21. Way to fight.
「………ねぇ…本当ぉにやるのぉ…?」
マリターボから北東へ少し進んだ所にある「愚者の神殿」と呼ばれる古い神殿。そこへ向けて歩く中、シロはもう何度目になるのかお決まりの質問を呟いた。
「ああ、それしか方法はないからな」
僕はこれまたお決まりとなったセリフを返す。
「すべては「化け猫」であるお前にかかってるんだからな?」
シロに頼らなければならない時が来るとは思ってもみなかったが、今の状況じゃそんなことも言ってられない。
なにせ、バジリスクにとってシロこそが脅威になるかもしれないのだから…!
……詳細を語ろう。
先ほどバールに見せてもらったノートにはとてつもないくらい重要な情報が記されていた。
『最近、町の鶏…特に雄鶏が突如消えるという事件が起こり始めた。バジリスクのこともあり、これからは町は騒がしくなりそうだ……』
『明らかにおかしい…。雄鶏は消えていくが、雌鶏は一匹も消える様子がない…。意図的な行為だとすると、これは一体誰が、何を考えてこんなことを?…やはり、少し調べてみたほうがよさそうだ。…しばらくは店に帰れないな……』
『…偶然、私は見てしまった。……バジリスクだった。最近雄鶏が消失していたのはすべてバジリスクの仕業だったのだ。理由はいたってシンプル。…バジリスクはどうやら「雄鶏の鳴き声」が苦手のようだ。私がたまたまその現場を見たとき、バジリスクは鳴き声を聞いては、のたうちまわって苦しんでいた。私のこの目で確かに見たのだから間違いない。早く誰かに伝えないと……!』
以上がノートの内容の一部だ。
…これらを…特に最後の文を読めば分かるだろう。
──バジリスクの弱点は、「雄鶏の鳴き声」のようなのだ。
しかもかなり有力。少なくとも試してみる価値はあるだろう。
…普通ならここで「ならさっさとやれよ」と言いたくなるところだが、まあ抑えて。ここからが本題なんだ。
聞いて驚け!なんと、この町にはもう雄鶏が一匹も存在しないのだ!
もともと砂漠の町という過酷な環境のマリターボは、周りの発展した町々から食物を買うことで町の人々の生活が成り立っていた。しかし、現在はその町の人々が石化。生活どころではなく、食物を他の町から買うこともなくなった。故に鶏の輸入も途絶え、加えてバジリスクによる雄鶏消失……。
つまり、この町において雄鶏は事実上「絶滅」しているということだ。
「…この町ではとても実行できないようなものなんだよ」
バールの言葉の真意がここでようやく分かる。
バジリスクはそもそもそのステータスが高すぎて、もはやチートレベルでラスボス級だ…。唯一判明している弱点が実行不可能となると、もう……どうしていいやら…。
「不可能」という言葉が浮かんでくるが…しかし!僕らには特別な最終兵器があるのだ!
そう!シロだ!
思い出して欲しい。シロは一応「化け猫」、見たことあるものになら何にでも化けられる魔物という設定である。
……そういう思考の末、僕は気づいたのだ。
………こいつ、使える…!?
──そして、今に至るというわけだ。
売り言葉に買い言葉でうまく誘導したものの、今はすっかり冷静になりグチグチと文句ばかり垂れている。
僕はいいかげんうざいので無視を決め込むことにしたのだが、代わりにセイナが耐えきれなくなったようで苛立ちをこめながら怒鳴りだした。
「だいたい、アンタも了承したじゃない!「ミユキを助けるならぁ」…って!」
「だってぇ、まさかこんな重大な役目だとは思わなかったんだよぅ!」
「男に二言は無しっ!!」
「ええぇぇっ……」
「まあまあセイナくん…」
バールが仲介に入り、なんとか喧嘩にまではならなかった。やっぱり大人がいると違うな…。仕事が減って助かる。
「……ともかく!一度決めたんだから、ちゃんとやり通しなよ!?」
「……はぁーい…」
ついにセイナの勢いに負けたようで、シロはやれやれと肩を落とした。
まさかこんなところでセイナの頑固さが役に立つとは思いもしなかった…というか男気ありすぎだろ、セイナ…
そうこうしているうちに、目の前にうっすらと影が見えてきた。…あたり一面が砂漠という何もない平地なのですぐにそこが目的地の神殿だとわかった。
「あそこか…」
「ううぅっ…」
僕の呟きに約一名うめき声を上げたが、気にしない……。
「準備はいいな?」
最後に念のため確認をとると、シロを含めその場にいた全員が緊張の面もちで頷いた。
…みんな、危険を承知でついてきてくれてる…
神を見つけ、生き返れるかもしれないという希望と仲間を助けなければという使命感。
それぞれにいろんな思いが胸にうずまく中、僕らは神殿へ足を踏み出した。
……ミユキ、無事でいてくれ…!
──心は未だに依存している、と知りながらも…
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