31. I just don't know.
「いやぁー、やっぱ海はいいよなぁ!」
「………ソウデスネ…」
「仰る通りで…」
「おいおい、ノリ悪りぃな。もっと楽しもうぜ?」
ニャー、と不安げに鳴くシロの声。
ボォーッと鳴り響く汽笛の音。
空をたゆたうカモメの鳴き声。
簡潔に今の状況を述べよう。
…僕らは今、海の上にいた。
****************
時は遡り、バールがトウヤと入れ違うようにレイトスへ帰って行った時のこと…
「よし!じゃあ、さっそく準備すっか!」
「…は?準備?」
唐突なトウヤの言葉にわずかに一瞬行動が遅れる。しかし、その一瞬が運命を分けることとなった…。
たったの一瞬で、トウヤは部屋を飛び出し、二階への階段を駆け上がっていた。
「……!?」
「え…今……えっ!?」
瞬間的すぎる出来事に僕らは思考停止。ついて行くとか追いかけるという選択肢はもとから無かった…。
そして、またあっという間にトウヤはもどって来くると「ほれ!」とトウヤは部屋に入って来るや否や「何か」を僕とセイナのそれぞれに投げてきた。それがなんなのかは全くわからなかったが、かろうじて反応して受け取り、確認してみると…それは僕のリュックだった。
「…これはどういうこと?」
恐る恐る訊いてみると、トウヤはこれ以上ないくらいに輝く笑顔で答えた。
「みんなでパラダイスに行くぞ!」
パラダイスですか。わー、スゴイデスネ。
言葉の意味は理解に苦しむが、その声には有無を言わさぬ力があった…。
───そして、今に至る。
マリターボの隣町…といってもかなりの距離があるが……から船に乗り、海の上へと繰り出していた。
海風が涼しい…。
「ねぇ、あそこ!イルカ!」
「ホントだぁ!すげぇ!」
船に乗ってからしばらくが経ち、セイナとシロは慣れてしまったのか、すっかりこの状況を楽しんでいた。
「ソラ!あんたも来なさいよ!」
甲板の手すりから体を乗り出しながら手招きをしてくるが、僕には到底楽しむ余裕がない。
…そもそも僕らはどこへ向かっているのかわからないのだ。不安に思わない方がおかしいだろう。
僕とトウヤ、ミカは甲板の日陰にある椅子にそろって座っているが、間に流れる空気は少し重い…
「…おい、トウヤ。結局、僕たちは今どこに向かってるんだ?」
「いや、だからパラダイスだって」
「……ふざけてるのか?」
「俺は至って真面目なんだけどな…」
トウヤに訊いてもいつもこの調子だ。
……完全にふざけてるとしか思えない…。
が…
「ソラ、トウヤは本当の事を言ってる」
「は?お前までなに言ってんだ」
ミカまでもがおかしなことを言い出した。
「…パラダイス・ガーデン。この先にそういう島がある」
「パラダイス・ガーデン?なんだよそれ」
「別名、安息の地。魔物も寄り付かず、唯一安全とされる島」
「さっすがミカくん、物知りだな」
「…………」
相変わらずトウヤは、ミカに対してだけはやたらうざい話し方をする。
「でも、なんでそんな所に行くんだ?まさか、そのパラダイスでのんびりしよう!…とかじゃあるまいし……」
「え?その通りだけど?」
…こいつの考えが全く読めない。
「あんた、何言ってんのよ!」
話を聞いてたのか、セイナがとんでもないというように大股でやって来た。
「あたしたちは急がなきゃいけないのよ!」
「何を急ぐんだ?」
「……え?」
「急ぐ理由はなんだ?」
突然のトウヤの真顔での質問にその場の空気が静けさを増す。
───急ぐ理由…。
決まってる。
生き返るため。
…でもなんで?
なんで生き返らなきゃいけないんだ?
僕には何もないのに…生き返る意味なんて何もないのに……?
なんで?
「……ミユキを見つけるためよ…!」
セイナは答えた。
「そぉそぉ!ミユキさんをまず探さなきゃぁ!」
シロも同じく…
ああそっか…セイナたちには他にも仲間がいるんだったな……
僕は気づかされてしまう。
みんなとの距離に。
失った記憶がどれほど大切なものだったのか…
ちらりと見たトウヤと視線が重なる。僕は思わず視線をそらした。
すると、トウヤは大げさに大きなため息をついた。
「あのなぁ…そうやって自分の首をしめるようなことをしてるから疲れんだよ…自分たちの顔見てみろよ、想像以上にひどいぜ」
言われて、僕らは顔を見合わせた。
たしかに…心なしかみんな表情が暗く、元気がない気がする。
「でも…でもだからって…」
「時間ならたっぷりある!なんせこの世界には時間がないんだし……それに、もしミユキくんを見つけたとして、そんな顔で再会とか…最悪だろ。もっと空気読めっての」
「うっ…」
「パラダイスに行くのはつまり、ミユキくんのためでもあるんだよ」
「……なら、仕方ないわね…」
さっきまでの勢いが嘘だったかのようにセイナとシロは納得したように頷いている。
…おい、おまえらそれでいいのかよ…。
「ソラも、ミカくんもいいな?」
「えっ!…僕は……」
「…わかった」
「!?」
意外なことに反対するだろうとふんでいたミカが賛成してしまった…。
これで四対一…という状況になってしまったわけだが……僕は断固として賛成する気なんかない!のんびりなんかするものか!!
だが、僕は今更ながら気づいてしまった。
今、僕らがすでにパラダイス・ガーデン行きの船に乗っていることに…。
───そうして、僕らは安息を求め、パラダイス・ガーデンへ向かうこととなったのだった…。
やれやれ…
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