「たわしの名前はとびたにあかなです」
1話めからはちゃめちゃ。
五月晴れ。
今の空はその単語がぴったりだ。
絶体絶命。
それが今の俺にぴったりの単語だ。
* * *
俺こと燕 黒夜は、私立 鳥が丘学園に通う中学三年生の14歳、所属はバスケ部で、エースなんかをやらせていただいている、ちょっと運動が得意なただの男子中学生で…………
…………はない。
別に、成績は中の下だけどそこまで悪い訳ではない。さらに態度がすこぶる悪いとか、髪の毛金髪、とか、そう言う類のものでもない。もっとたちが悪い、体質的な問題である。
“霊感”
世間一般にそう言われる能力が俺を悩ませているのである。
はい、「いいなー」って思った奴挙手ー。んでもってどこが良いのか10文字以内で答えよ。
あのなー、霊感なんていいもんじゃねーぞー。むしろ悪い事ばっか。
例を挙げるなら、取り憑かれたり生きてる人間と区別つかなかったり取り憑かれたり部屋の中で浮遊されたり取り憑かれたりetc……。
ちなみに、取り憑かれると病気にかかったりする。軽いもので微熱。重いもので肺炎。(俺の実体験より)
だから俺は霊を見たら極力逃げる様にしている。
けどさ、回避不可能な場合もあるんだよ。例えば今の状況みたいな。
【まってぇぇぇ、その肉体、私にちょうだいぃぃぃぃぃ】
さっきも言った様に絶体絶命。いや、あんな霊じゃ絶命はしないだろーけど。
つかなんなんだよッ! 廊下の角曲がったらアイツ(霊)と鉢合わせとか、タイミングよすぎだろッ! おかげさまでアイツ(霊)の顔とまじまじと見ちまったじゃねーか。ついでに、「顔についてる血落としたら結構美人だなー」とか思ちゃったじゃねーか。返せ! 俺のときめきをかえせ!
【まってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ】
「だぁぁ! (霊が)しつけぇ!」
「!? おい燕! なぜオレがしつこいと言うのを知っている!?」
「さーせん! 先生の事じゃないんで!」
「そ、そうか……あ! 廊下は走るなよ」
むりっす。
そう思ったが、口にする頃には雀巣先生は見えない所まで走っていた。
つか先生、しつk……いや、触れないであげておこう。
「……はぁ、……はぁ」
【まぁぁてぇぇぇぇぇぇ】
やばい、やばい。俺の息、きれて来た。
どこか、どっか逃げる場所…………!
*
パタン……
「ふぅ……」
そう息をついた場所は図書館。丁度、角を曲がった所にあったので滑り込ませていただいた。きっとアイツは廊下で一人疾走してんだろうな。
……にしても、図書館を訪れるのは何年振りだ?
鳥が丘学園には小学校から通ってる俺だが、あまり読書に興味が無いためここにきたのは……3回?
あれ? そんなに少なかったけ? とか思いつつ、俺は何となく図書館の中を散策してみる。
放課後と言う時間帯だからだろうか、閑散としている。
「へぇ、英語の本もあるんだ……」
一冊の本を手に取り、俺が呟く。パラパラ、と、ページをめくってみるがよくわからない。
「ま、英語だしな……」
そう言って、棚に本を戻したとき、
「背中にゴミが存在していますよ」
「え?」
少し高めの声。
振り返ってみると、そこには椅子に体育座りで座る金髪の少女。真っ白な肌と、鳶色の瞳からして恐らくハーフかなにかだろう。結構整った顔立ちだが無表情なのが玉に瑕。
「とりますか、それ」
右手に本、左手で俺の後ろを指差す。
「え、あ……じゃ、頼む」
「はい」
彼女に背中を向け、ネクタイの色からして中一かな、とか思う。
「いつまで、後ろ向いているのですか。取れましたよ」
「あぁ、どうm…………って、おまえ!」
【肉、肉体ぃぃぃぃぃ】
驚いた。俺、取り憑かれてたのか!
「なるほど、道理で肩が重かった訳だ……」
「あ、コレ捨てていいですか」
「あぁ、どうぞ」
「どうも」
ボシュッ!!
【ぎゃぁぁぁぁぁぁ……】
小さい爆発音と共に消える幽霊。何か残酷な気もするが、すまん! 俺は自分が一番可愛い!
「あんまり、取り憑かない様に……? 取り憑かれれない? あれ? えーっと、」
日本語が苦手なのか、俺が「取り憑かれない様に?」というと、「そう」といい、
「あんまり取り憑かれない様に、気をつけた方がいい」
そう決め台詞を残し、去ろうとする少女を
「待った」
俺は当然の如く引き止めた。
*
「なんでしょうか」
「お前、「とびたにです」……え?」
少女が腰をかけている隣の椅子に座り、話しかけると彼女は急に名乗った。
「お前ではなく、たわしの名前はとびたにあかなです」
「うん、たわしじゃなくて、私な」
「え? …………あ。すいません、たわs……私、あんまり敬語が上手くないんです」
私とたわしの問題は敬語以前の問題な気がする。
「なので、敬語、使わなくてもよろしくお願い致します……?」
なんか新しい言葉できたぞ今。
「……。あ、あのさ、別に、敬語使わなくてもいいぞ」
「誠でござるか!?」
「あぁ、あんま俺気にしないし。つか今の口調の方が気になるんだが」
「で、でも、my motherがJapanでは目上の人に敬語を使わないとセップクだ、と」
まじでか。じゃあ俺何回切腹すりゃいいんだ?
「とりあえず、切腹になんかならねーし、俺が良いって言うんだから良いんだ」
「……じゃあ、そうします」
「おう、そうしろ」
直ってない気がするがな。
さて。
「本題だが、お前、霊感あんのか?」
「うい、自分、名前は鳶谷 赤菜といいやす」
「おい、話聞いてたか?」
「うい」
…………
「霊感あんのか?」
「へい」
・ ・ ・ ・ ・ ・
「仲間みっけたあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「え、ちょ、先輩大丈夫っすか?」
真剣な顔で心配された。
「大丈夫だ」
「だ、だ、……だんご!」
「ご、ご〜……ごりら」
「ら……雷鳴の如く、唸れ! おれの刀!!」
「な、な……って、なんでしりとり始まってんだよ! しかもソレ文章だし!」
「のり突っ込みって奴っすか。先輩もやりますね」
なにがだ。
「ところで、先輩なまえは?」
「ん? 俺の名前は燕 黒夜。なんて呼ばれようがかまわないぜ」
「じゃぁ、“お兄ちゃん”で」
「なあ、なんで俺名乗らせたの!?」
「冗談ですよ(笑)」
「(笑)じゃねーよ(怒)。つか無表情でいわれると冗談に聞こえねーんだよ」
「そうっすか。
じゃぁ、冗談抜きで“黒ちゃん”とか」
黒ちゃんって……すげぇフレンドリーになったなこいつ。
「ま、別にいいぜ何でも(お兄ちゃん以外)」
「(やっぱお兄ちゃんはダメか)んじゃ、黒ちゃん先輩で」
「え、先輩付けんだ」
「うい、一応先輩ですし」
「失礼な奴だな!」
キーンコーンカーンコーン……
「あ、げこーれーだ。
さよならシンデレラ! ボクはげこーれーがなったから帰らなきゃ行けないんだ……!」
「……俺シンデレラか!?
つか俺も帰んなきゃいけねーんだよ。一緒に帰るか?」
「No thank you!」
無茶苦茶良い発音で返された。
「って、いいやすのも、自分は校門の近くにお迎えの車来てやすので。また今度、機会があったらかえりやしょう。
つーことで、また明日」
「あぁ、また明日な」
……パタン。
……お迎えの……車?
…………ま、いっか。
少し引っかかる所があったがまあいいやと割り切り、俺は初めての霊感仲間(少し変わった奴だが)が出来た事に胸を躍らせ、後に今日部活を無断でサボってしまった事に気づいて落ち込み、さらに明日が休みだと言う事にも気がついたのだった。
うへい! 書き終わっ太郎!
あ、調子にのってさーせん。というかここまで読んで下さりありがとうございます。基本、作者が気分やなんで続くかわからんけど飽きるまでやるつもりです。
気が向いたら感想くだせぇ。