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高野が再び目を覚ました時、デジタル時計はAM11:50を表示していた。
ソファからのそのそと身体を起こし、伸びをする。
ポキポキと小気味良い音が体中から鳴り響く。
「今度こそ起きましたね」
ソファの向かいにあるテレビから声がする。
17インチの液晶には、少女の顔が高野を覗き込むように映っている。
しかし、テレビの電源は入っていなかった。
「ちょっとどいてくれないか。君がそこにいると点かないんだ」
テレビのリモコンを持ちながら高野は言う。
すると、テレビの画面内からずるり、と少女が這いつくばるように出てきた。
さながらホラー映画のようだったが、高野は何食わぬ顔でリモコンの電源ボタンを押す。
「私としては、何かしらのリアクションが欲しいところなのですが、高野さん」
画面内から這い出てきた少女が浮上しながら言う。
「初対面の時、私を見てあんなにも驚いていたのに」
「そりゃそうさ。目の前に宙を浮く人がいたら誰だって驚く。僕も論外じゃない」
リモコン操作でテレビ番組の選局しながら言う。
しかし、どの番組も変わり映えのないものばかりであった。
「やはり、この時間帯はニュースばかりやっていますね」
少女が高野の背後に回ってきた。
「12時から賑やかな番組も増えるけどね、そろそろ外出しないと」
そう言って、立ち上がる高野。
そのまま洗面台まで行き、冷水で顔を洗う。
「今日はどちらに行かれるのですか?」
ソファのある部屋から少女の声が聞こえた。
仕切りのドアがないため、日常会話に難は皆無であった。
「そうだな、今日は……」
ソファのある部屋に戻った高野の視線の先にはテレビのニュース番組。
ある事件の報道をしているようで、映像がスタジオから事件現場へと移り変わる。
『こちらが事件場の北町の住宅地になります。被害者と思われる持ち物が未だ、現場に取り残されており……』
リポーターの男性がマイク片手に事件現場を報道している。
『被害者は、なおも行方不明で……」
高野はそこまで聞いて、テレビの電源を切る。
「北町の住宅地に行ってみようか」