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第六八話 板山ギルド帰還

 翌日朝――

 俺たち板山ギルドのメンバーは、品川ギルド前に集合。


 皆に見送られながら、板山に出発する。空は晴れ渡り、朝の空気はどこまでも澄んでいた。

 エルトーロの面々も全員集まり――多くの仲間に見送られながら、板山へと出発する。

 

「うわあおん! また来てねっ!」

「ありがとうっ!」


 リリーとエミリアは、アスカ、ユキ、ジャネット、モモカ、キリカ――板山の女性陣と次々に抱き合い、再会を誓う。


「また来いよ!」

「僕らも遊びに行きます!」


 俺とハヤブサ、マキオはリュウガ、サダトラとガッチリ握手。その手の感触には、お互いの信頼関係が宿っていた。


 名残惜しそうな声と、笑顔。それを背に、皆で二列に並んで板山へ向かう。

 その後を、ヒョコヒョコとアオが付いていく。


◇◇◇◇


 歩きながら、ふと思った。

 不思議と……周囲の景色、というより空気そのものが変わっている気がした。


 黒召喚士撃退のニュースは瞬く間に広がり、街は歓喜の声であふれる。


 これまで、魔物を恐れてひっそりと、隠れるように開かれていたマーケット。だが今日は違う。もう、隠れる必要はない。

 大通りの両側には、色とりどりの露店がずらりと並び、呼び込みの声、笑い声、食べ物の香りが入り混じる。

 

 あちこちで朝市が開かれ、街は久しぶりの活気に満ちていた。世の中が、ちょびっと良くなったんじゃないかな!

 俺は、久々の達成感を味わいつつ、ゆっくりと歩みを進める。


◇◇◇◇


 午後、俺たちは板山ギルドに到着。


 ギルドの扉の前では……

 リョウコ、アカネを筆頭に、ギルド所属メンバーがずらりと並び、出迎える。


「よくやった! ハヤブサ、さすが!」

「ジャネット様〜こっち向いて!」

「マキオ、最高だぞ!」

「モモカ! 頑張ったねっ!」


 すでにトップパーティとして有名なスフィーダの面々は、英雄扱い!


「ダイキ! お疲れ様!」

「アスカ、ユキ! よかったあっ!」

 俺とアスカ、ユキにもあたたかい言葉が向けられる。


 そして、キリカは少し離れたところでルキアの手を取り、そっとその様子を眺める。

 リョウコの配慮で、最後の敵がルキアだった事は伏せられ、ただ"黒召喚士を倒した"とだけ伝えられた。



 俺たちは喧騒の中、板山ギルドの扉をくぐり……堂々の帰還。


 しかし、あと一仕事残っている。


 俺とハヤブサ、アスカ、ユキはリョウコと共に二階の応接室へ向かった。


◇◇◇◇

 

 リョウコの周りを囲んで、ソファに腰掛ける。

 彼女は、ねぎらいの声をかけた後……俺たちに昔話を聞かせてくれた。

 

――――


 ルキアは、リョウコの幼馴染で――元の名前は井上カスミ。

 二人が幼い頃――世界はロマンシア女王率いる白魔導士と、ルシフェル王率いる黒召喚士と激しい戦闘を繰り広げていた。


 戦争で両親を亡くした二人は、その特別な才能を認められ、ロマンシア女王が遺児のために建てた施設で、共に育った。


 リョウコも優秀だったが、カスミにはさらに特別な力があった。それは、自在にあらゆる生き物を召喚できるスキル。

 遺伝でしか手に入らないそのスキルを持つ者は、世界でも数人しかいないという。その大半を抱えるルシフェル王に対し、女王軍は防戦一方。

 

 そこに現れた、召喚士のスキルをもつ少女。


 女王は少女に、"光"を意味する称号――"ルキア"の名を与えた。

 そして、慈愛あふれるロマンシア女王のもとで、リョウコと共に健やかに育つ。

 

 しかし、ルシフェル王の戦略は徹底していた。

 ――特別なスキルを持つ召喚士を囲い込むこと。

 

 彼の軍勢は女王の施設を急襲。激しい戦闘の末、ルキアは奪われる。


 それ以来、カスミは、ルキアとしてルシフェルの元で育ち、やがて黒召喚士としてその名を馳せるようになった。


 召喚スキルは遺伝する。

 カスミは、おそらく十五年前の戦いで……リョウコ渾身の一撃、アースクエイクで命を落としたのだろう。

 そして、年齢から推測すると――

 その娘も何らかの理由で若くして亡くなり――今目の前に現れた少女ルキアは、おそらくカスミの孫と思われる。


――――


 一通り話し終えた後、リョウコは静かに語りかける。

「長い旅で疲れたでしょう。ルキアとは明日話しましょう。キリカが面倒を見てくれるわ」

 

 俺は戸惑いながら尋ねる。

「もし、ルキアがカスミの孫ならば……あなたは、彼女から祖母を奪ったコトに……」

 リョウコは一瞬険しい表情を見せる。

「そうね、彼女は私を受け入れないかも知れない」

「……そして…………彼女の祖母カスミは、アスカとユキから両親を奪った……」

 

(いくら少女とはいえ……本当に、受け入れられるのか? 本人も、板山ギルドも)

 

 沈黙が流れる。


 アスカが口を開いた。

「私はね。今の話を聞いて……」


 ……

 

 一瞬の間に、どきりとするが……力強い声で言葉をつむぐ。

「……なあんだ! って思ったよ」


「……え?」


「だって、そうじゃない! 私は、父さんと母さんの仇を討つために……頑張ってきたの。でもさ、今の話って……ルキア、いやカスミ?……リョウコさんがもう倒してるってことだよね」


「まあ……そうだな」


「じゃあ、あのルキアちゃんは……何の関係もないわね! そして、リョウコさんには……お礼を言わなきゃ!」

 

 リョウコに心配かけさせない。その気遣いから、アスカは努めて明るく振る舞う。

 そして、ユキも言葉を重ねた。

「あ……でも、リョウコさんの所で育つなら……妹になるわね」

「そうね! じゃあ、面倒みなきゃね!」


 リョウコはその会話を聞いて、安堵の表情を見せる。

 あとはルキアが、受け入れるかどうか……


 

 明日に備えて、俺たちは久々に一人で自宅へ戻る。品川での寮生活は思いのほか楽しくて……なんか寂しいぞ!


 


第一部完結まであと二話。

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