10. Her sudden accident.
……足が重い…
足を踏み出す度に乾いた砂が絡みつく…。フードを脱いでは汗を拭い、またフードをかぶっては歩き続ける。
フードをかぶらなければ肌が焼けてしまうほどに日の照りつけはひどかった。
まさに灼熱地獄。
森を抜けたと思ったら今度は見渡す限り砂と空しかない砂漠地帯。
異常な環境の変化にも体が悲鳴を上げている。加えて、照りつける太陽は容赦なく僕らを照りつける。
船長もそれを予想していたのか、フード付きのマントを持たせてくれていたので幾分かはマシだった。
…正直言って砂漠なんて来たくなかった。熱いし、砂に足を取られるし、きついし……嫌なことしかない。
だが、僕らの目的地はこの砂漠の中心付近にあるため、この砂漠を避けて通るわけにはいかなかったのだ。
「セイナ……まだ…?」
「まだに決まってるでしょ!?黙って歩いて」
…セイナはさっきからやたら冷たい態度をとるようになっていたのだが、さすがに声に力がなくなってきていた。後ろのミユキもさっきから無言だし、やはり二人ともきついようだ。
休ませてやりたいがあいにく近くに休めるような場所はない。
「大丈夫か…?」
心配になって僕が聞くとミユキは心ここにあらずといった感じにうなずいた。
あの騒がしいミユキを黙らせるとは……砂漠、恐るべし……
とか思いながら再び前のセイナの背中に視線を戻す。動きに合わせるようにからっているリュックが揺れている…。
そういう僕も何かを集中して見たりしていないと今にも倒れてしまいそうだった……。
ふと、セイナのリュックがモゾモゾと奇妙に動いた気がした。
「………?」
目をこすり、あらためて見つめてみるが、さっきのように動くことはなかった。
気のせいか、と結論づけるときっぱり思考を止めた。
体力の無駄だだと思ったのだ。
僕は前後の二人に気を配りながら、それ以外には無心で歩き続けた。
「見えたっ!!!」
少ししてセイナの嬉しそうな声が聞こえた。僕はつられて前へ目を向けた。
喜ぶよりも先に驚いた。
辺り一帯何もない殺風景の中に突然現れた町一つ包み込めるくらいの巨大な半球状のドーム。周りとは同調せず、異様な存在感を持って建っているそれはとても迫力があった。
「あれが…!?」
「ひとまずの目的地。科学と技術の町、レイトスよ」
セイナはほっと息をつくように言った。
僕が旅に出て初めて訪れる町……
緊張とも歓喜ともいえる感情が広がり、体中が打ち震える。
「早く行こう!」
興奮を抑えきれず、僕は言うやいなや砂漠を駆けだした。
近くに行くとますます迫力があった。まるで巨大な壁だ。
「ちょ…ちょっと待ってよ……!」
遅れてセイナとミユキがやってくる。
「なあセイナ、入り口はどこに……」
「待ってって言ってるでしょ!!?」
突然セイナが怒鳴り、僕は思わず口をつむぐ。
セイナは怒っていた。
「あんた、少しは周りも見なさいよ!」
「は?どういうことだよ?」
セイナは答える代わりにミユキを前にするように一歩下がった。
ミユキは、顔を真っ青にして苦しそうにしていた…。立っているのもきつそうだ。
僕は町のことばかりでミユキのことなど気にもしていなかったことをようやく気づかされた。
「み、ミユキ……!」
「話は後!とりあえず今は休ませるのが先!」
「ごめん……」
ミユキの肩に手をまわしながらセイナが言う。僕はひたすら申し訳なくて謝る。
「謝る暇があるなら運ぶ手伝って!」
「あ、ご…ごめん……」
僕はただ謝るしかなかった…。
ミユキの肩をセイナと持ち、入り口も何もないドームへ向かって歩いた。歩くたびにミユキの顔色はますます悪くなっていく……。
僕は何でこんなになるまで気づいてあげられなかったんだ……!!
やり場のない怒りが膨らんでいく。
「ソラ…」
ミユキが弱々しい声で僕を呼んだ。あまりにも声が弱く、聞き逃してしまわぬように顔を近づけた。
「どうした!?」
「…これは私の不注意のせいだから……あんまり自分を責めないで…ね?」
「……!!」
こんなときにもミユキは僕のことを心配してくれている。
それなのに…僕は………
「ほら、ちゃんと前を見て!」
「お、おう!」
セイナの声でハッとなり、ミユキを運ぶ事だけに集中する。
すぐ目の前にはすでにドームの壁が迫っていた。
「おいセイナ!どうすんだよ?」
「このまま進んで」
「えっ!ちょっ!?」
僕にかまわずセイナは進み続けた。ミユキに負担をかけないためにも僕は仕方なくついていく。
壁はもう目と鼻の先。
「……っ!!」
言い表せぬ恐怖に思わず目をつむる。
ぶつかるっ───!!
が、次の瞬間に覚悟していた衝撃はなかった。
「………?」
ゆっくりと目を開けると、そこはドームの壁でも砂漠でもない町の景色があった。
高層ビルが建ち並び、道路をタイヤのない車が進み、いたる所にロボットや機械が点在していた。
まるで未来の風景がそこにあったのだ。
さすがに僕も目を疑い、何度も瞬きを繰り返す。
「……な、なんで!?」
後ろを振り返ってみるが、そこにはただの壁があるだけ。
何が起こったのかまったく理解ができない……。
さっきまで砂漠にいたのに…なんで…?
「あの膜はこの町を……って説明は後!さっきも言ったでしょ!?ほら早く!」
言われて僕は湧き出す好奇心を必死に振り払った。
もう少しじっくり見たかったが、ミユキの方が先決だ……。
僕はセイナに言われるままに町を進んでいった。
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