第六一話 特別な力
……
殺すか、捕えるか……
とにかく、ここにルキアを放置する事だけはできない。たとえ、少女であろうとも。
ルキアの体から、黒い靄のようなオーラが静かに溢れ出している。それは揺らめきながら空気を歪ませ、肌にひりつくような圧を与えてくる。
――魔力が、異様な速度で回復している。黒召喚士として、相当な能力の持ち主だ。
アスカが、震える声で口を開いた。
「ダイキ……私……ずっと、ルキアを倒すコトだけ考えてきた! 今すぐにでも、殺してやりたい! ……でも……体が……動かない……動かないの……」
言葉を絞り出すたび、感情が喉に詰まる。頬に、ひとすじの涙が流れ落ちた。
仲間のために散った、新谷夫妻。二人もまた、その優しさと正義感を受け継いでいる。
その血は、少女に手を掛ける事を許さない。
……
俺たちパーティは、決断を迫られる。
だが、誰一人として、声を上げられない。
ビリ……ビリ……
空気が震え……ルキアの周囲に、黒い魔力が満ちていく。
その様子を察したハヤブサが、低くつぶやく。
「おそらく、捕えて拘束しても、新たな魔物をすぐに召喚して……再び戦闘になるだろう。殺すしかないのか……」
アスカのそばに寄り添っていたユキが、ふと漏らす。
「……魔力を封じるコトはできないの?」
ハヤブサが応える。
「できるモンなら、とっくにやってるさ……お手上げだな……」
……
その瞬間。
俺の中で、今まで引っかかっていた違和感が、一本の線になってつながった。……イチかバチカだが、ぼんやり考えていたプランを実行する。
「マインクラフツ、解除するぞ」
「……え?」
俺は魔力を止め……ワールド全体が光に包まれた。
独特の、じめっとした空気が肌を撫でる感覚。スキルの世界が溶け、剥がれ落ちていく。
視界が切り替わり、ラストシップから転移して、俺たちが立っていたのは――薄暗い洞窟の中に広がった空間。
そこには、わらで組み上げられた簡素な小屋がいくつも並び、焚き火の跡、使い古された道具――
生活の痕跡が、はっきりと残っている。
ハヤブサが周りを見渡して、つぶやく。
「……こ……ここは……」
俺は、周囲を見渡しながら答える。
「おそらく、黒魔道士たちのアジトだろう。しかし、誰もいない……」
「……ルキアに戦わせて、全員逃げたのか。クソだな」
「奴らは……ルキアの、その絶大なる召喚スキルを利用し尽くして……そして捨てたんだ」
ルキアは微動だにしない。
しかし、かすかなつぶやきが聞こえる。
「………みんな……どこにいったのかな……」
「また、おつかい、するよ……」
……ルキアの黒い魔力が再び満ちていく。
何が正解なのか? 殺すのか? また戦うのか?
いや、違う。俺には……特別な力――
レトロゲームスキルがある!
いよいよ佳境へ……
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