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 《平原と渓谷の国プラネティス》。その首都でありイベントの受付場所でもある《シールブング城》の城門に、二人の少女がいた。

 一人は《シーフ》の少女、ミア。もう一人は彼女を複雑な心境で見守る《ブレイカー)の少女、サクラ。

 ミアは道の脇に続く塀の上に腰掛け、人の流れにぼーっと目を向けていた。サクラはその塀に背中を預けて立ち尽くしている。

 イベントの当日。先に声をかけたのはサクラの方だった。あんなに楽しみにしていたのだから参加しよう。そう言ってミアを連れ、シールブング城までやってきたのである。

 「始まるまでここで待ってるよ」。ミアはシールブング城に着くなりそう言って塀の上に上り、それきり言葉を交わしていない。そもそもここ数日、サクラはミアとあまり会話していなかった。ミアがログインしてくる回数自体目に見えて減っていたのだ。

 ナギサと別れて以来口数は明らかに減っている。ミアがナギサのことをどう思っているのか、その真意はサクラにも掴みかねていた。

 ナギサとはあれから一切やり取りをしていない。これはミアからの頼みだった。まず彼女自身がナギサからのメッセージをブロックし、サクラにも同じようにやり取りをしないように求めてきたのだった。

 そこまでしてナギサのことを避けるミアを見て、サクラの罪悪感はより一層掻き立てられた。彼をあんな風に一方的に責める権利なんて自分にはなかったはずなのだと。

 今や、サクラがナギサのことを怒り、遠ざけようとした以上に、ミアの方がナギサを遠ざけている。ひょっとしたらあの時サクラが何もしなくても、結局こうなっていたかもしれない。そんなミアの態度のせいか、今ではナギサのことを素直に恨むこともできないでいた。

 もうすぐイベントが始まってしまう。……ナギサの姿も見えない。

(……このままじゃだめ。そんなのわかってるけど、でも……私に何ができるの……)

 サクラは後悔していた。自分があの日投げかけた言葉をナギサがどう捉えているのか、今やその真実もわからない。何もわからなくて、全ては謎のまま。二週間前から三人の時間は止まっている。

 その時計の針を最初に止めたのは、他でもないミアだ。

 サクラはミアを見上げた。彼女は気づく様子もなく、座ったままぼんやりと頬杖をついている。

「……ナギサ君、来ないわね」

 声をかけると、ミアはこちらを見ないまま答えた。

「サクラ、ナギサのこと待ってるの?」

「え……?」

 返ってきたのは予想だにしない言葉だった。それはまるで、彼のことなどどうでも良いと思っているかのような、今の今まですっかり忘れていたとでも言わんばかりの言葉。

「だって、ミア……」

「いいよ、もうナギサのことは」

 ミアは音もなく塀を飛び降り、サクラを見上げてきた。

「わたしには、サクラだけいればいいもん」

「ミア……」

 その言葉は嬉しく思えるはずなのに、どこか物悲しい。ミアの笑顔がひどく空虚なものに映る。琥珀色の瞳は空っぽに見えた。

 何が、自分にそんな風に感じさせているのだろう。このままなら、また以前のように二人きりに戻れる。それは望んでいたことのはずなのに。これも時間が止まっているせいだろうか。

 ……そうして三人の時間が止まろうと、世界の時間はどうしようもなく流れていく。間もなく、城下町にある教会の鐘が鳴った。……時間だ。

「行こ、サクラ。始まっちゃうよ」

「……そうね」

 ミアは背を向けて先に歩き出してしまう。一歩遅れてサクラも続いた。

(……このままで……いいのかな……)

 どうすればいいかわからない。サクラは無力な自分を嘆きながら、ズルズルと城内へ向かっていった。

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