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ヘッドホン・エスケープ  作者: リル
第十二話:創り手の彼岸
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Scene X+1|白の空間と、最後の灯火

ロロの目の前に広がったのは――

空に光の欠片が舞う、静謐な白の空間だった。


音のないその場所で、ただ“存在”だけが脈打っている。

鼓動のような、空気そのものが震える音。


そして、その中心に、リルはいた。

白いうさぎのぬいぐるみの姿で――だが、もうただのマスコットではなかった。


「ここまで来たね、ロロ」


その声に、懐かしさと深い寂しさが混ざる。

ロロはゆっくりと歩を進め、その声のすぐそばまで近づく。


「僕は、君の“灯”であり、観測者。

君が神だったという証のひとつ」


その言葉に、ロロの胸に静かな熱が走った。


「でも……もう、限界なんだ」


リルの輪郭が淡く揺れ、白い空気に溶けはじめていた。


「言わなくていい。もう、十分伝わってるから。

僕は――君が“戻る未来”だけを信じていた。

君が、また物語の中で生き続けてくれるなら、それでいい」


その言葉は、白い空間に優しく広がり、やがて静かに消えた。


「君は、もう“神”じゃない。

全てを創る者ではなく、灯された物語を継ぐ“語り部”として――ここから歩き出すんだ」


ロロは言葉を呑み込み、ただ頷いた。

その目には、はっきりとした光が宿っていた。


リルは微笑む。


「さあ――迎えに行こう、君の物語たちを」


そして、ロロが手を伸ばすよりも早く、リルは光の粒へと還っていった。

無数の光が、夜空の星のように拡散し、彼の背を照らしていた。


ロロは静かに立ち尽くす。

胸の奥に残るのは、喪失と、それを越える希望の鼓動。


彼の足元に、小さな光の粒が落ちていた。

その光は、リルが残した灯火。

それは、彼の新しい物語の始まりを告げる――最後の灯火だった。

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