51. I help you.
───助けて。
だれ?
だれのこえ?
アタシにいっているの?
アタシのほうがたすけてほしいよ…
こんなのいやだよ…
「助けてよ、みんな」
そう言葉が出そうになってアタシははたと気づいた。
また、みんなに頼ってる…。
この世界に来た時は一人でなんとかしなきゃって思ってたのに…変だよなぁ。今となっては笑えてくる。
それもこれもみんなに出会っちゃったからだよなぁ。仲間の良さを知っちゃったからなぁ…。
一人になってやっと気づいた。
「ありがとう…海斗。目が覚めた」
言葉は自然と出てきた。
もう恐怖も無くなっていた。
「このままじゃダメだよね…」
これからは頼るだけでなくアタシで考えて動くんだ。
アタシが頼られるように…生き返った後に確実に海斗を救えるように、強くならなきゃ。
「海斗を忘れた時なんて1日もなかった。なのにアタシは仲間に頼って逃げてきたんだ。だから、これからは…アタシは強く生きる」
目の前の海斗をじっと見据える。
「海斗を絶対に助けに行く。だからさ、約束するから…少しの間だけ待ってて?」
海斗の手を握って言うと海斗はどこか安心したような表情になるとふわりと暖かな風となって消えてしまった。
そして、闇に亀裂が入った。
───助けて。
だれだ?
だれのこえだ?
だれでもいいか……
ぜんぶ俺がわるいんだからな…
ごめんな、俺のせいだよな。
自己否定が心を蝕む中、思い返されたのは仲間たちの顔。
いつも俺を頼って、ともに笑いあってくれた大事な大事な仲間…。
そして、ソラ、ミユキちゃん、セイナちゃんの三人の顔。
あいつらにも悪いことしたよな…俺がもっとしっかりしてりゃこんなことにはなんなかったのに……なんて今更後悔してみる。
ああ…最後に後悔を残して死ぬとか最悪のパターンだよなぁ…。まぁ、俺はもう経験済みだけどさ。せめて俺の仲間たちにはこんな思いしてほしくねぇなぁ。
……こんな思い死んでもしてほしくねぇ。
ソラ、お前にもそんな思いはしてほしくねぇよ。
「……すまねぇ、お前たち。ちょっと急用を思い出した」
せめて、せめて今回だけは…一人だけでもいい。俺が救ってやりたい。
後悔もなく清々しく生きて欲しい。
ただそれだけでいいから…
「仲間を救いに行かなきゃいけねぇ」
…あと少しだけ生き延びてもいいだろうか?
「お前らと同じ…俺の仲間だからさ。お前らへのせめての罪滅ぼしだ」
明るく笑ってやると仲間たちは呆れたように笑い、セリナは満足そうに笑い、そして…皆、霧となって消えていった。
刹那、木漏れ日が闇の中に差し込んだ。
───助けて。
「………………ソ…ラ…?」
助けを求めるこえが聞こえる。
ソラが助けを求めてる。
そうだ、ソラを助けなきゃ…でも……それよりもまずやらなければ。
まずは過去にケリをつけなければ。
私は顔を上げると真っ直ぐに私の「過去」に向き直った。
「お母さん、お父さん、ミカ、…そして私が殺してしまった皆さん……ごめんなさい。私だけ生き延びちゃって。私もなんで自分は生きているんだろうって後悔ばっかりだったから…わかります。でもね、私、今は生きてることがとても嬉しいことになったんだ。ソラに会えたこともあるけど…それより、私が生きてるからみんなが私の中で生き続けられるってことが何よりも私の生きる価値になってるの。ただの記憶でしかないけど、確かに私の中にはみんなが生きてるんだ。だから…」
私は大きく息を吸うと最後に告げた。
「もう行かなきゃ」
いつの間にか私の手には2振りのレイピアが握られていた。これで切り開けってことかな?
でも、こんな物騒なものもういらない。
私はそれらを投げ捨てると「過去」にあいた手を差し出した。
「一緒に行こう?」
過去を受け入れ、ともに歩む。
それが私に課せられた業なんだ。
刹那、みんなは淡い光となって消え去った。
そして、闇の世界は崩れ去り、私は元の白い大樹の前に戻ってきた。今度は足もちゃんと動く。
横を見ると2人もちゃんとそこに立っていた。
「みんな…大丈夫だった?」
聞くと真っ直ぐな瞳で二人とも頷いた。
気のせいかどこか雰囲気が変わっている気がした。みんなも過去を乗り越えてきたのだろう。
「そんじゃ、早速ソラを救い出すかね」
「まったく、世話のかかるやつ」
「それがソラだから」
笑いあうと力強く一歩を踏み出した。
すぐにまたあの純白の蔦が伸びてくるが、またしても手の中に現れた剣で振り払った。
ただ真っ直ぐ、ソラが閉じ込められる大樹の元へ足を進める。
私たちの心は一つ…
「ソラを助ける」
それだけだ。
大樹の元へたどり着くと、私たちは立ち止まった。
「この中か…」
トウヤのつぶやきが聞こえた。
今やソラの姿はどこにも見られないが、確かにこの中にいるはずだ。
「どうやって助け出す?」
「怒鳴り散らせば怒って出てこないかな?」
「セイナちゃん…それ無理がある」
「いや、案外それもいいかも…」
私は少し考えて声を漏らした。当然トウヤは目を見張ってくるが、ちゃんと考えた上の発言だ。
「怒鳴り散らしても聞こえねーだろ…」
「なら聞こえるようにしよう」
言うや否や私は大樹の幹に剣を突き立てた。
「お、おい!?」
「ミユキ?!」
2人の驚く声が聞こえるが、構ってられない。
ぐりぐりと無理やり剣を力任せにねじ込んでいくと木の皮がバリバリと剥がれていき、途中、奇妙な感覚があった。
弾力のある何か薄い膜があったのだ。おそらくこの中にソラがいる。
「これだ…」
「うわぁ…まじかよ……」
「さすがミユキね…」
三人で覗き込むが、中は真っ暗で何も見えない。
「で、怒鳴るのか?」
「怒鳴るっていうか…叫ぶ感じで」
「おお、なんか青春ドラマとかである感じだな!」
「ちょっと違う気がする…」
途端にトウヤはテンションが上がり始めたようでなにやら袖までまくり始めた。
「よしっ!準備OKだ!」
「うん、じゃあいこうか」
「一人ずつの方が聞こえやすいんじゃない?」
「お、さすがセイナちゃん。頭いいな」
「んー…じゃあやる気満々だしトウヤから?」
「いや、ここはやっぱミユキちゃんだろ」
「そーよそーよ、ミユキがやらなきゃ誰がやるのよ」
「え…う、うん、わかった」
なぜか私からすることになってしまった。
とりあえず私は一つ深呼吸をすると胸に手を当て、心を落ち着けた。
大丈夫、絶対ソラは救える。
叫ぶ言葉は考えずとも決めていた。
ソラは一人じゃない、それを思い出して欲しいから。
……ソラ、絶対に助けるからね。




