第六三話 涙がぽろり
てくてく、てくてく
足音が、洞窟に小さく反響する。
その時、ユキが不安そうに声を上げる。
「え……ええと……ココ、どこなの??」
「……!!」
「そ……そういえば……」
「ていうか、道知ってるの!?」
先頭を意気揚々と歩いていたハヤブサが、ぴたりと足を止める。
「知らんな! なんとなく、歩いてただけだ!」
「……偉そうに言わないっ!」
「もう〜どうするのよ!」
ちょい、ちょい
その時、ルキアがアスカの服の裾を、遠慮がちにつまんだ。
「……あら、どうしたの?」
ルキアはぼそりとつぶやき、反対方向を指差す。
「……あっち」
「……ハヤブサ! 逆よっ!」
「……やべっ! すまん、すまん」
ザッ、ザッ、ザッ
進路を変えて歩き続けると――
やがて、見覚えのある光景が視界に飛び込んでくる。
「こ……ここは!」
蔦のスキマにできた空間を抜けると、
そこには、あの地下鉄の廃線跡が広がっていた。
冷たいコンクリート、奥へと伸びるレール。
間違いない――来るときに通った道だ。
その廃線跡を辿っていくと……
ついに品川、ゲートウェイ出口に到着!
日はすっかり暮れて――満月がこうこうとがれきの山を照らしていた。
その月明かりの下……がれきに腰を下ろす男女の影。
「……!!」
アスカとユキが駆け出す!
「リリーちゃん!」
「アスカちゃん! ユキちゃん! よかった〜」
リリーは立ち上がり、満面の笑みで二人を迎える。隣のサダトラも、少し照れるように笑った。
俺たちも駆け寄って、グータッチを交わす。
「よかった……本当に」
その時、リリーがアスカの影に隠れるように立つ少女に気づく。
「……あれ、この娘は??」
「……ルキアよ」
「ええええっ!」
歩きながら、リリーとサダトラにラストシップでのできごとを説明。リリーはすかさず、ギルチャでギルドに報告。
そして、全員で品川ギルドへ帰還。そこでは、知らせを受けたギルドのメンバーたちが待ち構えていた。
「アスカ! ユキっ!」
「うわああっ! お帰りっ!」
「よく帰ったな!!」
エミリア、モモカ、ジャネットたちは次々とアスカたちに抱きついてお出迎え!
「よく帰ったな! すごいぞ!」
「品川(とマリリン!)を守ってくれて……ありがとう!」
俺たちはリュウガ、マキオと強く抱き合い、無事を確かめ合った。
その一方で――
キリカは、すぐにルキアの元へ駆け寄り……しゃがんで目線の高さを合わせ、優しく話しかける。
「ルキア……ちゃん、ね。疲れてるでしょう。何か食べる?」
「ルキアは小さくうなずく」
最強の黒魔道士……とはいえ、まだ小学生くらいの少女。しかも、仲間たちに利用され、そして捨てられ……想像を絶する経験をしてきたに違いない。
だからこそ、リリーはキリカにギルチャで彼女をケアするよう、依頼しておいたのだ。
わいわい
ぎるぎる荘へ戻り……ケガ人はモモカたちの回復魔法を浴びて、体を休める。
やがて落ち着き――食堂に集まり、みなで食卓を囲む。
まず、リュウガが立ち上がり、一礼する。
「よくやったな! 東京に、もう魔物は出ないだろう。ギルドの勝利だ!」
「おおおおっ!」
そして、ハヤブサも立ち上がって、一礼。
「みんなのおかげだ! オロチとの死闘、地下でのドラゴン戦……ここにいる、だれ一人欠けても……勝てなかった! 本当に……ありがとう!」
パチパチパチパチ
食堂は、温かな拍手に包まれる。
パタパタパタ!
アオはマジカルバナナをむしゃむしゃ。
羽を小刻みに震わせて、上機嫌だ。
「かんぱーい!!」
グラスの音が弾け、笑い声が広がる。
ぎるぎる荘に、久しぶりの賑やかな夜が戻ってきた。
そして、食堂の裏手にあるキッチンでは……
むしゃむしゃむしゃ!!
キリカが見守る中、ルキアが一心不乱にお肉を頬張る!
……肉汁あふれる、とろけるようなホホ肉のグリル。暖かいコーンスープ。みずみずしい野菜のサラダ。
過酷な地下の生活では……決して手に入らない、初めての味。
「……ルキアちゃん、おいしい?」
…………
こくりとうなずいた――少女の瞳から、ぽろりと涙がこぼれた。
「……こんなにおいしいの、食べたコトない……」
「ルキアちゃん……」
彼女は何も語らないし、キリカは何も聞かない。ただ、黙々と、手料理を口に運んでいく。
「……よかった! たくさんあるから、好きなだけ食べてね!」
それでも、キリカの明るい言葉に――緊張がほぐれてホッとした表情を見せる。
皆で帰還!ルキアの将来は……!?
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