第六ニ話 終わらせるために
「対ルキア、これが最後のスキルだ」
もう、戦うためじゃない。すべてを、“終わらせる”ために。
俺は拳を握りしめて、詠唱する。
「レトロゲームスキル……」
選択したのは……はるか昔のゲーム、ファミコンのカセット版「リバーシ」!!
盤の上で、表が白、裏が黒のコマを交互に打って……挟まれたらコマを裏返して、反対側の色になる。ある意味、マインクラフツ以上――人類のほとんどが知る古典的ボードゲームだ。
俺は静かに、アスカとユキを呼ぶ。
「簡単なお願いがある。二人で……ルキアを挟んで、手を握ってやってくれ」
「……え? いいけど……」
戸惑いながらも、アスカはうなずく。
二人は恐る恐る、ルキアに近づく。
警戒心を露にしながら、挟むように立ち――その小さな手を、そっと握った。
「……え……」
ルキアが戸惑いの表情を見せる。
――その瞬間!
ファ……アアア
柔らかく白い光が、ルキアの足元から立ち上る。
それは波紋のように広がり、彼女を包んでいた黒いオーラを――静かに、だが確実に飲み込んでいく。
シュウ……ウウ……
その闇は――やがて、ほどけるように消えていった。
洞窟全体が、白い気配に満たされる。
「これは……一体??」
白い光に包まれたアスカがつぶやく。
「黒いオーラが……消え去った……!」
ユキも驚きの声を上げる。
俺は、その様子を見届けて、このゲームについて説明する。
「……このスキルは、リバーシ! 黒の両側を白で挟むと……裏返って、白になるんだよ!!」
「え……ええええっ!!」
「よくわかんないけど、すごいっ!」
「な……何だそりゃ!!」
皆の口から驚きと、疑問の声が沸き上がる。
「もうちょい、詳しい説明、お願いします……」
「アスカとユキの色は、両親から受け継いだ……優しさと正義感。それは、真っ白のコマになる!」
「……ふんふん」
「そして……ルキアは真っ黒じゃない。その裏には、白い一面が隠されている。だから、両側を白で挟んだら、ルキアは裏返って、白になるんだ」
「へええええっ!」
「……え……これは……」
ルキアが周りを見渡す。その表情は、とても穏やかだった。
「もう魔物を召喚する事はない。ここにいてもしょうがないし……一緒に帰ろうか」
「…………」
少女は一瞬だけ戸惑い――
そして、小さく、けれど確かにうなずいた。
ゆっくりと、ゆっくりと、歩き始める。緊張と警戒心に包まれた……少女とは思えないその雰囲気。
ヒョコ、ヒョコ、ヒョコ
そんな時、アオがテクテクとルキアに近づく。
「……いけね! スキル解除する時……アオのサイズ戻すの忘れてた……あれ、もう、ちっちゃくなってる!?」
大きい体を維持するには、大量の魔力が必要だ。魔力が減って、自然と小さくなったのかもしれない。
アオは、ルキアの顔をじっと見つめ――
クウウン!……クウウン!
ぺろぺろぺろ
容赦なく、顔を舐めまわした。
「ひ……ひやあっ!」
…………
「あは……は……は」
ぺろぺろ
「きゃははは! くすぐったいっ!」
それは、初めて見せる、年相応の無邪気な表情だった。
「アオ! 相変わらず、甘えん坊ね〜っ!」
「もっと相手選びなさいよ!」
「ははははっ!」
「ホントだ! ぶわははは!」
笑い声が、洞窟に響く。
抜群に気の利きくドラゴン、アオのおかげで、重い雰囲気が一変!
足取りも軽く、地上へと向かう。
その帰り道で、ハヤブサは俺に尋ねる。
「さっきの話で……ひとつ気になったんだが……」
「どうした?」
「なんで、ルキアの裏側……白い面があるって知ってたんだ?」
「……思い出したんだよ。"ルキア"って、"光"を意味する言葉なんだ。本当に悪いヤツに、そんな名前はつけない。何か事情があって、黒に転じただけ……だと思ったんだ」
「……そうか。ん?……だったら……逆に、アスカとユキにも、黒い面があるって事か?」
「……そうだな……アスカはわかんないけど、ユキはあるぞ!」
「そうなのか?」
「車のハンドル握った時! あん時の性格は、真っ黒だぞ!」
「ははは! そんなコトもあったなっ!」
皆で軽口を叩きながら、和やかに帰路につく。
対ルキア、最後のスキル。
実はこのあと一回、スキル使う場面があります。
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