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ヘッドホン・エスケープ  作者: リル
Epilogue Extra Split
45/45

Scene Y|観測者たちの読了

淡い光の降る空間――

そこは、あらゆる物語が一度は通る、“読了の間”。


中心には長い円卓、その上には一冊のノートが静かに置かれていた。すでに全ページは綴じられ、最後の余白にまでインクが染み渡っている。


その周囲に、五人の“観測者”たちが集っていた。

人ではない。けれど人の形を模して、それぞれの椅子に腰掛けている。

目元を仮面で隠した者、星の形をした影のような者、煙のような輪郭しかない者――その存在すべてが、“語られること”を拒んでいるかのようだった。


それでも彼らは、確かに“読んで”いた。

ロロという語り部が紡いだ、全ての物語を。


「……ふーん。いいじゃん、最後の“影”との対話。燃えたよ。うん、あたしは好きだな」


金属の指輪をつけた観測者が、ぽんと手を打つ。


「でも甘い。甘すぎる。電子の大魔女の存在がもっと前面に出ていれば、彼の“悲劇性”がより深まったはずだ」


顔を仮面で隠した観測者が、つまらなさそうにノートを指で弾く。


「悲劇に深みは不要だよ。“気づかないまま幸せに書き続ける”なんて、美しさの極致だ。僕はこういうの、嫌いじゃないね」


ゆったりと煙草をくゆらせる影のような者が、くすくすと笑う。


「ほら、そこなんだよね。“気づかない”ってのはね、“祝福”なんだ。神様をやめた子に送られた、ささやかなエンディング」


「語り部ってのは、つまり檻の中の王様だろ? それでいいのかって思うけど……でもまぁ、彼は彼なりに、納得してるみたいだし」


テーブルに足を乗せながら、星のような観測者が呟く。


ノートのページが、ふと風に揺れた。

それは、どこかの誰かが――まだ“読んで”いる証だった。


「……さて、じゃあ次はどの物語を読む?」


「うーん。しばらくは、いいかな。これはちょっと……重すぎた」


「そんなこと言って、どうせまた誰かの“灯”を観測したがるくせに」


「だって、観測者だからね」


誰かがクスクスと笑い、誰かが深く頷いた。


ロロの物語は、彼らの中に収まり、ひとつの“観測”として確かに刻まれた。


それは“物語の終わり”ではなく、“読了されたという事実”。


静かに灯りが消える。

観測者たちの影が、ひとつ、またひとつと薄れていく。


ただ、ノートの上にはひとつの言葉だけが、静かに残されていた。


――完。


それは、確かに“物語だった”という証明。

誰かの人生が、誰かの筆で、語られ、読まれたという記録。


そして今、この場所もまた――

次の“灯”を迎えるために、静かにページを閉じた。

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― 新着の感想 ―
凄い面白かった! 最後まで楽しく読み切れたし、自分の書いてる小説をとても好きなのが感じられた! ある日、小説を書くの辞めた時期あったから、忘れられた物語の部分でとてもこの小説に入り込めたから面白かった…
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