第六五話 ときめく、恋のゆくえ
◇◇◇◇
翌日――品川ギルド。
地下から魔物が湧き出る可能性はゼロではないため、いくつかのパーティが定期的に見回りへ出ている。とはいえ、あの激戦を越えた今となっては、大物や統率の取れた敵が出る気配はない。
ギルド内には、久しぶりにゆるやかな時間が流れていた。ルキア討伐のメンバーは、前回と同じく奥の救護室で静養中だ。
白いカーテン越しに差し込む昼の光。消毒薬の匂いと、柔らかなシーツの感触。
アスカ、ユキ、リリーの女性陣は、なぜか当然のように1つのベッドにぎゅうぎゅうに潜り込み、賑やかに女子トーク。
スヤスヤ……
床に目をやると――今回はさすがのアオも疲れ果てたようで、丸くなってゴロンと横になり、尻尾だけをぴくぴく動かしながらお昼寝中。
「リリーちゃん! サダトラに告白するの!?」
今日もユキは、親友のリリーにド直球を投げ込む!
「ムリムリムリ! かっこ悪いトコ見られちゃったし」
「そんな事あったっけ?」
「チリチリで真っ黒なトコ見られたの!」
「いやいや、誰も覚えてないっしょ!」
リリーは顔を真っ赤にして、布団に潜り込む。アスカとユキは、その様子を見てニヤニヤする。
◇◇◇◇
一方、俺たち男性陣も、ベッドの上でゴロゴロと過ごす。今日は何もしたくないな……
サダトラはというと、自分のほっぺを、ぎゅーっと伸ばしたり、むにっと縮めたりを、何度も繰り返している。
「……何やってんの?」
「いや、すごい夢見たんで……ちゃんと目が覚めたか確かめようと……」
「……どんな夢??」
「そんな恥ずかしいコト言えませんっ!」
「…………」
(だいたいわかってるけどね……)
すると、隣で横になっていたハヤブサが何気なく尋ねる。
「……リリーのコト、好きなのか?」
サダトラの声が部屋中に響き渡る。
「めちゃくちゃ好きです!」
「ぶぶっ!!」
思わず吹き出す俺。
……いや、そこは照れろよ。
さっきまでの恥ずかしさはどこへ行った。
「……でもリリーちゃん、モテるから……俺のコトなんか……」
しょんぼりするサダトラ。
……共に戦った仲間として、放っておけない!
……とはいえ、恋愛経験の乏しい俺ができるコトって……ふと、俺は昨日の温泉での会話を思い出す。
「なんか、トキメク……」
ときめく……そうだ!そんなゲームあったな!
俺は急に身を起こす。
「サダトラ、よく聞け。今から……レトロゲームスキルを使うぞ」
「……ええ?」
「レトロゲームスキル……」
俺は大げさに右手を振り上げる。
「ときめきハイスクール!」
「……??」
一見、何も起きてないように見える。
「このスキルは……ギャルゲーといってな――好きな女の子に告白すると、永遠に幸せになれる!」
「……ええええっ!?」
「……期限は一週間だ! その間に、体力と知力を身につけて、そしてヒロインとの好感度を上げる」
「へえ……」
「条件を満たして、一週間後にゲートウェイの下で告白すると――そのカップルは一生幸せになる!」
「マジっすか! 頑張ります!」
サダトラの目が、キラッキラと輝く。
ハヤブサが、こっそり耳打ちしてくる。
「よくできた話だが……本当か?」
「出まかせだよ! 敵がいないからスキルは発動しない」
「そ……そういえば」
「でもこれで、その気になったら上出来じゃね?」
素直すぎるサダトラ、すっかり真にうけて……
それから一週間、ひたすら己を磨き続ける!
こんな感じで……
◇◇◇◇
ガチャ!
「あっ、サダトラ!」
女性陣が意外そうな表情を向ける。
「……これ、お見舞い……」
その手には、バナナをはじめ、フルーツが山盛り!
わあっと歓声が上がる。
「サダトラ!ありがとっ!」
リリーも笑顔を見せる。
"好感度"パラメータが上がった!
そして翌日も……
午前中はリハビリを兼ねて筋トレ!
"運動"パラメータが上がった!
午後は俺が貸した「まんが世界の歴史」を熟読!
"雑学"パラメータが上がった!
ヒロインを攻略するには、全てのパラメータが一定以上でないといけない!
サダトラの、その日の行動を聞いて、俺はもっともらしくパラメーターの数値を読み上げる。
……ヒマつぶしにはちょうどいいな!
まあ、実際のゲームとはだいぶ違うけどね。
第一部完結が近づいてきました。
サダトラの恋を応援したい方!
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