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第六十話 それでいいのだろうか?

◇◇◇◇


「……ねえ、どうして……じゃまするの?」

「おつかいを、頼まれた……だけなのに」


◇◇◇◇


 ……!!


 らせん階段を一段、また一段と登るたびに――頭の奥に、直接触れてくるような声が響いた。

 なんだろう……



 ザッ……ザッ……ザッ……

 足音が、塔の中で大きく反響する。



 そして――ついに最上階へ。

 そこにあったのは、拍子抜けするほど簡素な小部屋。そして、その中央にぽつんと置かれた、ひとつのチェスト。中にはダイヤや金、貴重な素材や道具が入っていたので、回収する。


 ハヤブサがつぶやく。

「え……これだけか?」

「いや、まだ先がある」


 窓から外を覗くと……塔の横に大きな船が浮かんでいる。

「あれが目的地、ラストシップだ」


 ブロックで足場を組み、慎重に船へ渡る。船内は静まり返っていて、その中をゆっくり進んでいく。


 そして一番奥、突き当りの小部屋にたどり着く。ここにあるのは、チェストと……重要アイテム、マントラ!

 空を滑空できる、特別なアイテム。多くの冒険者が、これを目指してここにやってくる。


「この部屋じゃなかったか……」

 アイテムを回収して、外に出る。

 そして、船首の方へ向かうと……


 船の舳先、いっちばん先頭にたたずむのは……小柄で、黒いベールをまとった人物。


 アスカが叫ぶ。

「……ルキア! ついに見つけた!」


 チャッ!

 ハヤブサとアスカが、反射的に剣を構える。


 だが、俺はなぜか剣を取る気にならず……

 静かに、ルキアへ歩み寄る。


 背後から、ハヤブサの声。

「ダイキ! 危ないぞ!」


 俺は足を止めず、ルキアの正面に立ち……閃光の剣を取り出して掲げる。だが、戦うためではない。剣の光で周りが照らされて……

 ベールの奥から、ルキアの顔が浮かび上がる。


 ……!?

 そこから現れたのは、漆黒のラストドラゴン――その頭!


「……ドラゴン!?」 

「…………いや、ただの仮面だ……」


 ベールの下から覗く竜の顔――

 しかし、俺は知っている。これは、最後に回収するアイテム、竜の仮面だ。


 ……!!


 すると、ルキアは……

 両手で仮面に手を掛けて……


 ゆっくりと、竜の仮面を取り外す。

 そこに現れたのは――最強の宿敵、ルキア。


 アスカとユキの両親、そしてハヤブサの仲間たちを葬った、憎むべき相手。

 ……の、はずだった。


 アスカの声が、震える。

「……え……うそでしょ……」


 仮面の下から現れたのは……

 なんと……小柄で華奢な体。

 青白い顔をした――


 十才くらいの、幼い少女!!


 少女は仮面を手にしたまま、落ち着いた声でつぶやく。


「ねえ、どうして、ジャマするの……?」


 予想外の展開に、言葉が出ない。


「……」


「おつかいを、頼まれた……だけなのに」


「…………」


 パーティの面々も、言葉を失うが……

 アスカが、沈黙を切り裂く。


「……ルキア! よくも……父さんと、母さんを……!」

 ルキアの前に駆け寄り……剣を振り上げる!!


「アスカ!」

 俺は止めようとしたが……アスカは、剣を振り上げたまま動かない。


 その手を、振り下ろすだけだ。

 それだけで、ルキアを殺せる。

 しかし、アスカは動かない……動けないのだ。


 アスカは剣を地面に突き刺し……

 膝をついて、涙をはらはらと流す。


「……うう……グズ……グスン……卑怯だよ……こんなの……」

「お姉ちゃん!」

 ユキが駆け寄り、アスカを抱きしめる。


 ルキアは微動だにせず、その様子をただ見つめていた。表情はなく、何の感情も読み取れない。


 静かに、口を開く。

「……もういい?……私、少し休みたい」

 …………

「休んだら、また"おつかい"しなきゃいけないの」


「……!!」

 その言葉に、ハヤブサが反応する。


「……ダイキ、これはやっかいだぞ。……ルキアの娘か、後継者だろう」

「そうだな……召喚スキルは特別で、子供にのみ能力が引き継がる、と聞いたコトがある」

「彼女は、黒魔道士たちに洗脳されている。このままだと、魔力が回復すれば、また魔物を召喚し続けるだろう」

「……殺すか……それとも、捕えるか……」

 再び、沈黙が続く。


 彼女めがけて剣を振れば、すべてが終わる。

 しかし、それでいいのだろうか?




ルキアの運命は……?

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