないけどきっと………
『……で、ワタ…の……いドラ…ン。あ…たの大事……どもた…を殺……しま…前…』
ガサガサとしたノイズとともに突然頭の中に声が響いた。
「………っ!?」
みんな地上を見つめ流のに必死で気づいてないみたいのか…はたまた僕以外には聞こえていないのか誰も顔を上げていない。
『ワタシ…唯一……友………あなたは…タシが…さないとダメ…ね』
これはきっと、神の声。
だけど…なんだか、ついさっきまで聞いていた神の声とはなんだか違う。なんと言うか…なんか暗いと言うか…抑揚がない。
『早くしない…悪魔たち…ワタシが殺してしまう…よ』
殺す?なんの話だ!?
穏やかじゃない言葉に思わず動揺してしまう。聞く限りではおそらく殺す相手は悪魔…
「きた!」
そんな時、後ろで声が上がった。どうやらセイナが例の炎を見つけたらしい。
慌てて僕もセイナの見つめる方向へ視線を移した。が、炎はどこにも見られなかった。
もしやと再びセイナを見てみると、こんどはなぜか空を見つめていた。
「セイナ?」
「空だわ…」
「空?」
「あの空にドラゴンは向かったのよ!」
「サーモン!空に突っ込んで!!」
セイナの言葉にミユキはすかさず反応した。
サーモンに指示すると待っていたとばかりにサーモンは翼を羽ばたかせると風を巻き起こし、急上昇していった。
「み、ミユキ!」
「なに?」
今のうちに言っておかなければ、と僕はそんな中で気付けば口を開いた。
「さっき神の声が聞こえた。悪魔を殺すとかなんとかって…」
「…それはドラゴンを誘い出すための人質ね、悪魔はそのほとんどがドラゴンの部下だから……船長は私たちといたから助かったけど、その他の悪魔が捕まったんでしょう」
「大丈夫なのか…ドラゴン」
「大丈夫。少なくともその悪魔の一人、船長が私たちの味方をした時点でそれ(・・)も計算のうちだったから」
そうこうしているうちにサーモンが雲を突き抜け、青を走って行くといつの間にか目の前は黒に染められた。
「な、なによ…これ」
「夜…ってわけではないよな、レイトスじゃあるまいし」
とても理解が及ぶ現象ではない。
だから僕は考える前に目を凝らした。目の前のことより神だ、神はどこにいるのだ。
360度見回し、前後上下左右全てに視線を巡らせたが見当たらない。神が見当たらないどころか闇以外何もなく、帰り道もついには見えなくなっていた。
「サーモン止まって!」
「なんなんだよここ」
「わ、私にもさっぱり…」
頼りのドラゴンも見当たらないしミユキもあまりのことに混乱しているようだった。
このままでは…神に会うどころではない。
だけどこんな闇の中、頼りになるものなんてない。
どうすれば……
「アー、やっぱり困ってる困ってる。ヤーネ、これだから人間ッテ奴は駄目なのよネェ」
「!!?」
声がした。
これは神のものではない。だけど、どこかで聞いた「ねっとりとまとわりつくような不気味な声」だ。
「あらあら、やっぱり私の箒は死んだようね。貴方の主人はもういないみたいよ、残念だったわネェ」
「うるさい、そのぐらい僕だって知ってるヨ」
そしてもう一つの声も聞き覚えのあるもの。
「まぁ、やっと気づいたの?久しぶりね、餓鬼ども」
真っ黒なとんがり帽と服を身にまとい、針のように長く細い指を持つ者。
「初めまして…って気はしないだろうケド、僕的には初めましてだネ」
波打つ黒髪に猫目の見慣れた姿の者。
───僕らの目の前に「魔女」と「シロ」が現れた。
ラストに倒したはずのあいつや昔の知り合いが出てくるっていう展開、燃えますよね!!




