15. Course is decided.
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「アンタ、バカじゃないの!?少しは考えて行動しなよ!!」
塔を出るとさっそくセイナに怒鳴られた。理由は一応分かってるつもりなので、僕はただ黙って聞いてるしかなかった。
「この世界の奴らはみんな自分が生き返ることに必死なのよ?そんな中であんな重要な情報を言うとか……しかも大声で!」
「…す…すまん……」
「ていうか、そもそももっと早くに言いなよ!そうすればもっと効率的に情報も集められたのよ!?」
「だから、すまん……」
「それにアンタは……!」
「……あー、もう!うるさい!!すいませんって言ってるだろ!?」
あまりにもしつこいもので、僕も思わず怒鳴り返してしまう。
セイナの性格上、この行為は見過ごせないものだと予想はついていたが、我慢ならなかった。
もちろんのことセイナはますます顔を怒らせ、怒鳴ってくる。
「アンタがバカだからわざわざ注意してあげてるんでしょうが!いい加減にしてよね!!」
まわりの通行人たちもさすがにこちらの様子に騒然とし始めた。
しかし僕らは止まらず、互いに怒鳴り続けた。
そんなとき…
「あぁっ!やっぱり、ソラとセイナちゃん!」
場の空気には似合わない明るい声が突如割り込んできた。見ずともその正体はわかる。
「………ミユキか……」
「二人とも何やってるの?しりとり?」
「………違うわよ」
興が削がれたとばかりにセイナはそっぽむく。
僕もようやくそこで冷静になれたようで、まわりがやけに僕たちの方を見ているのに気づいた。
「……とりあえず今はここから動こう。話は後」
「うわぁ、よくある主人公の台詞出たぁ~」
バカにしてるの丸わかりでいらついたが、さすがに僕もそこまで子供じゃないので無視してその場を離れた。
「……というわけで、喧嘩してたってわけ」
「なるほどー!どうりで野次馬が多かったわけだね」
近くにあった小さなカフェに入ってミユキに簡単な説明をした。ミユキは一応、少しは理解はしてくれたようだった。
「じゃあ、とにかくその手に入れたチップの中を見ればいいんだよね?」
「あ…ああ、そうだ」
喧嘩のことには一切触れず、ミユキは「なるほど……」と納得する。さすがに気を使ってくれたようだ。
「でも、その肝心なチップの中をどうやって見るんだ?」
「それなら問題ないわ」
ジュースを飲む手を止めるが、視線は向けずにセイナは言う。
「このチップはボタン一つで開くの。やってみて」
「お、おう……」
セイナからチップを渡され、僕は戸惑いながらも小さなボタンを見つけ、爪を使って押してみた。
すると、チップはあっという間に広がり、紙の束になって僕の手に収まった。
「な……!なんだよこれ!」
「すっごーい!面白い!」
僕とミユキの反応を見るとセイナは少し得意げに笑う。
「これは「圧縮チップ」。大事な情報のつまった紙やディスクなどを誰にも見られない様に保存するため開発されたものなのよ」
「すごい!物知りなんだね、セイナちゃん!」
「そ、そう?……ていうか、アンタたちが知らなすぎなだけでしょ…?」
ミユキのおかげで気をよくしたのかようやくセイナはいつもの笑顔を見せた。
こういう時にミユキは役に立つから助かる。
「あ、これ…」
情報の書いた紙に軽く目を通していると、「神は砂漠に…?」という題の載った紙を見つけた。僕の声に反応して二人とも側に寄ってきたので、見やすいように机に広げてやった。
『「神は砂漠に…?」
ミゲン大陸北部、マリターボという小さな町付近に古い神殿が存在する。そこは長い間人の出入りがなかったこともあり、すでに中に入ることは非常に困難となっている。理由は多々あるが、主な理由としては巨大にして強力な魔物が住み着いているからである。銃器や刃物では傷一つつけられず、今までにも何十人もの人が犠牲となったその魔物は、まるで神殿を守るようにして戦うというのである。
これは推測でしかないが、おそらくその神殿には神がいるのであろう。だからこそその魔物は神殿を守るようにして戦うのだ。
魔物は未だ討伐されるどころか、詳しい情報すら不明である。
もし戦うのであればそれ相応の準備を整えた方がよい。
最近は神殿を離れ、マリターボの人間を喰らいに来ることが多くなっており、早急な討伐が必要とされている。』
僕らは読み終えるとゆっくりと息をはいた。
「なんか……すごいわね…」
そう言ったセイナの声はわずかに震えている。
「攻撃がまるで効かない、ってことかぁ……確かにすごいかも」
ミユキは弱ったように肩を落とす。
「…………」
僕は言葉すら出てこなかった。
もしもこれに書いてあるとおり、神が神殿にいるのなら僕らはいずれそこを守る魔物を倒さなければならない。銃も剣も効かない魔物と戦わなければならないのだ。
そう考えると、気が重くて仕方がない……。
「大丈夫!なんとかなるよ!」
あまりにも明るく前向きな言葉に僕は言葉を失い、唖然とした。セイナも同様に目を見開いて驚いているようだった。
「なんでそんなこと言えるのよ……少しは怖いとか思わないの?」
恐る恐るといったようにセイナが訊くと、ミユキは朗らかに笑う。
「確かに怖いとは思うよ。でもなんか……みんなでなら出来る気がするの」
「そんな…根拠もないこと……」
「大丈夫!!もしもの時は私が守るし、心配無用だよ!」
自信にあふれた声。
……僕は知っている、こういう時のミユキは頼りになる、と。
そんなミユキがいたから僕もだんだんと変わり始めている。
今回の旅だって何気ない一言から始まったのに、いつの間にやらこんな大きな町にまで来ている。
それに、そもそもこの旅は神を見つけるための旅。ならばこのぐらいは覚悟の上だ。
「でも…アタシ……」
まだ覚悟がつききれてないのか、セイナはグダグダと言葉を並べる。しかし今のミユキは止められるはずもなく…
「よし!じゃあ準備を始めよう!薬とか武器とか……そろえるものはいっぱいあるよっ!」
「え、ちょっ…!」
「…セイナ、あきらめろ……」
「…………まあ…生き返れるのなら……仕方ない…か……」
セイナの肩に手を置き言うと、セイナは不服そうにぶつぶつと何かを呟くがなんとか首を縦に振った。聞き分けがよくて助かった。
「そうと決まれば、別れて準備するわよ!ミユキはそいつを連れて必要と思うものを片っ端から集めてちょうだい」
「セイナはどうするんだ?」
「アタシは砂漠を渡るための方法探しとシロのための道具類を集めようかなって」
シロの方はともかく、ミユキの体も心配だしそれが得策だろう。
「そうよね!シロちゃんも今度からは一緒に旅するんだし、ちゃんと準備しなきゃね!」
ミユキはシロのことが出たとたん笑みを増し、情けない顔になった。どうせ、シロのことを思い出して「可愛いかったなぁ……」とか考えてんだろう。
「………そういえば、そのシロはどこにいるんだ?」
起きてからその姿を見ていないので、気になって訊いてみた。するとセイナは「ああ、それは…」と言いかけ、何を思ったか二ヤリといたずらに笑った。
「さーてどこでしょう?」
「…僕が知るわけないだろ」
「何言ってんの?目の前にいるじゃない」
「はぁ?…どこだよ……」
「さぁね。……あ、でもリュックの中にはいないわよ」
言い方からして自力で見つけてみろということだろう。
……上等だ。
僕に頭脳戦で勝とうなんて百年早いわ!
……確かシロは化け猫で、なんにでも化けれたはずだ。ということは、セイナの身につけている物の中にシロがいるはずだ。
加えて今日のセイナは少しだけ昨日とは違う部分がある。
……以上のことからして、シロは………
「……そのピンか」
「げっ…!…………なんでわかったのよ……」
「やっぱりな」
「むぅ……」
セイナは不満げに口をとがらせながらピンをはずすと机に置いた。
次の瞬間にはそれはもとの猫の姿のシロになり、テーブルの上に降り立った。
「にゃぁ~ん」
「シロちゃんっ!」
シロの姿を見つけた瞬間ミユキはシロに抱きついた。
「マジでどんな物にも化けられるんだな……」
「アタシも初めは驚いたわ…」
「でもやっぱり、猫ちゃんの姿が一番っ!」
すりすりとシロにほおずりしながらミユキは嬉しそうに言う。
「……だがまあ、今回は失敗だったみたいだけどな」
「え?何が?」
「何の事よ」
二人が首を傾げる中、僕たちの方へ近づく人影が……
「…………この店……ペット禁止だったよな……?」
僕の言葉もすでに遅く、僕らの目の前には店長の女性が立っていた。
「…すみませんお客様。私、実は動物が苦手でしてね。申し訳ありませんが、今すぐに出ていって下さいませんか?つーか、出てけ」
言葉ではやさしいが、店長の目は笑ってなどいなかった。
……店に入る時、「動物厳禁」と書いたプレートがぶら下がっていたのを僕は確かに覚えている……。
「「「す、すみませええぇぇん!!」」」
僕らは飛び出すようにして店を出ると早速、各々物資の調達を開始することになった…。




