48. Because I want to protect...
遅れてすみません(´・_・`)
今回はミユキside
私は部屋を出るとあの声に従うのは癪だったが、そんなことを言っている状況ではないのは百も承知なので、とにかくソラの様子を見に行くことにした。
仮にも神が忌み嫌う悪魔の船なのだからもしもなんて起こらないとは思っていたけど、まさか本当にここまで来るなんて…
「………ソラに何かあったら私は…」
不安が言葉となりつぶやいた。
そして、ふと思った。
どうして私はここまでソラのことばかり考えているのだろう、と。
命の恩人だからというのもあるが、それならバールさんもいるし…それに何より今はトウヤやセイナという仲間がいる。
大切なものならたくさんある。だけど、その中でもソラはどうしても特別に考えてしまう。
……何故だろう?
疑問に思えば思うほど深みにはまっていく気がして私はただ首をかしげる。
この気持ちはよくわからないけど…でも、ソラを守らなきゃいけないことに変わりはない。
「……鈍感だな…君も」
そんな時に聞こえた声に私はうまく反応できず、思わず肩を飛び上がらせた。
声はいつの間にか目の前にあった甲板へと上がる階段の上からしたので、咄嗟に顔を上げる。
「な、なんだ…船長さんか」
「どうも、ミユキちゃん」
ニヤリといかにも悪役っぽい笑みを船長さんは浮かべる。
まったく悪役がよく似合いそうな人である。
…って、まぁそれはそうか、この人悪魔だもんね。
一応悪い人…なんだもんね。
「元気かい?」
「ええ、元気です」
「そうか」
突然「元気か」なんて訊かれてとっさに「元気です」と答えたせいか会話は途端に止んだ、
短い会話の後の沈黙。
船長さんは私の様子を伺うように、私も私で先ほどの言葉の真意が理解できず同じように船長さんの様子を伺うようにして、お互いを見つめたまま時だけが過ぎた。
このままでは拉致があかないと、一先ず急ぎの用のためソラの部屋について聞いてみる。
「…あの、ソラの部屋がどこにあるのか知ってますか?」
「残念ながら一切知らない。というか、この船の構造さえあまりよく知らない」
それは如何なことか問いただしたいが、今はそれどころではない。
ならばと私は言葉を重ねる。
「なら、部下の人にでも教えてくれるように言ってくれませんか?」
「おいおい、それより「鈍感」って馬鹿にされたのに何も思わないのか、君は?」
話をそらされる。
今は急いでると言うのに……というか馬鹿にしてたんですね、あれ。
いいから部下の人に部屋を聞いてきてと言っても船長さんは一切口を開こうとしないので、私はしびれを切らして口を開いた。
「船長さん、鈍感とは…どういう意味ですか?」
仕方なしに問うと笑みを増して実にあっけらかんとした答えが返ってくる。
「そのまんまの意味。結構わかりやすいと思うんだけどねぇ」
「??」
全くもってこの人の言っている意味がわからない。
わざわざこんなことを言うために私を引き止めたのならば、さすがの私でもキレますよ?
「あの…それはどういう…?」
怒りを鎮めつつ問う。
「答えを人に聞くなんてカンニングも甚だしい」
「え」
「考えればわかることさ、ソラをどう思ってるのか…って。答えを出すならできるだけ早いほうがいいからね、じゃ」
「あ、ちょ…ソラの部屋は……っ?!」
それだけ伝えると私の声も聞かぬまま船長さんは甲板へと戻って行ってしまった。
「…………………」
なんだったんだろう…一体…。
話すだけ話して、私の話も聞かず颯爽と去って行ってしまった。
だが…
「……ソラをどう思ってるのか…か」
なんとなく船長さんの言葉は耳に残っていた。
"ソラをどう思ってるのか"
それは…
可愛いくて小さくていつも勇気をくれる命の恩人。
強がるけど怖がりで、素直じゃないけどいつも優しくて、私がどんなに無茶なこと言ってもなんだかんだ言いながら結局付いてきてくれて……
うまく表す言葉が見つからなくて、眉をひそめる。
なんだかもっと的確な言葉があったはずなんだけど…。
「…………あ」
そして、私は気がついた。
「………好き…なんだ」
気づいた瞬間目の前が開けた気がした。
私はソラが好きなんだ。
『……鈍感だな…君も』
船長さんがああ言うのにも今なら頷けた。
鈍感にもほどがある。あんなに近くにいたのにこの気持ちにすら気がつかないなんて。
「………行かなきゃ」
それならばなおさら、私はソラを守らなければならない。
好きだから、ずっとそばにいたいから。
たとえ私のことを忘れていたとしても、それでも私はあなたが好きだから。
だから守る。
私は急いで甲板へ上がると、すぐ目の前にいた部下の人を捕まえ、ソラの部屋の場所を聞いた。
「まっすぐ行って、二番目の角を左に曲がった道の再奥の部屋です」
「ありがとう!」
答えが聞けるや否や私は駆け出す。
甲板にまだいたのかトウヤと…なぜかセイナちゃんが何か話してたみたいだけど、それにかまってる暇もない。
1秒でも惜しい。とにかく早くソラの元へ行かなきゃ!
部下の人に聞いた道を走り、目的の部屋の前にたどり着く。
途端、嫌な予感がした。
部屋に感じる気配は一つ。だけど、それはソラとは少し違った気配。
ま さ か
扉が開く。
戸口に立つソラの姿。
そのソラの瞳には生気が感じられない。
やっぱりと思う反面、愕然としていた。
「ソラ…?」
「魔物…?」
重なる声。
聞き取りずらかった…いや、聞きたくなかっただけかもしれない言葉が耳から私の体を冷やしていく。
…ソラが私を「魔物」と呼んだ…?
「ソラ…何を言って…」
「神様ぁー、魔物は邪魔なんだよね?」
空を仰いでソラが言う。
神に話しているの?
どうしてそんなことができるの?
なぜ私たちと共に逃げた相手と話しているの?
「……じゃあ、殺すの?」
「……っ?!」
ソラの言葉に息を飲む。
ソラが私を…コロス?
なんで?
パニックになりながらも脳裏にはドラゴンの言葉が反響する。
"彼奴ハ精神ヲ食イ殺ス気ノヨウダ"
「神…また……またあなたなのっ!!?」
クスクスとどこからか声がした気がして私は唇を噛みしめる。
また神は私の幸せを奪うのか…。
今度はソラまでも……!
「わかったぁー、じゃあ殺すね、神様ぁ」
間延びした声はどこかシロを彷彿とさせる。
濁った瞳が私を映し出したかと思うと、刹那、弾丸が頰をかすめた。
気づけばソラお気に入りの二丁拳銃の銃口が私に向けられていた。
…そうなんだ、ソラは本当はこんなに強いんだ。恐怖や躊躇いがあったせいでその力もうまく発揮されていなかっただけ。
…そうなんだ、そのはずだったんだ。
だけど、今は恐怖も躊躇いもない。
…ソラの心は神に喰われてしまったんだね……?
「僕は神様の言うことを守らなきゃいけないんだ。ごめんね…魔物」
銃口を私から外すことなく弾を装填しながらソラはそんな優しいことを言う。心臓がきゅっと誰かに握られたみたいに縮んでしまう。
だけど、と私の頭が否定する。
たとえ心を神に喰われてしまったとしてもやっぱり中身は私の好きなソラのもの。どんなことがあってもその芯は変わらない…。
…だからこそ
「私はね、あなたを守るために戦うよ。ごめんね…ソラ」
私だって迷いはないよ。




