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北区の事件現場から帰宅した高野は、ソファに腰掛けテレビを点けた。
数秒のラグの後、液晶画面にはマイクを持ったリポーターの姿が映し出された。
右上のテロップには、『またも犠牲者が……。謎の少女連続失踪事件!』とあった。
「早速、ニュースで取り上げられてますね」
幽霊少女が不安そうな面持ちで言う。
「それほど異様ってことじゃないかな」
カチカチとリモコンで他局の番組を確認してみる。
ほとんどの局が少女失踪事件について報道されていた。
「失踪事件ってのは、そんなに珍しいものでもないんだ」
高野はそう言って、テレビの電源をオフにする。
「ただ、今回のそれは、ほぼ同時期に3人も失踪している」
「目撃者もいないんですよね。日中の街中にも関わらず」
少女が下唇に人差し指を当てて、神妙に言う。
どうやら、少女が頭をフル回転させている時は、このポーズになるようだ。
「二人目の失踪者の方なんて密室で、しかも監視カメラにも映っていないって……」
「そう、あり得ないんだよ。でも、あり得てしまった」
高野は静かに目を瞑り、ソファに背中を深く沈めていった。
「それはそうと、高野さん」
少女の呼びかけに、「何だい?」と、その姿勢のまま応える。
「今日のお昼ご飯、まだでしたよね?」
「そうだね」
時計を片目で確認する。午後二時を少し過ぎていた。
「そうだね、ではないですっ!」
少女は、高野の傍に、文字通り飛んできた。
「この前だって、二日間何も口に含まずに過ごしてたじゃないですか」
「何も、ってことはないよ。水くらい飲んださ、多分……」
「きちんと栄養を摂らないと、手遅れになりますよ?」
少女は心配そうに言った。
よもや、幽霊に命の心配をされるとは。
少しだけ動揺した高野は、「わかったよ」と一言、渋々ソファから腰を上げた。
「さて、何を食べに行こうか」
料理経験が皆無である高野には、自炊という選択はなかった。
革製の財布を手に取った――と同時にインターホンの電子音が鳴る。
「どなたですかね? ……はっ! もしかしたら、依頼者かも」
そんな少女の楽観的な言葉を背に、高野はドアを開ける。