魅惑のオリーブオイル天ぷら
魅惑のオリーブオイル天ぷら
テーマ:輝く悪 必須要素:オリーブオイル
「いや、ダメだって」
ミキが不安そうな顔で言った。
哲也はそれを聞いて聞かずか、だまって目の前の物を見ている。
台所。
シンクの上に置かれた、四角い、手の込んだビンに入っているオリーブオイルを。
「いいじゃん、やっとみつけたんだぞ」
そう言ってオリーブオイルに手を伸ばしふたを開けようとする哲也。
「ダメだって!」
ミキはそれをすかさず止めて、またシンクの上に戻した。
天ぷらが食べたい。
そう唐突に言い出したのは哲也。
テレビ番組でちょうど天丼の特集をやっていた時だった。
あいにく哲也の母は留守だ。
自分達でてんぷらを揚げようとなったのはいいものの、材料を集めている時に気付いた。
揚げ油がない。
どうしてもてんぷらを食べたい哲也が、ミキと二人で必死で探して見つけ出したのが、このどうやら高そうなオリーブオイルだった。
「そもそも天ぷらをオリーブオイルで揚げるなんて聞いたことないんだけど」
ミキが言う。
「いや、昔や○せまみが言ってた。金持ちはオリーブオイルで揚げ物するって。きっとめっちゃおいしいんだって。やったことないけど」
「でもこれさ、お母さんが大切にとってたやつみたいじゃない?」
「……」
それを聞いて哲也は少し考え込んだが、やがて口を開いた。
「少しくらいなら使ってもバレなくね?」
「いや、思いっきりばれるよ! 天ぷらほど油つかう料理もないから――」
「じゃあ、使ったらまたビンに戻すとか。そしたらバレない」
「きたないよ!」
「じゃあ、俺は具材切るからお前揚げ担当な」
「ちょっと! なに勝手に話すすめてんの!」
「うおお! もう我慢ならん!!」
哲也はおもむろにオリーブオイルを掴むと、開封しようとする。
今日何度目の光景だろう。
ミキはすかさず羽交い絞めにしてそれを止める。
「ダメだってば!」
しかし、やはり男と女。
力で負けてしまったミキ。
ミキを振りほどいて、哲也はオリーブオイルを見つめる。
「ふふふ、これでやっとてんぷらにありつける!」
悪事を働くとき特有の不敵な笑みに顔を輝かせながら、哲也はてんぷら鍋をセッティングしオリーブオイルの開封口に手を掛けた。
しかし、力を入れて回そうとしたその時、哲也はふいに手首を掴まれた。
「――ちょっと」
背筋が凍るほどの冷たい声が、哲也の耳元に触れる。
哲也の表情は一瞬にして凍った。
緊張で硬直しそうな首をむりやり動かし、声のする方を見る。
そこには鬼の形相の母がいた。
「それ、どこから出してきたのよ……」
「え、いや……」
「それネットでやっと手に入れたも○みちのオリーブオイルだってわかってやってんの!?」
「いや、これはミキが――」
それを言うのがやっとだった哲也、次の瞬間チョークスリーパーをかけられそれどころではなくなった。
「いくらしたとおもってんのよ!!」
「す、すみませんでしうがあああああああああ!!」
苦しいなかの必死の謝罪もむなしく、哲也は小一時間怒り狂った母親に締め上げられたとかなんとか。
反省点
・母の登場シーンが唐突というか、不自然
・ラストまでの構成が行き当たりばったり
・タイプミスが多すぎて時間かかった
・「不敵な笑みに顔を輝かせながら」の言い回しがなんだか変。