表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘッドホン・エスケープ  作者: リル
第四話:境界のむこうで待つもの
15/45

Scene 4|境界のむこうで待つもの

扉の向こうは、まったく異なる景色だった。


まるで現実と夢のあいだを漂うような、不確かな空間。空には夜が静かに広がり、星も月もないのに、不思議と暗くはなかった。代わりに、淡い青白い光が空気全体を照らし、幻想的な輝きを放っていた。


足元には、どこまでも続く水面。踏み出すたびに、波紋が音もなく広がっていく。その水面は鏡のようにロロの姿を映し返していた。


だが、そこに映る“ロロ”は、どこか違っていた。髪の長さ、制服の色、そして表情──すべてが、ほんのわずかに、けれど決定的に異なっている。


「……これが、もうひとつの“俺”……?」


その声に応えるように、水面の向こうに人影が立った。


それは、ロロとまったく同じ姿をしていた。同じ背格好、同じ顔、同じ声。だが、その瞳だけが──まるで“すべてを思い出している”かのように、深く、静かだった。


「ようやく来たね」


“もうひとりのロロ”が、どこか懐かしげに微笑む。


「ここは、“選び”を終えた者が立つ場所。お前はまだその途中……でも、いずれここに辿り着く」


ロロは一歩後ずさる。言葉の意味が掴めない。だが、その声には妙な安心感と、抗いがたい重みがあった。


「なにを……見せようとしてるんだ?」


問いかけに、“もうひとりのロロ”は静かに背を向けた。そして、遠くに広がる黒い闇の方向を指さす。


「次に待つのは、“記憶”じゃない。お前自身の“選択”の過去だ」


その言葉と同時に、闇の中にまたひとつ──新たな“扉”が浮かび上がった。それは今まで見てきたどの扉よりも重く、そして深い存在感を放っていた。


ロロの心臓がドクンと脈打つ。


(また、なにかを選ばなきゃいけないのか……?)


そのとき、空間全体に低く響く声があった。


──■■■■■は、見ている。


その名は認識できないはずなのに、その響きだけが、ロロの心を深く揺らした。


次に開く扉。その先に待つ“何か”が、静かに、だが確実に目を覚まそうとしていた。


空が、微かに波打つ。水面がその動きに共鳴するように揺れる。風はないのに、何かが変わり始めている気配。


ロロは深く息を吸い、目を閉じた。


次に目覚める場所が“日常”であるか、“物語”の続きであるか──それすら分からぬまま、彼の意識は静かに沈んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ