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GAME after DEATH  作者: 硴月 楸
死して生を知る
34/73

33. Shop in the fresh green.

賑やかな港から島の奥へと進み、木々が生い茂る中心部へとやって来た。

ジャングルのようにうっそうと生い茂った草花や、高くそびえる木々からさす木漏れ日が暖かさを感じさせる。

トウヤの店がここら辺にある…とのことらしいが、それらしきものどころか建物一つ見えてこない。

港から結構歩いたはずなのだが…

「…まだ着かないの?」

しびれを切らしたのか、セイナが僕が言うか言うまいか悩んでいたことをついに口にした。

「ん?ああ…心配すんな、もうすぐだ」

「もうすぐって…建物なんて見えないわよ?」

「大丈夫、大丈夫」

「なにが?!」

トウヤののんびりとした返答にセイナを含め全員が嘆息する。

……果たして、僕らはいつになったらトウヤの支店とやらに着けるのやら…


…と、不意にトウヤが立ち止まり、後ろに続いていた僕らも慌ただしく立ち止まった。

「よし!ここだ!」

「…は?」

「ここって…お前……」

耳を疑った。

まだ建物も見えない森のど真ん中にいるというのに……着いた?

頭おかしいんじゃないか?と本気で思った。


しかし、その考えはすぐに覆された。


「皆、上見て」

ミカの声を合図に皆、弾かれたように一斉に頭上を見上げた…。そして、ようやく意味を察した。

「こ…これ……」

「マジかよ…」


そこには、確かに店があった。

ただ地上にはなく、見上げる先の木々の上…つまり、ツリーハウスとしてそこにあった。

こればかりは僕も予想外で、驚きを隠せなかった。

「す…すげぇ…」

「だろ?この島は地盤がちょっと柔らかくて建物建てんのにはむいてねぇんだ。だから、こんな風にツリーハウスで店を建てるのが普通なんだぜ」

「他にもこんなのがあるの?」

「ああ、もちろん。周りを見てみな」

言われて僕は首を右に左に動かし、木々の合間に視線を向けた。

木の葉に隠れてすこし見づらいが…確かに建物らしきものが見えた。

「あー…確かにちょっと見えるかも」

「上に登ればよくわかるぜ」

そう言って、トウヤが目の前の木の幹を一度軽く叩くと、その瞬間、ツリーハウスからハシゴが伸びてきた。

このハシゴから上へ登るようだ。

「え…これで登るの?」

あからさまにいやそうな顔をしながらセイナが問うた。トウヤは満面の笑みだけを返し、返事はしなかった。

「文句言うなら帰れ」とでも言われているような気分になり、結局、おとなしく従うことにした。


…まるで恐怖政治だな、なんて思ってないぞ。全然。


「なんか…トウヤって怖ぇー……」

「同意」

「アタシも思う…」

「なんか言ったか?」

「「「いえ、なにも」」」

トウヤに続くようにして僕らはハシゴをゆっくりと登って行った…。



…仮にも情報屋の支店であるツリーハウスの中は、思ったよりも乱雑していた。

大量の本はあちこちで積み重なり、部屋のあちこちには蜘蛛の巣、本棚やカウンターなどの家具の上や床の上に厚く積もるホコリ……。


「ここは…廃墟かなんか?」

正直にセイナは感想を述べた。…あのトウヤを前に、勇気あるなぁ…と僕は感心する。

「いや、ちゃんと俺たちの店」

「いや…それにしたって……」

「まぁ、しばらく使ってなかったから大体予想はついてたけどな!ハハハッ!」

「………はぁ…」

目を疑うようにして何度も瞬きを繰り返しながらセイナはかすれ気味のため息をついていた。

……それほどに酷いのだ…ここは……。

「まあ、これを見てわかっただろうけど…まずはここの片付けを手伝ってもらいまーす」

まるで添乗員のような口調で死刑宣告とも取れることばをトウヤに口にした。

真夏の日差しが照りつける中で労働とか……マジで死ぬって…。せめて僕だけはお助けを…!

そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、

「ついでに、拒否権はない」

と、端的に告げ、トドメを刺してきやがった…。ご親切に説明どうも。おかげさまで逃げ場はもうないということがよくわかりました。


「いいな?皆?」

念を押すようにトウヤのが言う。

「…ワタシは構わない、だけど…ワタシとソラ以外はもういない…」

「は?」

ふと気づくと、横にいたはずのセイナとシロの姿がいつの間にやら消えていた。

あいつら…僕を置いて逃げ出しやがったな…!

「あいつら…っ」

「……………」

トウヤは怒ることも呆れることもせず、のんびりと店を出て、ハシゴの下に目を向けた。僕もついて行って下を覗くと、そこにはハシゴを降りるセイナとその肩に乗るシロの二人の姿がまだあった。

「お前ら!」

「げっ!ソラ……に、トウヤ…」

セイナは顔をしかめると、一気にハシゴを飛び降り、全力で森の中を駆け出した。本気で逃げるつもりのようだ。


しかし、相手はトウヤですよー…?さすがにもうそろそ、あんたら死にますよー…?


「逃がすかよ」


いつもより低いトーンの声が聞こえ、内心ビクビクしながらトウヤの方へ視線を移す…が、そこにはもう誰もいなかった。

「あ…あれ?」

キョロキョロと辺りを見回すが、どこにも見当たらなかった。不思議に思い、首を傾げていると、背後から声がした。

「トウヤは降りていった…あの人、足だけは速いから」

足が速いとか、そんな次元とっくに超えてる気がするけど…!?

と、つっこむ前に森の方からセイナの悲鳴が上がったので、僕はその言葉を胸にしまい、

「へー、スゴイヤ…」

と、相槌を打つに収めた。

トウヤ…マジで怖い……



「よし、じゃあまずは着替えるか」

セイナたちを連れ戻すと、トウヤはやる気に満ちた表情で語り出した。

「着替え?なんで?」

「お前ら、砂漠とかで汗かいてるだろうし、これからも相当汗を流してもらうことになるからな。一応だ」

「でも、着替えなんて持ってな…ませんよ!」

セイナの話し方にわずかに違和感がある気がしたが、まあ、それは聞かないでおこう。

すると、トウヤはこれまた満面の笑みで

「買ってこい」

「だよねぇー…じゃなくて、そうですよねぇ」

シロまで口調がちょいとばかしおかしい気が…いや、気のせいか。

「ともかく、片付けは着替えてからだ。…あ、それと、水着も買っとけよ?後で泳ぐから」


刹那、セイナたちの騒がしい歓声が上がった。

「ありがとう!トウヤ!」

「さすがトウヤぁ!」

…どうやらトウヤは、アメとムチの使い方まで上手いようだ。セイナもシロもすでに手中に収めたということか……おそるべし、トウヤ…。

「……ワタシも買わなきゃダメ…?」

ミカが恐る恐るというように訊くが「当たり前だろ」と即答だった。

ミカは、口をへの字に曲げ、黙り込んでしまった。なんとなくだが、その顔がほんのり赤く色づいている気がした。

「よし、じゃあ、ここからは女子と男子で別行動だ。シロは俺たちと来い」

隣のセイナの肩がわずかに揺れた…。ミカを毛嫌いしているセイナにとってミカと行動をともにすることはあまり喜ばしいこととは言えないのだろう。

…ま、僕には関係ないが。


簡単な店の配置の書かれた地図と資金を配りながらトウヤは眈々と予定を決めていく。

が、反論はもちろんあるわけで…

「…てなわけで、質問は?」

トウヤのこの言葉が出た瞬間、シロの手が上がった。

「なんでトウヤたちに着いて行かなきゃならないんですかぁ!?」

「お前、明らかに女じゃないだろ?」

「わからないよぉ?女かもよぉ?」

「はい、次」

相手にするのも時間の無駄だと思ったようで、シロの反論はあっさり無視された。が、まだ手は上がる。


今度はセイナだった。


「なんで、私がこいつと一緒に買い物しなくちゃならないの?」

その忌々しそうに光る視線は、全てミカに注がれていた。

…やっぱり、セイナにとってそれが不満のようだ。

トウヤは、なんと応えるのだろう…。


「セイナちゃん、そんなに自分の水着姿を俺たちに見てもらいたいのか…?そんなに君は変態だったのか……?」


なんか……期待して損した気分だった…。


てっきり真面目に説教したりとかするのかと思っていたのに…むしろドン引きしながら質問を返すとは……。これはこれで正しい対処法なのだろうが…なんか……うん。セイナがいたたまれない…。

「…は、はぁ!?あんた、バッカじゃないの?この変態!…ほら行くよ!!」

「う、うん!」

そうとう恥ずかしかったのか、セイナは怒涛の勢いで罵声を浴びせ、さっさと去っていってしまった。……当然の反応だな…。

「………セイナはツンデレか……」

トウヤが後に変な言葉をつぶやいたが、僕には意味がよくわからなかったので、聞き流して済ませた。


感想や質問、アドバイス、評価、誤字指摘などお待ちしております(´・_・`)

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