表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/70

第六九話 Time Will Reveal:時が、明らかにする

 ◇◇◇◇


 翌日――

 キリカに手を引かれ、少女ルキアは応接室へと入った。

 大きな窓から差し込む柔らかな光が、部屋を静かに満たしている。


 ソファの向かいには、リョウコ。

 その背筋はまっすぐで凛とした雰囲気、だが表情は驚くほど穏やかだった。


 俺とアスカ、ユキも、少し離れた場所に腰を下ろし、二人を見守る。

 ルキアの表情からは何の感情も読み取れず……キリカに促され、無言でリョウコの正面に腰かける。

 

 しばしの沈黙。

 そして、リョウコが語りかける。


「ルキア……あなたがどう思うかわからないけど……」


 一度、言葉を切り、リョウコは少女の目をまっすぐ見つめる。


「ここに来たアナタは、もう私の娘よ」

「……!!」

 ルキアの肩が、小さく跳ねる。

 

「ごめんなさいね。もう決めちゃったの」

 それは、命令でも宣告でもない。ただ、揺るがない意志のこもった声だった。


「ここには、ぜーんぶあるのよ。住む所も、学ぶ所も。アスカとユキも、そこで育ったの」

「……」


「何の心配もいらない。大きくなったら、ギルドに入ってもいいし、違う道を進んでもいい。私には、たくさんの娘がいるけど……」

 一瞬だけ、リョウコは視線を遠くへ向ける。


「彼女たちが、全員、幸せになるコト。大事なのは、それだけよ」


「そして……あなたに求めるのは、ただ一つだけ」

 さらに柔らかい声を、ルキアに向ける。


「幸せに、なりなさい」


「……しあわせ……?」


 言葉の意味は知っている。でも、それは彼女自身とは全く結びつかない言葉だった。


 ふわり、ふわりと……

 リョウコの言葉を通して、その温かさがルキアを包み込む。


「…………」


 それでも、簡単な決断ではない。ルキアは黒召喚士たちの洗脳を受けている。もちろん、祖母を奪ったギルドを憎むように教えられているはずだ。


「……無理する必要はないわ。ここ以外にもあなたを預けられる施設はあるし……受け入れるかどうかは、あなた次第」

 リョウコは、そう言って微笑む。

 

 さらに少しの沈黙。

 ルキアは、か細い声を絞り出す。

 

「わかんない……わかんないよ……」


「ずーっと、ずーっと……おつかいをして、地上の悪い人をこらしめるように……それだけなの」


「わたしは……それだけなの……」


 その言葉は、ルキア自身の存在を確かめるような……そして……彼女を縛りつける呪文のようでもあった。

 リョウコは、ゆっくりと立ち上がり、ルキアの隣に腰かける。

 そして……そっと、その手を握る。



「時が、すべてを明らかにするわ。あなたの選ぶ道が、正しいのか、そうでないのか」



「だから今は、何も考えなくていいの。いいのよ、それだけでも」


 

 ありのままの自分を、受け入れてくれる。

 ルキアにとって、それが一番必要なことだった。

 一筋の涙が、頬を流れ落ちる。


 少女は、静かに、そして深くうなずいた。


 

 …………

 リョウコはこれまで、ギルドマスターとして、幾度となく戦場の最前線に立ってきた。黒召喚士との激しい戦い。そのたびに、数多くの重い決断を迫られたはずだ。


 新谷夫妻、ハヤブサの仲間たち……彼女の選択は、数多くの悲劇を生み――同時に、彼女自身に、計り知れない重さの十字架を背負わせた。


 それでも、リョウコは立ち止まらない。


 時が経てば、必ず――明るい未来がやってくると、信じているからだ。



 ――時が、すべてを明らかにする。

 ――その先には、明るい未来が待っている。


 その強い信念は、揺るがない。

 それは、ルキアと板山ギルドの運命を切り開いていく。


リョウコの愛情が、運命を切り開く。次回、第一部完結です。

評価ポイント(★)ブクマ、コメントお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ