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ヘッドホン・エスケープ  作者: リル
第七話:記憶の裏で鳴る音
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Scene 1|声の記憶

そしてロロは思った。もしかするとこの世界は、忘れた未来が集まる場所なのかもしれない、と。


新たな目覚めが、また始まろうとしていた──。



視界が淡く揺れ、足元からじわじわと白に染まっていく。歩いている感覚も、息をしている感覚さえも曖昧だった。


そのまま、夢とも記憶ともつかない深淵へ、ロロの意識は溶けるように落ちていった。


──音のない、深い海の底のような静けさ。


ただ、その中にひとつだけ確かなものがあった。“声”。


それは誰のものでもないようで、どこかで聞いた気がする響きだった。


夢の中、ロロの足元には無数の“紙片”が舞っていた。 にじんだ文字、破れたページ、かつて書かれた物語の断片たち。そこに綴られていたはずの言葉は、もうほとんど読めなかった。


そのとき、空間に音が満ちてきた。


旋律とも声ともつかない、不思議な響き。 言葉ではない。けれど、確かに胸の奥へと届いてくる、優しく懐かしい音のかけら。


それは、遠い記憶の向こうから差し伸べられる“手”のようだった。


ロロはその音に、ただ耳を澄ませた。


ふと、夢の深淵に輪郭を持った“誰か”が浮かび上がった。


彼は少年の姿をしていた。 耳に掛けられたヘッドホン、どこか閉じた雰囲気。 何より──手に握られていたのは、淡く光を帯びた槍だった。


その姿は、まるで描きかけの物語から抜け出してきたような存在感を放っていた。


彼は口を動かした。


「君が書くのをやめたから、世界は止まったんだよ」


それは叱責でも批判でもなかった。ただ、事実を伝えるための“声”。


ロロの胸に、その言葉がゆっくりと、しかし深く染み込んでいく。


「でも、まだ遅くない。まだ、俺たちはここにいる」


そのとき、ロロは何かを言い返そうと口を開いた。 だが、その瞬間──夢が波紋のように崩れ、意識が浮上する。


視界の奥に、白が差し込む。


次がきた、と直感的にロロは感じた。

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