「自分、魂込めるどころか共鳴だってできます」
ゆーれい日記なのに幽霊が全く出てこない件について作者の破矢音はノーコメントを貫いております。
しとしとしと……
それは、小雨の降る日だった。
女は生まれたばかりの子どもを連れて江戸の街を走り回っていた。
走って、走って、走って、………………………………そして肩を掴まれた。
「ヒッ……!」
女は声を上げ、ゆっくりと後ろを見る。
しかし、そこには誰もいなくて、、、
「気の……所為……?」
そう呟いて前に向き直ると
【子ども……】
顔。
落窪んだ女の顔が、そこにはあった。
「っっ!?」
【頂戴? その子ども、私に、頂戴?】
顔が近づいて来る。
「ぃ、いや!!」
叫んで、女は逃げようとした。
しかし、足は動かない。
「な、なんで……!」
【ちょう……だい?】
いつの間にか、女の足には黒い髪の毛が絡み付いていて、
【頂戴? いいでしょ? ねぇ?】
「いやっ! この子、この子だけは…………!!」
【頂戴、頂戴、頂戴、頂戴、
……………………頂戴。】
「いや、いやぁあぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!!」
ぐしゃっ…………
鈍い音が響き、次の瞬間には女の姿がなく、赤い雨が降り注いだ。
「うぃーす」
『ぎゃあああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!?』
「うお!? なんだっ?」
「あ、黒ちゃん先輩きた」
放課後、部活の練習に参加するべく、俺こと燕 黒夜は体育館の扉を開けた。
すると、そこには何故か絶叫する部員とその部員に囲まれて座る後輩の鳶谷 赤菜。
「え、お前らなにやってn『おいコラ燕!! びっくりさせんじゃねーよ!!(泣』や、させたつもり無いんすけど」
「先輩やっほ~」
「おいお前、バスケ部員になにしたんだっ?」
涙目になる部員をよそに、赤菜は俺に近づいてくる。
「? なにって、雨に関することっすよ」
「雨?」
「うい」
「なんでまたそんな?」
「ん~と……。
前回までのあらすじ(キリッ」
「うお、なんか急に顔つきかわった」
しかもあらすじって何っ?
「暇を持て余した中学1年生の鳶谷赤菜は、一応先輩の黒崎一護の元にむかった」
「をい待て。俺の名前は燕黒夜だ。確かに霊は見れるし会話できっけど、死神ではないぞ」
しかも「一応先輩」っつたよな?
「……。
しかし、向かった先の体育館には彼の姿は無く、その他のただのむさ苦しい男子生徒しかいないのだった」
『ひどっ!!(泣』
「待てゴラ。誰がむさ苦しいねん」
「だれってバスケ部の先輩らっすy……いでででででっ。ちょ、鴻先輩、ほっぺた横にビローンってやらないでくださいよ!」
「いやや」
こいつ、鴻と相性よさそうだなぁ
「ちょ、黒ちゃん先輩! “赤菜は鴻と相性良さそうだなぁ”みたいな顔してないで助けて下さいよぉ」
「お 前 は エ ス パ ー か」
「ちゃいますエクソシストです(即答」
「……。鴻、離してやれば?」
「先輩命令ならしゃーないっすわ(ペシッ」
「いたっ。
うぅ、最後にほっぺたたかれた……(涙」
床にうずくまる赤菜。
…………うん。まじで痛そうだった。
数分後、
「……。
ふう。
泣いて何かいませんよ」
「分かったから。
で? 話の続きは?」
「で、えーと……
暇だったので雨に関する怪談をしたのだった」
「だいぶはしょったな」
「忘れた訳じゃないっすよ。
別に痛みで何処まで話したか忘れたわけじゃないっすから」
どんだけ痛かったんだろ……。後で鴻に注意しとこう。
俺がそう思いつつうつむいている赤菜の頭をなでであげていると、
「お。みんな集まってるな。じゃ、練習始めるぞ~」
ガラッ、と体育館の扉が開き入って来たのは我がバスケ部のぶty「ちぇいさぁー!!」「え、なnごふッッ!!!」……………………え。
『ぶ、部長ぉおおおおお!?』
「……ふっ、決まった(キリっ」
とあるエレクトロマスター顔負けの蹴りを鴎崎部長にかましたのは
「……って、赤菜!?」
「どうです黒ちゃん先輩。素晴らしき蹴りじゃなかったっすか(ドヤ」
「(ドヤ じゃねーよ」
し、死んでないよな? と思いつつ部長の顔を上からのぞくと、頬に赤菜の比じゃないくらい赤い足跡を残しつつ気絶していた。
「じゃ、練習始めるよ〜」
『はーい』
我がバスケ部は思ったよりも薄情な部らしい。
「なにやってんすか黒ちゃん先輩、練習しますよ」
「はーい」
俺も例外ではないらしい。
*
どんどん
パース
シュッ
そんな音や声が響く体育館の一角で、
「なんやちびっ子」
「ちびっ子じゃないっす」
鴻と赤菜が話している。
…………さっきの頬の事もあるし、一応止めに入るべきか?
「何やってるんだ?」
「あ、先輩」
「黒ちゃん先輩」
「どうしたんだ?」
「このちびっ子がバスケやる言うんですよ」
「赤菜が?」
「自分だってバスケくらいできます」
…………確かにさっきの蹴りから見るに運動神経は悪くなさそうだけど……
「ったく、もうだまっとけ」
「え〜、やりたいっす」
「ダメや。もう子どもは帰れ」
「子どもじゃないっす」
「ガキ」
「ガキじゃないっす」
赤菜はジト目で鴻を睨む。
……これはきっと赤菜譲らねーだろうなぁ。
「……鴻、やらせてやれよ」
「黒ちゃん先輩!!」
「……。先輩、このガキ気にいってんすか?」
「や、そーゆーわけじゃ……」
「やった、バスケっ、やった、」
「「…………」」
こんなに喜んで(無表情だが)いるのに断るのは気が引ける
そう思ったのか、鴻も黙ってボールを渡す。
「ええか? バスケはボールに魂込めなあかんのやで? ガキにできんか?」
「大丈夫っす。自分、魂込めるどころか共鳴だってできます!」
「「何処の武器職人ですかっ?」」
そんな少し騒がしい放課後でした。
*
「ぶちょー、起きてくださーい」
「うぅ……」
『(不憫なひとだなぁ)』
共鳴ネタかきたかった。