第六六話 ちゅ……!
◇◇◇◇
――あれから一週間。
激戦の傷はすっかり癒え、リュウガとも話し合い――俺たちは明日にでも板山ギルドへ戻ることになった。
その前に――どうしても終わらせねばならない大仕事が残っている。
そう、品川最後のスキル、‘’ときめきハイスクール‘’の結末を見届けないと!
……実はスキル、使ってないけどね。
ハヤブサが、いかにもそれらしく表情を引き締め、リリーとサダトラを呼び出した。
「ゲートウェイ付近で魔物を見た、という通報があった。ルキア以外の黒魔道士が潜んでる可能性もある」
「はいっ」
「リリー、すまんが……地下から魔物の反応がないか調べてくれ。サダトラは、いつも通り護衛をお願いする」
「わかりましたっ!」
アスカ、ユキにもこの作戦は共有済み!
二人は事情を察しつつ、笑顔でリリーを送り出す。
俺はサダトラを呼び止め、耳打ちして……適当にそれっぽいコトを伝える。
「体力、知力、容姿……全部80以上! この状態でヒロインに告白すれば、ゲームクリアだ!」
「ほ、本当ですか……!」
背中をドンと叩いて、この一週間でパラメータを上げまくった(コトになってる)サダトラを送り出す!
◇◇◇◇
てくてくてく……
てくてく……
サダトラが先を歩き……
微妙な距離を保って、リリーが後ろをついていく。
ザザザ……ザザッ!
そして、物陰に隠れながら二人を追う――俺、アスカ、ユキ!
「微妙に距離あいてるわね……」
「大丈夫かな……」
やがて、ぱくりと暗い口を開けたゲートウェイ前に辿り着く。
リリーはスマホを眺めながら、首をかしげる。
「……魔物なんていないよ! おっかしいなあ」
「そうだね……少し様子見ようか」
…………
ゲートウェイの口を眺めながら、しばし沈黙。
その先の地下に漂っていた黒いオーラは消え去り――ただそこには過去の繁栄を忍ばせる、赤錆た遺構だけが静かにたたずんでいた。
サダトラがつぶやく。
「びっくりするほど静かだな……」
いざとなると、なかなか言葉が出ない。
……
そしてまた沈黙。その後……
リリーが意を決して切り出す。
「ああっ! そうだ、すっごい大事なコト言うの忘れてた!」
「……え?」
リリーはサダトラの目をばちっと見据えて、毅然と話す!
「……ありがとう!」
「……?」
「守ってくれて、ありがとう!」
「……いや……仕事だから……」
(何言ってんだ! 違うだろっ……)
「何回も、何回も! 命がけで……」
「……いや、そんな……俺も、何度も、リリーに助けてもらってる……」
……
そして、リリーは一瞬だけ視線を落とし――
再び、強い目で見つめる。
「……本当に、仕事だけのため?」
「……!!」
「……本当に?」
リリーの真剣な視線がサドトラを刺す。
(ここで、言わなきゃ!)
「リリー!」
「……え?」
「俺は……リリーのコトが好きだ」
「…………!」
「て言うか……めちゃくちゃ、好きだ!」
「………………!」
「……わたしね……どうしてだろう。サダトラがいると、安心するの。あんなに……私のために、必死になってくれて……それ、ずっと見てた! ずっと、見てたよ……」
リリーは、そっとサダトラの手を取る。
「……わたしも、サダトラのコトが好きかも……」
◇◇◇◇
その頃――
ゲートウェイ右手、ガレキの山の裏。
むにゅう!
狭いスキマに、俺たちはぎゅうぎゅう詰めになって、二人の会話に耳を立てていた。
「やった! サダトラ」
「リリーちゃん! サイコー!」
ヒソヒソと喝采!
結果を見届けた俺たちは、そそくさとギルドに戻る。
その道中、俺はアスカにふと尋ねる。
「そういえば……リリーのカレシはどうなったんだ?」
「えーと、誰だったっけ……あの後、ソッコー別れたわよ!」
「おけ!」
◇◇◇◇
当然、魔物が出てくるはずもなく……
昼過ぎには、任務完了。
リリーとサダトラは、ぎごちなく手を繋いで、品川ギルドへ戻る。
その途中――
リリーが、ふと足を止めた。
「そうだ! サダトラ! わたし……まだ話の途中だった!」
「……?」
「目、つぶって!」
「……は、はい」
ちゅ……!
リリーはサダトラの頬に、そっと口付けする。
「……助けてくれて、ありがとう」
(やっぱり……ここは天国かもしれない……)
サダトラは、頬に伝わる、柔らかな感触にいつまでも浸っていた。
◇◇◇◇
俺たちは、ぎるぎる荘に戻って、骨を休める。
「……本当に、仕事のため?」
あの一言。間違いなく、サダトラの背中を押したのは、リリーだった。
彼女は、すでに気持ちを決めていたのだろう。
――そういえば。
このゲーム、最終日は女の子の方から告白してくるんだよな。
完全なハッタリだったけど……
ギャルゲースキル、ちょっとは効いてたのかも!
よかったね、サダトラ!!
第一部完結まであと4話……!
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