会いたくて震度5後編
30分前についた恵は電波時計の時間が調度18になったことを確認し、インターホンを押した。
少し待つと、執事らしき人から応答があった。
少々お待ち下さい、といわれたあとに、「お待ちしておりました」と声が聞こえ、そのあとすぐに、大きな門がゴゴゴゴゴと音を立てながら開き、玄関までの長い道が現れた。
小さい車が迎えにきて、玄関まで案内される。
入り口にはさっきと同じ声をした執事が待っていた。
「恵様、ようこそおいでくださいました。ぼっちゃまがお待ちです、こちらへどうぞ」
恵はすぐに後悔した。自分が来てしまった格好を、だ。
うっすいワンピース一枚、もちろん下着は着ていない、それでサンダル。どっかの娼婦だってもっとマシな格好で客を招きそうだ。広い玄関を出て、室内にある螺旋階段を上り、中央にある部屋の前にたどり着いた。
「こちらでございます」
執事がそういうと、ドアをコンコン、と二回ノックし、失礼します、といった。
大佐からの返事はない。しかし執事の手によってドアは開かれ、「どうぞ」と、中に入れられた。
そこには、魔王が座ってそうな椅子にドシンと座り、足を組んでいるムスカ大佐がいた。
広い広い部屋の周りには、フュギュアやポスター、漫画にライトノベル、DVD、ブルーレイ、巨大液晶テレビ、各ゲーム機、PCが4種類おかれている机があり、その中央に椅子を置き、こちらを見据えている。
「あの、ムスカ大佐、私――」
「言い訳は聞きたくない、まずは謝罪の意思と誠意を見せてもらおう」
圧倒的存在感と、重みのある言葉。普段のふざけているムスカ大佐とは大違いだ。
やはり名家の長男、すさまじい教育を受け、威厳を手にしているということがヒシヒシと伝わってきた。
恵は土下座した。魔王の席に座っている男と、キャミソール姿の女の土下座。
「大変申し訳ござませんでしたぁ!」
大きくりきみ、腹から声を出したせいか、ブフゥっ、と屁が出てしまう。
しかしムスカ大佐は笑うことはせず、ただひたすらに視線を送っていた。
「誠意は伝わったよ。では理由を聞かせてもらおうか」
少し言葉の棘が減った気がした。恵はここぞとばかりに言葉をつむぐ。
「6時集合だったので、18時集合だと思ってました!」
意味がわからなかった。
「6時集合なのになぜ18時集合だと思ったのだ? 大体6時集合といったのはそなたであろう」
「すいません、勝手に6時集合といえば18時集合だと思い込んでいました、申し訳ありません」
ムスカはどんな言い訳だ、と思ったが、ぐすぐすと泣き続ける恵を見てこれ以上責める気がなくなってしまった。しかし、こんな愚弄を受けたんは人生初めてだったムスカはすぐに許すことは出来なかった。
「もうよい、帰っていいぞ」
はっ、と頭を上げ恵は何度も謝ったが、ムスカが指をひとつ鳴らすと、執事が現れて強制的に家からつまみだしてしまう。