表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘッドホン・エスケープ  作者: リル
第六話:鏡の奥に笑う声
22/45

Scene 4|記されなかった未来へ

ロロの指先が、鏡の表面に触れた。


水面のように震えるガラスが、彼の存在をゆっくりと吸い込んでいく。

直後、脳の奥に鋭い閃光のような痛みが走った。


──笑い声。

──夜の街を駆ける音。

──約束の言葉。

──何かを手放す決断の瞬間。


それらは、かつて“存在していたかもしれない未来”の断片だった。

だが今、そこにあるのは──それを選ばなかったという“余白”の実感だけ。


「これは……」


気がつくと、ロロは鏡の“向こう”に立っていた。

だが、ここが裏か表かも、現か虚かも──判別がつかない。


世界は、白く、静かだった。

無音の空間に、無数の光点がふわふわと浮かんでいる。

まるで、それぞれが“ありえた未来”を灯しているかのように。


ロロは足元に落ちていた紙片を拾う。そこには、かすれたインクでこう記されていた。


『未来とは、選ばれなかった記憶の積層である』


胸の奥に、奇妙な疼きが走る。

それは後悔なのか、疑念なのか、それとも──未だ語られぬ何かへの予感か。


「……俺は、どこまで来てしまったんだ……?」


背後で、鈴の音がした。

振り返ると、そこにいたのは白いうさぎのぬいぐるみ──リル。


リルは何も言わず、ただ小さな手をロロに差し伸べた。

その温もりは、さっきまでの沈黙よりもずっと雄弁だった。


ロロは手を握り返す。その瞬間、空間に再び“あの声”が響く。


──■■■■■は、またひとつの扉を開けた。


それが何を意味するのかは、まだわからない。

だが、この歩みは、確かに“どこか”へ続いている。


ロロは、静かに歩き出した。


誰かに読まれることのなかった物語のページを、自らの足でめくるように。

やがて視界の奥に、また別の“輪郭”が現れはじめる。


そしてロロは思った。

もしかするとこの世界は、忘れた未来が集まる場所なのかもしれない、と。


新たな目覚めが、また始まろうとしていた──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ