28. In consciousness...
新章、「死して生を知る」の始まり始まりです( ´ ▽ ` )
──暗い
上も下も左も右もわからない闇の底みたいなところに僕はいた。
「ここは?」
呟き声も喉の奥で響くだけ。
なにも見えない闇に、僕はなんだか「自分」という存在がいないのではないか、という感覚に陥ってしまう…。
とりあえず、不安を消すため手を動かしてみる。目には見えないが、確かに動いている。…一応、存在はあるようだ。
ほっと安堵するとともに僕はふと思い出した。
──「これ」は前にも経験したことがある。
確か、神が僕をあの世界に引き込む時に。
だが、今回はその神の声がない。
ということは、ここは似ている別の場所か…?
癖になった「考えること」を続け、悩んでいると、目の前に白く小さな光が現れた。
「なんだ…あれ」
僕は思考をやめ、引き寄せられるように光の元へ近づいた。
小さいのにとても温かい…何処か懐かしい光だった。不思議とこの光を見ていると安心する……
…不意に、僕は思い出した。
「そういえば、ミユキは?」
そうだ…!僕はたしか…路地でミユキに出会って……それで…
ふっと、光が突然消えた。
『また忘れたんだ…』
「…!?」
突然声がして、僕は飛び上がる。
…一体どこから?
辺りを見回すと、すぐ僕の真上にそれはいた。
『久しぶり…僕』
僕だ。幼い姿だが顔も、声も、全てが僕だ。
僕は信じられず、瞬きを繰り返す。
『そんなに驚かなくていいよ、僕。単に僕は、現世での「記憶」ってだけ。存在はしていない』
「え…でも、ここにいるじゃないか」
『そりゃあ、ここは僕の精神の中だからね』
「精神?」
『うん』
正直、わけがわからないし、信じ難い。でもなぜか僕の中ではその答えがストンと胸に落ちた。
だが、疑問はつきない。
「もし、仮にもここが精神の中だとしても…なんで僕はここにいるんだ?」
さっきまで僕は路地にいた。
そこでミユキの…
『思い出さない方がいいよ』
僕の声がかかり、またしても思考が途切れる。
「なんで?」
『そうしないと「僕」が壊れちゃう』
「壊れる?どうして?」
幼い僕は、僕の質問にしばらく間をあけ、口を開いた。
『……さっきの質問、なんでここにいるか、だったよね?』
唐突に話が変わった。
何事かと僕は眉をひそめる。
「僕の記憶」は瞳に悲哀の色を浮かべながら告げた。
『あのね、君も僕が忘れてしまった「記憶」なんだ』
記憶が僕の額に触れる。
すると、途端に僕の頭の中で、僕の長いようで短い物語がパラパラとページをめくっていった。
………思い…出した……
****************
瞼を開く。
そこには見知らぬ天井と香り…。
僕は一体…どうしたのだろう……?
意識もぼんやりとして定まらない。
「………こ…は……?」
声がかすれる…。長い間眠っていたかのような奇妙な感覚だ。
と、その時、
「ソラッ!?」
突然、視界に泣きそうなくらい顔を歪めた金髪の少女が現れた。
…だが、僕はわからなかった。この少女のことが…なにもかも…
……この人…誰?
戸惑う僕に気づくことなく、少女は泣きそうだった顔を引き締め、涙を堪えながら皮肉たっぷりに言う。
まるでそれが当然というように…。
「……ようやくお目覚め?」
僕はなんと答えればいいのかわからなかった。
見知らぬ人に突然そんなことを…しかもタメ口で言われるなんて…思いもしなかった。
彼女は僕の知り合い…?いや、でも見たことない顔だし…
僕は逡巡した挙句、とりあえず失礼を承知で名前を聞いてから判断することにした。もしかしたらしばらく会ってないだけの知り合いかもしれないし……
僕は未だにかすれた声で問うた。
「………あんた…誰?」
返ってきたのは…
「え」
少女の絶望する顔。
僕は自分が言葉足らずだったのに気づき、慌てて言葉を重ねる。
「いや、違うんです!ちょっと顔が思い出せないだけで…名前聞いたら思い出すかもって思って…!」
「……………」
少女は…なにも言わなくなってしまった。
…やっぱり失礼だっただろうか……?
僕は無言に耐えきれず、後悔の波に襲われる。
謝るべきだろうか…?でも、やっぱり思い出せないし…
今更ながらなんとか思い出さないかと、記憶の中を探ってみる。
……が、
ふと、僕は動きを…考えをやめた。
そういえば、僕って…誰だっけ?
……僕は、その時やっと自分が記憶喪失なのだと気づいた。
──それは、静かな始まりだった。
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