40. Who are you?
過去編に入る前にワンクッション挟みまーす!
だいたい2,3話挟むことになりそうです。
やたら派手な色のピエロのようなだぼっとした服装のダビュート……いや、ダビくんはボーッとした表情のままその髪と同じ真っ黒な瞳で僕をまっすぐ見据えてくる。
…正直、なんだか観察されてるみたいでとてつもなく居心地が悪い…。
というか…こいつ誰?
「お〜い!ソラ〜!」
と、そこにやたらでかい声とともにトウヤ一行が現れ、僕は一時思考を止めた。
「トウヤ!……って…なんでセイナおぶってんだよお前…」
「いや、それが…なんか怖くて腰抜かしたみたいでさ。仕方ねぇから運んでやってんだ」
仕方ないとは言うものの、トウヤはまんざらでもなさそうだ。むしろセイナの方が顔を真っ赤にしてあたふたとしている。
なんか…親子みたいで微笑ましいぞ…。
「トウヤって…何気にセイナの事気に入ってるよな…」
「そうか?まぁ、唯一の癒しだしな」
「癒し……?」
「ああ」
癒しという言葉がどうにもセイナの人格と当てはまらないのだが……そうか、トウヤには癒しに見えるのか…。
「んで、それよりもなんでミカが倒れてんだ?それに、そいつは誰だ?」
ロウソクを持つ手をダビくんに向け、顔を照らすようにしてトウヤは声を低くした。明らかに警戒している。
しかし、当のダビくんはあっけらかんとして「ダビュートといいマス。ダビくんと呼んでクダさい」と再度自己紹介をしていた。
トウヤ相手にこんな態度とれるとは……実に肝っ玉の据わったやつだ…。
「俺が訊いてんのは名前じゃないんだが?」
「なら、ミーちゃんの味方とだけ言っておきマス」
ますますドスの利いたトウヤの質問に、今度は訳のわからない回答を返してきた。
そもそも「ミーちゃん」って誰だよ!?
しかし、そんな僕に反してトウヤは大きく目を見開いていた。
…どうやら「ミーちゃん」を知ってるようだ…。有名人なのかよその人。
「詳しいコトは今は言えませんケド…とりあえず、ミーちゃんをここから運びませんか?」
…あ、そういえばそうだった。
ダビくんの登場に気を取られてすっかり忘れていた…。すまんミカ…。
「…なら、僕が運ぶ」
償いのつもりでそう言うと、
「…えー……」
と、超微妙なダビくんの反応が返ってきた。
「な…なんだよ」
「いや…だってソーくんって、ミーちゃんより背が低いのにできるのかな…って」
「分別というものを知ろうか?」
あまりにも失礼なダビくんの一言に思わず銃口を向けてしまった。…条件反射だ。この場合仕方ない。
「…なら俺が運んでやるよ」
そこへ口を挟んできたのは…トウヤだった。
…って、いやいやいや!無理だろ。すでにセイナ背負ってるくせに何言ってんだこいつ。
「セイナちゃん。ちょっと我慢しろよ?」
「へ…?」
だが、どうやらトウヤの辞書に不可能という文字はないらしい。セイナを背負ったままミカを軽々と…俗に言うお姫様抱っこでミカを持ち上げた。……怪物かっ?!
「よし、行くか」
「ちょ…ちょっと待て!重くないのかよ?!」
僕の言葉にセイナがわずかにムッとなった気がしたが、そんなの気にしてられない。
「は?全然重くねぇよ。こんぐらい何てことねぇよ」
うわぁお…スタイリーッシュ…。
相変わらず男らしいやつだ。
「さすがトーくん。力持ちデスね」
「? …お前、なんで俺の名前知ってんだ?」
トウヤの訝しむ言葉に僕もふと疑問に思った。
そういえば僕のことも「ソーくん」と呼んでいた…。なんで会ったこともないのに名前を知っているんだ?
…が、ダビくんは「後で話しマス」とその質問に答えてくれることはなかった。
…ダビくんの話を聞くためにも仕方がなく、僕らはまずツリーハウスへと戻ることにした。
「……ソラくん…あいつは誰…?」
「は?どうしたんだよシロ」
「いいから答えて」
僕を引き止め、突然話しかけてきたシロは少し様子がおかしく、やたらダビくんのことを気にしているようだった。
とはいえ、僕もダビくんについてはまだ何もしらないわけで…答えることなんてできない。
「…あいつとはさっき知り合ったばかりで、名前以外は何も知らない。…あいつがどうかしたのか?」
素直に話してシロの様子を気にして訊いてみるが、「いや…ならいい」と難しい顔で黙り込んでしまった。
…何だったんだ?
何がしたかったのか全くわからなかったが、気にする必要はないように思えて、僕はシロを置いてさっさと歩き出した。
「……あいつ…ミカと同じ匂いがする…」
…シロの目の色が変わっていたことは誰も知らない。
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「…で、お前は誰だ?」
まるで猿のようにスルスルと木の枝を跳び移ってあっという間にツリーハウスまで登りきるという驚異の身体能力を見せつけた後、トウヤは全員が店の中に入ったのを確認してダビくんに再度問うた。
問いながら何事もなかったようにセイナとミカをソファの上に降ろすその姿は僕からしても実にカッコ良かった…。くそ…このイケメンめ!
「え、いや…ダカラ自分はミーちゃんの味方だと…」
「つまりミカの知り合いだと認識していいのか?」
確認で訊くとダビくんはゆっくりと首を振った。
「…少し違いマス。自分はミーちゃんに会ったのはコレが初めてデス」
「は?!初めて?」
「はい」
訳がわからない。
ミカの味方だと言うくせに会ったこともなかったなんて…頭がおかしいとしか思えない。
僕だけでなく、トウヤもセイナもシロも眉をひそめ、イマイチ分かりきれていないようだった。
…それに、まだわかっていないことはある。
「それじゃあ、僕らの名前を知っていたのはなんでだ?」
「それはミーちゃんを通じて知りました」
ますます訳がわからない…。
会ったこともないくせにミカを通じて僕らを知ったとか……可能性があるとしたら僕らがよほど有名なせいで知られているというものだが…キッカケとかも思い当たらないし、普通に考えてありえない。
なら………どういうことだ?
「いい加減、ハッキリ答えろ。お前は誰だ?…いや、何だ?」
しびれを切らしたトウヤが訊く。
すると、ダビくんはまだ意識を取り戻さないミカをちらりと見ると、ついに観念したように答えた。
…が、その答えは驚くべきものだった。
「…自分は、人の心から生まれた負の塊……つまり…悪魔デス…」
──刹那、僕は再びこいつに銃口を突きつけていた。
今度は怒りからではない。単純に殺さなければと思ったのだ。
……悪魔ハ敵ダ…
誰に言われるでもなく、僕は瞬間的にそう思った。なぜかはわからない。理由はない。
「……悪魔ってことは魔物ってことだろ?なら殺さなきゃ…」
「おい、ソラッ!待て!」
腕を掴まれ、制止される。
…魔物を倒すだけなのに、なぜ止めるのだろう?
「悪魔ってのは基本的に無害な奴らだ。殺す必要はない!むしろ一体を殺すと別の悪魔が襲ってきてきりがなくなる」
「……………」
トウヤの話を聞けば、確かに僕らには悪魔を殺してもなんのメリットもない。
ならなぜ…僕は………なぜ悪魔を殺そうとおもったのだろう…。
「…やっぱり……モウ始まってるンですね…」
僕を見つめひっそりとつぶやくダビくんの声を聞き逃さなかった。
「どういうことだ?」
意味深げな言葉に引っかかるものを感じた。
始まっている?いったい何が?
…だが、その答えは聞くことは叶わなかった。なぜなら…
「……あァ…やって、しマイました…ネ…」
瞬きの一瞬の間に、ダビくんは「何か」に肩を貫かれ、おびただしい血液を散らせていた。わずかな焦げ臭いにおいとともに血液の鉄のにおいが鼻をつく…。
ダビくんは平然とした表情をしているが、普通なら痛みに叫ぶところだ。それくらい傷はひどい。
「お…い……なんだ、これ………」
赤い紅い朱い緋い…その色に僕の目は引きつけられる。
ソレハ死ノ象徴……
浮かぶ情景……
「あ…うぁ……かぁさ…んが…ぁ……っ」
「……ソラ?」
「トウヤ!ソラをダビくんから離してっ!」
トウヤの戸惑う声…セイナの必死な声……。
「クスクス……」
…誰かの笑い声……。
全てが赤く暗く染まり出す。
手にアカイモノがついている…。
鉄の匂い。ああ…
血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ。
「かぁさん…ぁ……なんで……血が、血が…止まらなくて………っ」
記憶が蓋を開いたように頭の中で再生され………母が血に塗れて死んでいる姿が────
「ソラ…大丈夫だよ」
その声に僕の意識が引き戻される。
気がつくと、先ほどまでソファに寝ていたミカが目の前にいた。そして、気を使ってくれたのか、ダビくんが隠れるような位置にミカは立ってくれていた。
「ミカ………」
「大丈夫」
どこか懐かしさを感じるような優しい微笑みを浮かべるが、その瞳は僕ではなく、その背後を映していた。
……どうしたんだ?
僕も目線を追うように振り返る。
「なんで……っ…?」
顔から血の気が引き、口をパクパクと無意味に動かす者が1人…そこに立っていた。
「シロ……」
ミカは小さく唸るように彼の名を呼んだ。
……そこは、ちょうどダビくんの肩を貫いたものが飛んできた方向だった。
ダビくんは悪魔でした。
ソラくんも記憶を少し取り戻し、だんだんと壊れていっています。
ミカことミユキちゃんは安定のいい子ですw




