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ヘッドホン・エスケープ  作者: リル
第五話:雨の日のララバイ
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Scene 2|囁かれる噂

放課後、教室の窓に雨が叩き続けていた。 灰色の空に沈む校舎の中、ロロは席に座ったまま、ぬれた制服の袖を軽く絞っていた。


そんな彼の前に、ぽすんと腰を下ろした女子生徒がひとり。


「ロロ、聞いた? また“出る”らしいよ、あれ」


その声の主──泉大津(いずみおおつ)ちゃんは、いつも都市伝説やオカルトの話ばかりしているクラスの“情報通”だった。 黒縁メガネに三つ編み、鞄には大量の付箋が貼られたファイル。 彼女は興奮気味に身を乗り出す。


「“口裂け女”。昔の話じゃない。最近また、学校の近くで似た人が出たって」


ロロは曖昧に笑って応じた。 「また? あの“マスクしてる女の人”ってやつ?」


泉大津ちゃんは真剣な顔で頷いた。 「うん。でも今回はちょっと違うの。マスクの下の“裂けた口”を見た人が、記憶をなくしたとか、毎晩同じ夢を見るとか……」


その言葉に、ロロの背筋がひやりとした。 心当たりが──ある。


「その人って……どんな感じだったの?」


「ほら、ちょっと前に転校してきたっていうマスクの子。あれ、ウチのクラスの誰かって噂もあったけど、出席簿には名前が載ってないんだよね。不気味でしょ?」


ロロは眉をひそめた。「それ……普通に転校生だったら、めちゃくちゃ失礼な話だからな?」


しかし、出席簿に名前の記載がないのは確かに不気味さを感じる。

ただの転校生だと思うが、紹介された記憶が何故か曖昧であるようでなかった。


ロロは無意識にポケットを探った。 何かが指先に触れる。


──紙。


そっと取り出したそれは、またしても見覚えのあるカードだった。


表には黒インクでこう記されていた:


『口裂けた笑顔の下に、忘れた声がある』


裏にはおなじみの、震えるような筆跡で:


──■■■■■は見ている。


ロロは息を呑んだ。


次の“扉”が、また静かに姿を現しつつあった。

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