Scene 2|封筒の中身
ロロは落ちた鍵を拾い上げ、手のひらでじっと見つめた。
それは古びた金属製で、持ち手の部分には小さく「IV」と刻まれている。
──“四番目”。
まただ、またこの数字。
ポケットにそれをしまうと、ロロは再び教室を見回した。さっきまで確かにあった“白い封筒”も、“名簿の紙”も、消えていた。まるで初めから存在しなかったように。
ロロの席に戻ると、机の中に新たな紙が差し込まれていた。
それは、見覚えのある筆跡で書かれた短いメッセージだった。
『今日は、音楽準備室へ』
文字の横に、小さな目の印。
その瞬間、心臓がドクンと脈打つ。
音楽準備室──普段、誰も使わないはずの、校舎の西側にある古びた一室。
ロロは一度も入ったことがなかった。だが、身体が、そこへ行かねばならないと告げていた。
昼休み。ロロは周囲に気づかれないように、静かに席を立つ。カバンに鍵を忍ばせ、音楽室の奥にある“準備室”の扉の前へとたどり着いた。
廊下の空気が冷たい。誰もいないのに、足音だけが遠くから追いかけてくるような錯覚。
そして目の前の扉の雰囲気はなんだか重い空気を纏っている。
ロロは震える手でその扉に手をかけた。
──ガラッ
扉を開ける音が、異様に大きく響いた。
ゆっくりと開けた先に広がっていたのは──闇だった。
昼のはずの空間に、光がない。だが、その闇の奥から、確かに“誰かの視線”を感じた。
「……誰か、いるの?」
返事はなかった。だが、闇の中で、小さな何かが動いた気がした。
そして、その奥から──声がした。
「やっと、きた」
それは、男か女かも判別のつかない、中性的で、どこか機械的な響きを持った声だった。
ロロの背中に、冷たい汗が流れる。
「……誰?」
声は応えない。ただ、闇の奥から何かがこちらに近づいてくる“気配”だけが確かにあった。
扉の外から差し込むわずかな光が、かすかに揺れ、室内の奥を照らし出す。
そこには、無数の“楽譜”が宙に浮いていた。五線譜に描かれた音符は、いびつに歪み、まるで悲鳴のように蠢いている。
ロロは一歩後ずさった。
そのとき、部屋の片隅に見えた──椅子に座った“人影”。
顔はフードで隠れている。けれど、その存在は確かに“見ている”と、ロロは直感で理解した。
「……どうして、俺にこんなことを」
フードの下から、小さな笑みのような声が漏れた。
「だって君が、思い出したいって願ったんじゃないか」
次の瞬間、ロロの掌に、再び“あのカード”が現れていた。




