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第六四話 激戦のあとも、もんもんする

 食事を終えて、俺はハヤブサとサダトラを誘い、温泉へ向かった。


 ちゃぷん


 夜風にさらされた露天風呂に身を沈めると、じんわりとした熱が全身に広がり、魔力と疲労が同時に溶けていく。


 その時、女湯から弾けるような声が飛んでくる。


―――――


「アスカちゃん! 今日もおっきいね!」

「リリーちゃんも、おっきいじゃん!」

「ジャネット姉さん、すごい引き締まってる!」

「あれ? ユキちゃん、ちょっとおっきくなってる?」

「わたし……ここに来て、みんなと出会って、すごい成長した!」

「……こ、これの成長のコト……!?」


 ちゃぷちゃぷ


「ねえねえ、みんなで、ぷるるんしない?」

「やるやる!」


 わさわさ!

 ぷるるん(アスカ)

 ぷるるん(リリー)

 ぷるん(ジャネット)

 ぷるぷる(ユキ)


「すんごい!」

「なんか、トキメクわねーっ!」


―――――


………………

 何が起きてるのでしょうか……

 俺たちはもんもんとしながら、魔力回復に努める。


「……?」

 サダトラがぼんやり宙を見上げ、なんかぶつぶつ言ってる。

「俺……ドラゴンに倒されて……天国に来たけど……帰らなきゃ! リリーのいる所へ!」

「いやいや、もう帰ってるから!!」

 ハヤブサがあわててフォローする。まだ調子悪いみたいだな!


 ぶくぶく


「なんか、トキメク……」


 俺は妙に、その言葉が気になった。

 確か……そんなスキルがあったな……何だっけ……



――――――

 そんな露天風呂の端っこで……


 キリカは、ルキアと一緒に温泉に浸っていた。

「……ルキアちゃん、熱くない?」

「……うん」


 たぷん、たぷん


 湯の揺れに合わせて、ルキアの肩がわずかに上下する。

「…………あったかい……こんなの、はじめて」

「お風呂、入ったコトないの?」

「ぜんぶ、魔法ですませるから……」


 言葉の端々から、過酷な地下での生活が伺える。極限まで効率化した暮らしで、封印が解けるまで耐えていたのだろう。


 ばしゃばしゃばしゃ!


「あれ? キリカ!……ルキアちゃんも!」

 アスカたちが気づいて、湯をかき分けてやってくる。


「ねえねえ!ルキアちゃんも、つんつんする?」

「……え……??」

「ほらっ!」


 ぷるるん


 つんつん

 つんつん


「すごい……やわらかい!……」

「ルキアちゃんも、そのうちおっきくなるわよ!」

 キリカが慌てて止めに入る。

「ちょっと〜ヘンなこと教えないでよっ!」

「てへへっ!」


 くすくす、くすくす。


 固い表情のルキアも、つられて笑顔を見せる。


――――


 リバーシのスキルは、ルキアの黒いオーラを封印した。しかし、スキルで人の心まで変えるコトはできない。


 それでも、皆の心遣いが――心の黒い闇を、少しずつ、晴らしていく。


 アスカとユキもまた、追い続けた宿敵に対する複雑な感情を抱えながら、気づき始めていた。本当に倒すべき敵は――幼いルキアの能力を利用し、最後には捨てた黒魔道士たちだということを。

 

 新谷姉妹は、静かに誓う。ルキアに寄り添い――そして、黒魔道士たちを必ず倒す、と。

 

――――――



第一部完結が近づいてきました。

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